第17話 飛翔魔法
淡い牢のダンジョンを抜け出て地上に戻った俺は早速今しがた覚えたばかりの飛翔魔法を使ってみることにした。
だがその矢先、派手な髪の色をした大学生くらいの男女入り混じったプレイヤーの集団がぞろぞろとこっちに向かってやってきた。
察するにどうやらこれから淡い牢のダンジョンにみんなして潜るつもりのようだ。
飛翔魔法を使える者がいるなんて俺は未だかつて聞いたことがない。
おそらくそれはほかのプレイヤーも同じだろう。
そんなもの珍しい魔法をパーティーピーポーのような人たちに見られたら写真を撮られ動画を撮られSNSで拡散されかねない。
目立つことを嫌う俺にとってはそんな事態はなんとしてでも避けなければ。
そこで俺は逃げるようにしてその場を離れると停めてあった車の陰に隠れてプレイヤーの集団から距離をとった。
そして彼らがダンジョンに入っていくのを見送ってから俺は「ふぅ」と一息つく。
「……ここなら大丈夫そうだな」
周りに誰もいないことを確認すると俺は飛翔魔法を唱える。
「スキル、飛翔魔法ランク1っ」
すると俺の足は地面から離れ体はふわっと宙に浮きあがった。
「おおっ、すごい。浮いてるっ」
初めての感覚に戸惑いつつも嬉しさで自然と顔がほころぶ。
無重力状態とでもいうのだろうかバランスをとるのが難しい。
気を抜くと上下逆さになってしまいそうだ。
手足をばたつかせながらも徐々にその感覚に慣れていくと俺は普通の状態を保てるようになっていった。
地面から五十センチほどの高さで地面に対して垂直に立つと、
「よし。コツを掴んできたぞ」
言いながら俺はもっと高く舞い上がろうと手を広げ空を見上げた。
……。
……。
だがいつまで経っても今以上の高さには浮き上がらない。
「スキル、飛翔魔法ランク1っ!」
再度魔法を唱えてみるも変化はない。
「ん? なんだこれ。もしかして飛べるのってたったこれだけか?」
飛翔魔法というからにはてっきり空を自由自在に飛び回れるのかと思っていたのだが、ふたを開けてみるとなんてことはない五十センチほど浮かび上がるだけ。
しかもそのまま空中移動してみたところ飛行速度も人が普通に歩くスピードとほとんど変わらなかった。
「なんだよ、期待して損したーっ」
俺はがっかりしながら地面に下り立つと足元にあった石ころを蹴飛ばす。
軽く蹴ったつもりだったが石ころは校庭の端の方まで飛んでいった。
「ランク1だからかなぁ~」
空高く飛び上がれない理由は飛翔魔法のランクが1なのが原因かもしれないがこんな魔法じゃ使い道がまるでない。
もちろんこの飛翔魔法で沖縄までひとっ飛びなんてのは夢のまた夢だ。
「はぁ……ダンジョンセンター行くか」
肩を落とすと旅費代を工面するため俺は戦利品の薬草と魔石を持って中学校を歩いて立ち去った。
『Sランクパーティーを追放された鍛冶職人、世界最強へと至る ~暇になったおっさんは気晴らしに作ったチート武器で無双する~』という小説も書いているのでせめてブクマだけでもよろしくお願いいたしますm(__)m




