第178話 卵?
ヤマタノオロチはドロップアイテムを残して消え去った。
見た目はダチョウの卵のようだが表面には虹色の模様がついていてなんとも派手なアイテムだった。
俺はそれを拾い上げようと腰をかがめて手を伸ばす。
とその時、
ぱちぱちぱちぱち……。
乾いた拍手とともにそいつは現れた。
「いやあ、佐倉くんすごいね。あんな強そうな魔物をたった一撃で倒しちゃうなんてさ」
「伊集院っ……」
いつの間にか部屋の出入り口にいた伊集院。
ヤマタノオロチとの戦いに夢中でまったく気がつかなかった。
「お前、いつからそこに……?」
「別にいつだっていいでしょ。そんなことよりさあ、佐倉くんてレベルいくつ? ここってランクFのダンジョンだよ。そこのボスを一撃で倒しちゃうなんていくらなんでもあり得ないでしょ」
伊集院は感情の読み取れない目をして俺をみつめる。
「見た目が強そうだっただけで実際は大したことなかったってとこだろ」
「そうかなあ? ボクは違うと思うけどなあ」
「……何が言いたいんだ? 伊集院」
こいつ、ひょっとして俺の秘密に勘づいているのか?
「ボクさあ、レベル85に上がった時に面白いスキルを覚えたんだよね~」
「なんの話だ?」
「まあ聞いてよ。ボクとまともに話してくれるのは佐倉くんくらいなんだからさ」
そう言って伊集院は続ける。
「そのスキルっていうのがレベルの上限がなくなるっていうスキルなんだよね。【レベルフリー】っていうんだけど、面白いでしょ」
「あ、ああ……そうだな」
なんだって。伊集院の奴も【レベルフリー】を覚えているだって……?
俺は驚きを極力顔には出さないように努める。
「ねえ佐倉くん……佐倉くんってさ、ボクのことどう思ってる?」
「なんだよ藪から棒に」
「いいじゃん、教えてよ。ボクって何? 友達かなあ? それともただのクラスメイト? ……それともいじめられてた可哀想な奴?」
かすれた声で言葉を紡いでいく。
可哀想な奴だなんて一度も思ったことはないが友達かと訊かれるとはっきりと答えられない自分もいる。
というかそもそもなんだこの質問は?
一体なんの話をしているんだ?
「さあな、よくわからん」
俺は透明なまま後ろにいるであろう高野のことも考えてさっさとこの場をやり過ごそうと思い雑に答えた。
今考えるとそれがいけなかったのかもしれない。
伊集院はがっかりしたようにうつむき、そして、
「スキル、捻転魔法ランク10」
ぼそぼそっとつぶやいたのだった。
『ダンジョン・ニート・ダンジョン ~ダンジョン攻略でお金が稼げるようになったニートは有り余る時間でダンジョンに潜る~』
という小説も書いているのでとりあえずブクマだけでもよろしくお願いいたしますm(__)m




