第42話 お姫様抱っこ
飛翔魔法によって宙に浮いた俺はマリアを抱いたまま毒の池の上を移動する。
その様子を見て、なんだなんだとざわつくプレイヤーたち。
「あ、あんたら一体……?」
毒の池について親切に教えてくれたおじさんも口を開けたまま固まってしまっていた。
「真琴様、下ろしてくださいませっ! 恥ずかしいですわっ、わたくし子どもじゃありませんのよっ!」
「おい、暴れるなって」
手足をばたつかせながらわめくマリアをなだめつつ俺は低速飛行で毒の池の上を通過していく。
飛翔魔法はランク1なので素早く移動が出来ないからこればかりは仕方がない。
「マリア、頼むから落ち着いてくれ。落ちたらヤバいんだからな」
「放してくださいませーっ!」
☆ ☆ ☆
それから十分後、マリアの悲鳴で鼓膜が破れるんじゃないかと本気で心配しながらも俺は毒の池を見事渡り切ったのだった。
「大勢の人の前でお付き合いもしていない男性にあんなことをされて、わたくしもうお嫁にいけませんわぁっ」
俺にお姫様抱っこをされたのがよほど嫌だったのかマリアは地面に下ろしたあとも悲劇のヒロインばりに声を張り上げている。
「なんだよ。ダンジョンの中で会ったときはそっちの方から抱きついてきたくせに」
「しかもあんなにも強く抱きしめてくるなんてっ……」
と言いながら自分の体をぎゅっと抱きしめ顔を紅潮させるマリア。
「変なこと言うな。お前が暴れたからだろ」
相手は十二歳だ。周りに誰もいないとはいえ発言には充分気をつけてほしい。
「なんだ、もしかして男女で触れ合っちゃいけないっていう教えでもあったのか? だったら謝るよ。悪かった」
「もうこれはもうあれですわね……うん、あれしかないですわ。真琴様に責任を……」
マリアは俺の言葉を無視して赤い顔で何かぶつぶつと言っている。
どうしてしまったんだ、こいつは?
俺は宗教なんてさっぱりだから何が何だかわからないぞ。
「おい、マリア大丈夫か? とりあえずダンジョン探索続けよう。な? このダンジョンクリアしてご両親に報告するんだろ?」
「お父様とお母様に報告……そうですわ。それもありますわね……」
「おーいマリア。聞いてるか?」
今度は体に触れないようにして声をかけると、
「真琴様」
マリアが何かを決意したような顔で俺に向き直った。
「このダンジョンを見事クリアしたあかつきにはお父様とお母様に報告しに行きますわよっ」
「おおっ、やる気出てきたな。その意気だ」
理由はわからないがどうやらマリアの機嫌はもとに戻ったようだ。
マリアは腕を高く上げ、高らかに言い放つ。
「もちろんですわ。お父様とお母様を喜ばせるためにもこんなダンジョンなどさっさとクリアいたしますわっ」
『Sランクパーティーを追放された鍛冶職人、世界最強へと至る ~暇になったおっさんは気晴らしに作ったチート武器で無双する~』
という小説も書いているのでせめてブクマだけでもよろしくお願いいたしますm(__)m




