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新世界の始まり


西暦2500年。

エネルギー問題を解決すべく、かつて存在した196ヵ国もの国々は、"三帝"と呼ばれるたった3国へと纏まった。



アジア、オセアニア地域を統べる人口最大の国、

"東亜連邦"。


北アメリカ大陸、南アメリカ大陸を統制する技術国、

United States of America evolve、通称 "USAE"。


ロシアを含むヨーロッパ、アフリカ地方から樹立した文明国、Central Euro Africaこと、通称 "CEA"。



三帝は、巨大な国であることに起因して国内の制御を優先してきた。そのため互いに干渉することは無く、せいぜい各国の代表数名が顔を合わせる程度だった。そして、それからおよそ500年たった西暦3000年。三帝を治める3名の王が世界の中心 "ロンドン"に集まった。三帝の王が顔を合わせるのは歴史上初の出来事で、まさしくそれは世界が動き始めることを意味していた。



広大な一室の中央に置かれた黒く丸いテーブル。

そこに等間隔に座る3人の王。

その王の背後に半歩下がった位置で佇む補佐官3名。

誰一人として口を開くことは無く、緊張した空気が走る中で各国,王と補佐、計6名が揃った所で1人の補佐官が口を開いた。白髪のポニーテールと両目の碧眼がとても美しい女性。

落ち着いた雰囲気とは裏腹に発育した胸部が、大人の女性としての色香を際立たせている。


「此度の三帝評議会、司会進行役を務めさせていただきます。CEAの"シーラ・ヴィンセント"です。

今回集まっていただいたのは………」


「それくらい分かっておるわ」


進行を妨げるように男が割って入った男は、

USAE代表 "ニコラス・ヴァロ"。

野獣の如き強面に白銀の長髪を纏った姿は白虎の様。

巨大な体躯にスーツ越しにも分かる隆起した筋肉が相まって、対峙する者全てに威圧感を与えている。中世の王を彷彿とさせるその姿は、70歳を超える老人とは思えない。彼はそのまま言葉を並べた。


「戦争が終わり、エネルギー危機が終わった。

三国間の対立はないが、戦争によって三帝間の干渉が無くなった今、民の間では他国への関心が高まってきておる」



「ええ。私もそう思い、1つ提案を持ってきました。

このままその話に移ってもよろしいですか?」


進行役のシーラに目を向け、

穏やかな声色で訊ねる彼女は"徳川とくがわ すず"。

若干17歳にして大国の1つを纏め上げる才女で、実力に上乗せされた容姿の美しさから絶大な支持を誇っている。身に纏う純白の着物は肩にかかるほどの短く美しい黒髪を強調し、少し膨らんだ胸と桃色の唇は妖艶さを醸し出している。



「……あ、はい。御二方の仰る通り、その件に関してお呼びしましたのでそのまま話をお続け下さい…」


司会という立場を奪われる形となったシーラは

心なしか少ししょんぼりとしていた。かわいい。



「過去に実施されていた世界大会の復刻。つまりは様々な分野においての競争を再開しようという提案です。

我々が治めている限り干渉しても問題は起きないでしょう。

現在の課題は"地球という星そのものの滅亡"のみ。

そして、そのためにはより才ある者を集める必要があります。三帝を区切る壁はもう必要ないでしょう?」



紗は薄く微笑みながら、他の王へと問いを投げかけた。



「初めて会ったが若けぇな嬢ちゃん」



CEAを仕切るこの男の名は"オスカー・フォルテ"。

三帝が誕生して以来ずっと政府の中枢で国を支えてきたオスカー家の第3皇子。徳川紗には劣るが年齢はわずか25歳。

口調はキツいが、国をコントロールする手腕は本物で、180cmを超える身長と整った顔も相まって、皇子としての風格は並外れている。



「確か、はるか昔の江戸の将軍の後継だったか?

再び徳川が国を取るとは、すごい偶然があったもんだなぁ」


「お戯れを」



何か裏を含んだような挑発だったが、顔色1つ変えずに受け流され、空を切る形となった。



「…まあ、それはそれとしてだ。俺たちCEAはその話に乗らせてもらう。ニコ、お前はどうすんだ?」


「変な呼び方はやめんか若造が。

(わし)もそろそろだと思っておったのでな。

無論乗ってやるわ。それより、他に話があるんじゃろう?

オスカー・フォルテ」



「まあな。今回呼んだのは徳川の嬢ちゃんが言ったのが一つ。んでもう一つは、新しい地位を作りてえっつう話だ。

名前はなんでもいいが、俺は"神門官"と呼んでる。

ガキじゃねぇんだ。どうせお前らも拘りはねぇだろ?」


「ご自由に」


「好きにせい」


「んじゃ本題だ。俺は今の三帝を一国にはできねぇと思ってる。無論、今まで国を回してきての感想だ。予想はしてるが、同じ立場のお前らの意見も聞いておく。どうだ?」



「私もそれに関しては考えたことがあります。異なる文化、思想、言語を持った人々が共生しているわけですから多少の対立は免れません。その対立の数,規模を考えるとおそらく今が限界かと」


「儂も同感」


「そこでだ。俺は国を1つにするんじゃなく、俺達の更に上に地位を創成する策を考えた。それが神門官だ」


「貴様が言いたいことは分かったわ。わしら以降に即位した王がバカやらんように王をも管理する地位を創りたいと。

確かに三帝の上に立ち、正しい判断で世界を導くことのできる者がおれば世界が初めて1つになるやもしれん。

じゃがな……」


「神門官は全権を得ることになります。私達の上に立つ存在とするのでしたら、私達以上の能力と才能、何より感情をコントロールする力が必要でしょう。

そんな逸材は中々……ああ、そのための…」



徳川紗が全てを理解してクスッと笑ったのを見て、反応を観察していたオスカーが補足を始める。

  

        

「そうだ。ここで嬢ちゃんの提案に帰結する。

競わせ、国民の中から俺達を超える素材を探し出す。

今そこまでの逸材がいるかどうかはわからねぇが、

ニコが死ぬまでには現れるだろ」


「心配無用。わしの後継は既に育っておるわ」


「ふふ。いつかは当たる壁。悪い考えではありませんね」


「フッ。決まりだな。まずは自国で、その後、三帝間で戦わせて優秀な人間を炙り出す。

だが当然、神門官の件はアフレコだ。全員が善人とは限らねぇからな。裏の世界の人間かどうかくらいは見極めろよ?

選ぶのは俺達だ 」



この日、三帝による競争時代が幕を開けた。


______________________________________________________



その数ヶ月後、西暦3000年には珍しい畳の一室で、今どき珍しい目覚まし時計の音が鳴り響いた。



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