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□苦戦

ーー


□苦戦

苦戦。対価や犠牲は小さくない。しかし概ね、概ねは計画通りである。さあ、一手一手を確実にうって行こう。


ーー


個体名〈勇者レクス〉とか言ったか。

いやね、ベヒーモスを殺してくれるんなら別にいいんだよ。今までの下準備がぜーんぶ無駄骨にはなっちゃうけどさ。言ったろ。手段は問わないって。そういうスタンスだから、ベヒーモス狩りに来たんならむしろ歓迎だったんだよ。


だがどうも、あいつもベヒーモスを避けているな。ベヒーモスの存在に気づいてはいる。今下手に動けば奴の介入により、作戦にイレギュラーが生じ兼ねない。一旦下準備から全てやり直すつもりで、勇者レクスをやりすごそう。スライム青マルの考えはそうだった。


しかし、奴は偶然此処に来たのではなかった。勇者とは。神殿にて信託を賜り神の意思の元に聖剣や魔剣を振るう、神々の尖兵だ。明確な目的によりこの地を訪れ、屠るべき敵の近くで、奴の愛剣は輝くのだ。物陰から見るに、奴の魔剣は光輝いていた。この辺りで何者かを殺すまでは、帰らないのだろう。面倒な事だ。


勇者。そのスペックは、様々な神々から力を分け与えられ、半神と呼んで良い代物にまで迫っているとか、何とか。何故そんな事を知っているって?これはリセル様情報じゃないぞ。あれだ、かつて他所の群れに勇者オタクみたいなスライムが居たんだよ。そいつにムリヤリ聞かされたウンチク話だ。ま、ちょっと楽しいよな。俺ら魔物流のお伽噺って奴だ。


そのお伽噺の怪物が、今の今、目の前で殺気撒き散らしてたら怖ェとかヤベェとしか思えないけどな!ふざけんな、どっか行け!


わあ、剣ぶん回してこっち来んなー!

思わず酸を吐きかけるスライムの青マル。戦士の盾が大げさに輝いて魔法陣を展開して酸を防ぐと、戦士は三歩下がった。ざまあみろ。


あっ、これデジャブ?


「……貴様か」

二度としないから許して下さい!


「探したぞ、スライムの【青マル】」

身バレしてる!食らえ顔面破壊酸攻撃!


「真っ二つだ」

斬撃が走ると、空中の酸ごと青マルは真っ二つに崩れ落ちた。


いつかのスライムEみたいだな、なんて……


勇者レクスの頭上で呟きを溢してみる。

酸と一緒にね。臭い玉もいっぱいあげる。

余ってるから遠慮すんなよ。


「幻覚……攻撃だと」


幻覚効くんだ。万能じゃないみたいね。でも幻覚から立ち直るのが早すぎる。やはりそこは勇者という事か。攻撃目的の酸は盾の魔法陣が消した。匂い玉は別に害意のある代物じゃないし、魔力も野草のそれと変わらない程度にしか含まれていない。つまりなんというか、〈コレ〉は全くもって消されなかった。臭そうなカタマリが、鎧にべっちゃり。ざまあみろ。


「…………。浄化魔法を発動」


ふわーん。消えねえでやんの。ざまあみろ。そーいうのは自然な垢とか汚れと一緒なんだよ。浄化魔法なんかアンデットにかけてろよ。


「ぷゆぷぷぷ!!ぷふー!!」笑った。嗤った。死なされた仲間の分まで嘲笑ってやった。


「殺す」

「ぷゆっぷー(元からそのつもりだろうが)」

「念話も使えるのか」


「ぷゆぷゆぷゆぷゆぷゆぷゆ……!!(死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたいあーー勇者なんてまじつまんねーカミサマとかまじうざーーあーー死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい信託だるいさぼりたいよしさぼる)」


「ぐああああ!頭の中でうるさい!貴様ごときが神を愚弄するなッ」


「ぷゆぷゆぷゆぷゆぷゆぷゆ……!!(死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたいあーーまじ魔剣重いしつまんねースケイルメイルとかまじダッサーー重いし歩き辛いし汗くせええあーー死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい鬱だよし死のう今すぐこの魔剣で喉を掻ききれば楽になれるね)」


「頭ん中で喋るのは、やめんかぁぁ!」


怪電波攻撃効いてる効いてるぅ。会話は攻撃扱いじゃないんだ。その盾も融通効かないね。そのまま鬱で死ねよ。カミサマとやらに言い様に使われてる小者の分際で俺の仲間達を殺しやがって……。何が勇者だ。力持ってるだけの人間じゃねーの。死ね死ね人間殺す死ね死ね死


ああ、待てよ。このままもう少しいじめてから殺そっか。ひっひっひ。


「ちょこざい!どらよォ!」


おっと!力任せの一撃。しかしそれは幻覚だ。ざまあみろ。やめろよー、スライムなんか一撃かするだけで死ぬんだから。優勢なそぶりでプレッシャーかけてはいるけど、これで結構必死なんだぞ。どんだけ善戦はしても、こっちはこっちで決め手がねえ。魔力も切れそうなの。お前の相手で意識飛びそうな中で……念話で作戦進行の指示まで出してる身にもなれや。


「(マリエル、シエル、ベヒーモスの足音が里の入り口から四時の方向に聞こえる。誘導成功お疲れ様。負傷者を連れて里に戻ってくれ)」


手順1、完了。森にはベヒーモス意外にだって魔物が沢山いるんだ。死人が出ていなければ良いのだが。


「(ヒイラギ。そちらへ今ベヒーモスが向かっている。手筈通り頼む。こちらは勇者レクスが現れ、交戦中。適当に幻覚にかけたら里に戻って負傷者がいれば治療する。……勇者レクスは俺を殺す信託を受けたようだ。負傷者の治療が済めば、すぐに里を離れようと思う。俺がいると里が危ないはずだ)」


手順2、こちらにネックはないはず。怪鳥系モンスターの出没時期でもない。大丈夫なはずだが、油断なく遂行して貰うとしよう。


「ぷゆぷゆぷゆぷゆぷゆぷゆ……!!」

「クソがぁぁ!!頭ァ!!うるせェェェ!!」


キャラぶれてますよ?そっちが素なんだね。

無口クールぶっちゃって、イターイ。

ゲシュタルト崩壊系怪電波テレパシーと幻覚でどろどろにしてやる。酸も効けば、体もどろどろにしてあげられるのにね。はっはっは、勿体ない。


ザン!ザシュッ!おっと。勘の良い奴め。


activeスキルrank up:斬擊見切り[rank.D+]

スキルによる尋常ならざる斬擊を見切り、回避を補助する能力。


うむうむ。かれこれ20回は避けたかんなー。

1回見たら死んじゃう攻撃をそれだけ見慣れれば、そりゃあ回避スキルも強くなるわー。


ザン!よっ。ザシュッ!ほっ。

ザン!はっ。ザザン!はいっ。


ザン!よっ。ザシュッ!ほっ。

ザン!はっ。ザザン!はいっ!


ドシュン!


うげっ!


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