□特異なる反骨心の目覚め
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□特異なる反骨心の目覚め
やはり負けた。しかしとどめの瞬間、戦いに乱入した存在があった。別にスライムの味方ではない。ただの蹂躙者だ。瀕死のスライムは放置され、冒険者は敗走した。
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いやはや、しかし最後に聞こえたあの鳴き声。あれはレッドワイバーン達の親玉の怒りの咆哮で間違いない。あれだけは、俺達魔物でも怒らせちゃいけないんだぜ。人間ごときじゃ勝てない。最強種であるドラゴン種の域にまで進化を果たしたクイーンワイバーンのリセル様だ。
ネームドモンスターは特に強いんだぞ。あの人間ども、終わったぜ。魔剣を持っていたのが気掛かりではあるが、あの激昂したリセル様の火炎は凄まじい。星空の広がる黒い大天幕すら焼き尽くすんだ。負ける姿なんて想像もつかないな。へへ、ざまあみろ。あいつらは死ぬんだ。俺の仲間達みたいに、あいつらが雷で撃ち殺しまくったワイバーン達みたいにだ。次はあいつらがそうなるんだ。ざまあみろ。どちくしょう。
リセル様は別に、スライムの味方ではない。ただの蹂躙者だ。しかしその横やりのおかげで、俺だけは助かったのだ。瀕死のスライムは放置され、冒険者は敗走した。
もう二度とこんな想いはすまいと、スライムは反骨心を得た。
passiveスキル獲得:反骨心[rank.B-]
精神力のパラメータを大きく底上げし、敗北者や屈辱への抵抗意思を増大する。
activeスキル獲得:斬擊見切り[rank.D]
スキルによる尋常ならざる斬擊を見切り、回避を補助する能力。
ん?天の声が聞こえた。なるほど。これが、リセル様が以前めちゃくちゃ自慢してきた奴か。うん。力が湧いてくる。人間はこんな力を幾つも持っているそうだ。rankは、DとEは弱っちい奴。CとBが少し強い奴。AとかSが超強い奴。だったかな。
さあ、まずは体を直そう。なるべく魔力のある草を食べる。「毒草」すらも俺達スライムは酸を作るのに栄養とする。苦い。不味い。食べ過ぎると緑色の稀少なスライムになってしまい、人間に追い回されるから、そうならない程度にバランスを考える。「薬草」も食べる。回復には有用だが無味。不味い。危険な人間が良く取りに来る為、群青地帯は人間と鉢合わせるから、見かけても長いしない事。「匂い草」臭いのは辛い。良い香りのものは甘い。どっちも魔力が豊富で、すごく美味しい。人間は臭い方は滅多に取りに来ないから、臭くて辛い方を狙って食べる。食べたら美味しいのにバカだね。
「花類」白の花はほとんどが猛毒。魔力がいっぱい。群青地帯には魔法を使う類いの強い人間が取りに来るから、そいつらにだけ気をつける事。黄色の花はめっちゃくちゃ甘くて美味しい。魔力もいっぱい。だけど食べるならハニービーとその親玉にだけは絶対ばれないように上手く隠れる事。こちらの群れが壊滅するまで戦争になっちゃう。紫色の花はすっぱくて、美味しくないし不味くもない。魔力がかなり少ないし、人間も多分ほとんど取りに来ない。でも見た目は一番綺麗かもね。
ふーむ。よし。紫色の花をいっぱい食べるとしよう。少ないとはいえ、魔力は一応あるにはあるんだ。何より安全。群青地帯も沢山知ってる。あんまり美味しくないけど、背に腹は変えられないや。頑張って食べよう。