第48話 有名無名
神代、海道、長澤、水川と行動を共にすることになった俺とマリアは地下十九階の巨大迷路のような通路を壁に左手を添えながら歩いていた。
神代たちはどこぞのダンジョン内で手に入れたのであろう立派な剣をそれぞれが腰や背中に差している。
「それにしても佐倉さんはやっぱりすごいですね。このダンジョンはレベル90台の僕たちでもなかなか大変でしたのにマリアさんと二人でここまで来られるなんて」
と神代。
「わたくしも真琴様もレベル99ですからね、何も問題なんてありませんでしたわ」
「なっ、レベル99だとっ!?」
海道がマリアの言葉に反応を見せる。
「そうですわ。それに真琴様は海道様と同じくランク10の火炎魔法を覚えていらっしゃるんですのよ」
「なんだとっ」
「おい、マリア。あんまりべらべら喋るな」
海道の機嫌が悪くなるだろ。
「マリアちゃんはご両親のためにこのダンジョンに挑戦したんでしょ。偉いわね」
「ありがとうございます、長澤様。わたくし必ずやクリアしてみせますわ」
長澤に頭を撫でられ気持ちよさそうに目を細めるマリア。
するとその時、
「あ、あの、マリアさんてもしかしてティーンモデルのマリアさんですか?」
人見知りの水川には珍しく自らマリアに話しかけた。
「そうですわよ」
マリアはさも当たり前のように返す。
「なに蓮華、マリアちゃんがティーンモデルって?」
「あ、紅ちゃんは知らない? マリアさんて有名雑誌の専属モデルさんなんだよ。わたし妹が読んでるのたまに一緒に見たりするから」
「本当なのかマリア?」
「ええ。小さい頃からモデルの仕事はやってましてよ」
俺の問いにマリアはそう答えた。
「たしかマリアさんてツイッターのフォロワーも何十万人っているんですよね?」
「その通りですわよ。水川様はよく知っていらっしゃいますわね」
「は、はい。すごいなぁ~って思っていましたから」
マジかよ。
マリアってそんなにフォロワーがいたのか。
本当のレベル教えなくて正解だったな。
こいつ口が軽そうだから教えてたらヤバかったかもしれない。
……っていうか神代たちもファッション誌に載っているとか言ってたよな。
てことはここにいるみんな、俺以外全員有名人ってことじゃないか。
世間から注目されたくない俺だったが知らず知らずのうちにあろうことか有名人集団の中に入ってしまっていたということか。
『Sランクパーティーを追放された鍛冶職人、世界最強へと至る ~暇になったおっさんは気晴らしに作ったチート武器で無双する~』
という小説も書いているのでせめてブクマだけでもよろしくお願いいたしますm(__)m




