第135話 斎藤春子
「斎藤春子……って、きみもしかして女の子?」
「……そう」
こくんとうなずく少年。いや少女。
俺と海道が少年だと思っていた相手は斎藤春子と名乗る少女だった。
言われてみれば髪型はショートカットだが目は大きく顔は小さく体は丸みを帯びていて、たしかに女の子に見えなくもない。
それどころかよくよく見ると化粧をしてガーリーな服を着れば見違えるくらいの美人になりそうな気さえする。
「お前、マジで女なのかっ?」
「……そう」
「おれらと同い年か?」
「……そう」
海道の問いにも同じくうなずいてみせる。
それを聞いてバツが悪くなったのか、
「ちっ。だったら先にそう言えよな」
海道は斎藤から顔をそむけるとその場を離れ列の後方に移動した。
「えっと……なんか悪かったな。変な誤解して」
「……別にいい」
「そう言ってくれると助かるよ」
無表情で何を考えているのかちょっと読み取りにくい奴だがとりあえず怒ってなさそうなので一安心だ。
「……それよりその刀、あなたの?」
そんな斎藤が無表情のまま俺が持つ刀を指差し訊いてくる。
「ん、そうだけど」
「……それ持って戦うの?」
「本選をか? まあ、予選通過したらそうなるな。これは俺の武器だから」
答えると斎藤は納得したのか「……そう」とつぶやいてからパンチングマシーンの前に歩み出た。
うーん……悪い奴ではなさそうだけどよくわからない奴だなぁ。
でも斎藤春子って名前はどこかで聞いた覚えがあるような……。
そう思いながら眺めていると斎藤はおもむろに両手を広げ天を見上げる。
そして、
「……スキル、召喚魔法ランク10」
小さい声で口にした。
すると直後――ぼんっと爆発音がしたかと思うと斎藤の頭上に見たこともない巨大な魔物が出現していた。
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