第14話 薬草一つ
ダンジョンは深層階の方がより強い魔物が出る代わりによりレアなアイテムも手に入る。
そこで俺は下へ続く階段を探しながら淡い牢のダンジョンを進んでいた。
途中下級ゾンビが複数体現れたが俺の敵ではなかった。
手で払いのけこれらを粉砕していく。
それでもスキル【経験値1000倍】のおかげでレベルがまた一つ上がった。
俺のレベルは10030から10031へ。パラメータも微増する。
そして現在俺のいる場所は淡い牢のダンジョンの地下六階。
目の前にはロボット兵の姿があった。
ロボット兵は文字通り人型の機械兵だ。
そのロボット兵が手に持った斧を振り回しながら俺に襲い掛かってくる。
俺は斧をたくみに避けながらロボット兵の懐に入ると胸の部分をトンと押した。
するとロボット兵はその衝撃で後ろに吹っ飛ぶ。
そのまま後ろの壁に激突したロボット兵はガガガ、ガガガ、と小刻みに震えると次の瞬間爆発した。
「ふぅ」
《佐倉真琴のレベルが1上がりました》
「あれ? また上がった」
大して、というか全然手ごたえのない相手だったが倒したら機械音が脳内にこだました。
俺のレベルがまた一つ上がったのだった。
「今の奴、思ったよりも経験値高かったのかな……」
正直強くなりすぎた俺は弱い魔物と強い魔物の区別がつかなくなっている。
どんな強い魔物でも大概は一撃で倒せてしまうからだ。
「ま、いっか」
今はレベル上げよりアイテム回収の方が優先だ。
俺は深く考えることもなくさらに地下へと下りていく。
☆ ☆ ☆
ランクが低めのダンジョンということでここまで手に入れることができたアイテムは薬草ただ一つ。
薬草はポーションと効果は同じ。食べるか飲むかの違いだけだ。ちなみに売り値は五千円。
「これで五千円か……あと三万五千は稼がないと」
事前の予想に反してアイテム集めに苦労していると俺は階段のない階層にたどり着いてしまった。
どうやら今いる地下十階がこのダンジョンの最深階のようだ。
「おいおい、待ってくれよ。まだ薬草一つだけしか拾ってないぞ」
沖縄行き新幹線とフェリーの往復代金がこれでは足りないじゃないか。
アイテムを見逃してないか俺はあらためて地下十階を歩き回る。がしかしやはりアイテムはみつからなかった。
おそらくだがランクが低いダンジョンということもあってもうすでに多くのプレイヤーに根こそぎアイテムを回収し尽されてしまっているのだろう。
こうなるとあとは魔物を倒してドロップアイテムに期待するしかないが……。
「……ん? っていうかここのダンジョンのフロアボスはどこにいるんだ?」
今さらながら気付く。
どんなにランクの低いダンジョンでも最深階には必ずボスが潜んでいる。
そしてそのボスはほかの魔物とは比べ物にならないくらいに強い。
その分レアアイテムをドロップする確率もかなり高い。
「もしかしてそれも誰かが先にやっつけちゃったのかな……」
だとしたらこのダンジョンを選んだことは失敗だったことになる。
ただの時間の無駄。徒労に終わるというわけだ。
「こんなことなら白い地のダンジョンにもっかい行けばよかったなぁ」
と反省しながら何気なく後ろを向いたその時だった。
!?
俺は今までに見たことのない魔物とばちっと目が合った。
『Sランクパーティーを追放された鍛冶職人、世界最強へと至る ~暇になったおっさんは気晴らしに作ったチート武器で無双する~』という小説も書いているのでせめてブクマだけでもよろしくお願いいたしますm(__)m