□出会いと正義の目覚め
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□出会いと正義の目覚め
困っているやつがいた。救いたいと思ってしまった。
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この森には沢山の種族の魔物がいる。
ウルフ族を筆頭とした、四足獣。人間の子供の骸骨に皮だけを被せたような姿のゴブリン族。魔法を使える小人のウィッチ族。ドラゴンのような姿形ではあるが、知性がゴブリンほどしかないワイバーン族。翼を持つ人型、ハーピィ族。巨大な石くれの人形、ゴーレム族。そして我らが跳ねる粘体スライム族。まだまだいるが、この辺りが代表格だ。今は割愛しよう。
なんでこんな説明をするかって?それは我らが主人公、名もなきスライムD君の前に行き倒れがいるからだ。しかも三名も。
人型、耳が長く、お肌がツヤツヤで、整い過ぎなくらい整ってる美しい容姿。まだ小さな子供達だが、多分かの長命な種族であり、きっと三名とも120歳くらいだ。人間換算で12歳くらいだ。男性一名女性二名。うーん、これは両手に花……じゃなくて。
これは、どう見てもエルフですな。スライム族的には、生涯お目にかかる事がないレベルの稀少種。上述したいずれの種ではない事は明白である。ふむ。ちょっと拝んでおくか。ありがたや。
ぽわー
スライムから光が飛び出し、エルフ達に降り注いだ。エルフ達の生傷が塞がって行く。あ、怪我してたんじゃんこいつら。みるみる直ってくけど。魔法みたいで面白ぇー。
activeスキル獲得:森ノ神徒の祈り[rank.E-]
エルフ族専用の回復魔法。回復量は精神力依存。
魔法でした。なんでエルフ専用の回復魔法がスライムに使えてんだよ。エルフを信仰しただけで神官の真似事が出来ますってか?エルフ優遇され過ぎだろ。ま、稀少種ってのは優遇されてなんぼなんだがな。力が手に入るなら幾らでも祈り捧げてやるよ。
むううん。ありがたや。ありがたや。癒やしたまえー救いたまえー。汝らはー……あれだー。超超すげーんだわー。世界一なんだわー。むううん。ありがたやー。あー……美しき者どもに慈悲の輝きをー。
ぽわわー
スライムから更にぶわりと光が流れ出し、エルフ達に降り注いだ。エルフ達の生傷が急速に塞がって行く。全員、ほぼ完治したようだ。
activeスキル rank up:森ノ神徒の祈り[rank.C]
エルフ族専用の回復魔法。回復量は精神力依存。
やったぜ。Cって確か少し強い奴だ。リセル様が言ってたから間違いないね。ふう、魔力を使い過ぎた。少し疲れたから寝るぜ。ぱたり。いやまて、こんな所で寝たらウルフに食われ……ぱたり。きゅう。
「うーん、何処だここは。マリエルー……シエルー……」
少年が目を覚ます。
「マリエルはここです、ヒイラギ様」
「このスライムが助けてくれたみたいだぜ、ヒイラギ様」
続いて少女二人も目を覚ます。
三名の前にはぴかぴか光るスライムがいた。それは、とても優しい光であり、この者が自分達の命を救ってくれた事にもはや疑う余地はなかった。
エルフ達はすぐそばの抜け道から、エルフの里に帰り、このスライムを介抱しもてなす事とした。