第116話 ドラゴンの宝珠
駆動騎士の自爆によって巻き起こった砂まじりの爆風がびゅおぉぉーと辺りを覆う。
「綾子っ! 綾子っ!!」
「綾子さんっ!」
荒れ狂う砂嵐の中、人志さんと俺は綾子さんの無事を祈り大声で叫び続けた。
――しばらくして視界が開けてくると、ぱらぱらと砂が舞い散る下で綾子さんはボロ雑巾のようになりながら砂に埋もれていた。
「綾子っ!!」
人志さんが倒れている綾子さんのもとに駆け寄り抱き起こす。
「綾子っ!! 綾子っ!!」
揺り動かすが綾子さんはぴくりともしない。
「綾子っ!! 綾子っ!! ……綾子ーっ!!!」
泣き崩れる人志さんを見て俺は綾子さんの死を悟った。
まさか、こんな簡単に死ぬなんて……。
俺は綾子さんのなきがらをぎゅっと強く抱きしめる人志さんにかける言葉がみつからずただその場にずっと立ち尽くしていた。
☆ ☆ ☆
どれくらいの時間そうしていただろう。
一分か、それとも五分か。
はたまた十分なのか。
もしかしたら実際は十秒くらいだったかもしれない……。
俺にはどうすることも出来ない。
無力感にさいなまれていると人志さんの頬を伝った涙が綾子さんの顔にぽたっと落ちた。
その時綾子さんの破れたポシェットの中からガラス玉がゴロンと落ちて転がった。
……ドラゴンの宝珠。俺が綾子さんにあげたアイテムだった。
するとどういうわけかドラゴンの宝珠が突然光を放った。
!?
何事かと人志さんは泣き顔を俺に向ける。
だが俺にも何がなんだかわからない。
ドラゴンの宝珠はそのまま宙に浮かび上がった。
そして次の瞬間パリィィンと割れると粉々に砕け散った。
直後――
「……んん、ぷはっ……ごほっごほっ」
「綾子っ!!??」
「綾子さんっ!?」
奇跡が起こった。
完全に息を引き取っていたはずの綾子さんが息を吹き返したのだ。
「綾子ーっ!!」
「ちょ、ちょっと痛いわよっ。放してったら……って人志なんで泣いてるのよ?」
「綾子ーっ!!!」
「ちょっと、苦しいってばっ」
人志さんが人目もはばからず号泣しながら綾子さんを抱きしめる姿を俺は目に涙をにじませつつ見守り続ける。
「――っていうかちょっと待って! わたしの服ボロボロじゃないのっ!?」
服が破けてほぼ半裸状態の綾子さんが大声を上げた。
……俺はそんな綾子さんからそっと目をそらした。
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