第182話 レベル1
「あああぁぁぁぁ~っ……!」
両腕があらぬ方向に曲がってしまっている伊集院は地面をのたうち回り大声で叫んでいた。
俺はボロボロになりながらも、
「はぁっ、はぁっ……」
伊集院を見事返り討ちにしたのだった。
だが、
「あぁっ!?」
急に全身から力が抜けたかと思うと地面にへたり込んでしまう。
「真琴さんっ!」
高野が駆け寄ってきた。
心配そうな顔で、
「大丈夫ですかっ。どこか怪我してるんですかっ」
訊いてくる。
怪我はしているが伊集院ほどではない。
それに関しては問題ないのだが……。
「なんか、力が一気になくなった感じだ……」
「力がなくなった……? あの、真琴さん、ステータスを確認してみてくださいっ」
「え、なんで……?」
「いいから早くっ」
タメ口を使われたような気がしたがこの際どうでもいいか。
俺は、
「はぁっ……ステータスオープン」
と口にした。
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名前:佐倉真琴
レベル:1
HP:11/11 MP:0/0
ちから:8
みのまもり:6
すばやさ:4
スキル:経験値1000倍
:レベルフリー
:必要経験値1/1750
:魔法耐性(強)
:魔法効果10倍
:状態異常自然回復
:火炎魔法ランク10
:氷結魔法ランク10
:電撃魔法ランク10
:飛翔魔法ランク10
:転移魔法ランク10
:識別魔法ランク10
:レベル消費
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「えっ……なんだこれ?」
俺のレベルは1になっていた。
「……やっぱり」
横から俺のステータスボードを見つつ高野が神妙な顔つきになる。
「真琴さんが使った【レベル消費】のスキルはレベルそのものを使用するスキルだったんですよ」
「そ、そんな……」
あれだけ上がっていたレベルが【レベル消費】を使ったせいで1になってしまったのか……?
「これはわたしの推測ですけどレベル分だけパラメータをアップさせるスキルだったんじゃないですかね」
「だ、だから伊集院に押し勝てたのか……それにこんなにも力が抜けたような感覚がするのか……」
全身に力が入らない。まるで赤ん坊の頃にでも戻ったようだった。
「で、でも真琴さん。スキルはなくなってませんからよかったじゃないですかっ。ねっ」
「あ……ああ」
俺を元気づけようとしてくれているのだろう、高野が俺の顔を覗き込んで笑顔を作ってみせる。
これでスキルまでなくなっていたら俺は立ち直れなかったはずだ。
「あああぁぁぁぁ~っ……!」
高野のおかげでとりあえずは冷静になれたからか伊集院の叫び声が再び耳に届いてきた。
「……高野、ラストポーション使ってもいいか?」
「あ、はいもちろんです。飲んでください」
俺は不思議な袋の中からラストポーションを取り出すと、
「よいしょっと……」
ふらふらの状態のまま立ち上がって伊集院のもとへと歩いていく。
「あああぁぁぁぁ~っ……!」
そして、
「伊集院、これ飲めよ」
ラストポーションを開けると地面に倒れている伊集院の口に流し込んだ。
「えっ、真琴さんが飲むんじゃないんですかっ!?」
「ああ、俺は問題ないから」
伊集院はラストポーションをごくごくと飲み干していく。
すると、
「はっ……!」
さっきまで叫んでいたのが嘘のようにすっと起き上がる伊集院。
「……佐倉くん……」
伊集院は俺を見て何か言いたそうな顔をする。
「伊集院、まだやるか?」
やるって言ったらどうしようという不安な気持ちはおくびにも出さず俺は強気で訊いた。
「……いや、もういいよ。だって佐倉くん……レベル1になっちゃったんでしょ」
「え、聞いていたのか?」
ずっと叫んでいたから俺と高野の会話は聞こえていないと思っていたのだが。
「ボク耳だけはいいんだ」
そう言うと伊集院はつきものが取れたような顔で「ふふっ」と笑った。
「佐倉くん……これ、あげるよ」
伊集院がポケットから帰還石を取り出し差し出してくる。
「え……いいのか?」
「レベル1じゃ地上までたどり着けないでしょ」
「ああ……そうだな」
「これからボク、警察に行ってくるよ……佐倉くん、迷惑かけてごめん」
ちょっとだけ頭を下げてからゆっくりと振り返り歩き去っていく伊集院。
俺はその背中を見送りながら大きなため息をつくのだった。
『Sランクパーティーを追放された鍛冶職人、世界最強へと至る ~暇になったおっさんは気晴らしに作ったチート武器で無双する~』
という小説も書いているのでせめてブクマだけでもよろしくお願いいたしますm(__)m




