第152話 石化
「……おい、どうするよ。真琴さん石になっちゃったぞ……」
「……風間、さっき拾った万能薬かけてやれよ……」
「……えっやだよ、もったいない……」
「……ちょっと、そんなこと言ってる場合じゃないでしょっ……」
石化した状態でも俺は視覚も聴覚もはっきりしていた。
そんな俺の目の前で男女四人の話し声がする。
だが姿はまったく見えない。
しかしその直後だった。
すぅ~っと何もないところから四人の人間が現れたのだ。
「あ、透明化解けちゃったぞ」
「ヤバいって、魔物が出てくる前に逃げようっ」
「その前に透明化しないとだろっ」
「だからその前に真琴さんに万能薬使いなさいってばっ」
石になった俺の目の前でああでもないこうでもないと言い合う今風の四人の少年少女。
おそらく俺と同い年くらいだろう。
「真琴さんみつけたからあとをつけようって言ったのあんたでしょ」
「高野たちも賛成したじゃんか」
「そう言うこと言ってるんじゃないわよっ。あんた馬鹿なのっ」
「ここは高野の言う通りにしとけよ」
「ほら風間、とりあえず真琴さん助けて恩着せとこうぜ」
どうやら風間という少年が万能薬を持っていてそれを俺に使うようほかの三人にうながされているらしかった。
だがその風間はというと万能薬を俺に使うことをかなり渋っているように見える。
とその時、
『グオオォォー!』
四人の後ろから一角獣がのそのそとやってきた。
「うわっ、みつかったっ……!」
「ヤベっ、一角獣だぞっ……!」
「スキル、帰還魔法ランク1っ!」
「あっ、ちょっと風間、一人で何してんのよっ!」
風間は帰還魔法とやらを唱えるとほかの三人を置き去りにして瞬時に消え失せる。
「あいつ、一人で逃げやがったっ……」
「くそっ、おれたちも逃げるぞっ」
「でも真琴さんどうするのよっ」
「知るかっ。スキル、透明化っ!」
「スキル、透明化っ! 高野も早く透明になれっ、殺されるぞっ!」
『グオオォォー!』
だがここで二人の少年の姿が消え一人残った少女に一角獣が突如駆け出し襲い掛かっていった。
「きゃあっ!」
頭を抱え顔を伏せる少女。
「「高野っ!」」
一角獣の太い前足が少女に振り下ろされた瞬間、
がしっ。
その前足を掴んで受け止める手があった。
その正体はもちろん――
「「「真琴さんっ!?」」」
石化状態から解けた俺だった。
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