町に来たりて②
「働きたいというなら警備隊員か冒険者になるって手もあるが。子持ちだとすればちときついかな。いや野盗を捕まえられるなら大丈夫か」
門番はそう答えた。
やっぱりそうなるかとクボタは思った。さらに門番は続ける。
「1ヶ月ほど前に王都で反乱が起きて政権が変わったんだ。前の王様は善政をしいていたが今は圧政されていてな。耐えられなくなった住民たちが逃げ出して野盗化している。その一部がこちらに流れてきている」
そういう話をしているうちに手続きが終わったようで
「今回の功績に対する評価だ。これだけあれば少しの間は生活できるだろう。お嬢ちゃんにいいもん食わしてやりな」と言いながらぎっしりと貨幣がつまった袋を手渡す。
「これからどうするつもりだ」と門番は問う。
「とりあえず身元保証が欲しい」とクボタが答える。
「それならギルドへいって冒険者登録する事だ。そうすることでギルドが身元を保証する事になる」
「異世界の歩き方」に書いてある通りだなとクボタは思った。さらに門番は話す。
「情報がほしければ酒場か教会へ行くといい。いや、お嬢ちゃんがいるから酒場はダメだな。教会の方がいいな」
これは「異世界の歩き方」には書いていない情報、
クボタは
「ありがとう、そうさしてもらうよ」と感謝の意を伝える。
外にいる犬にもよろしくな、さっき言ったとおり、野盗はまだまだいるからな。仕事を頼むこともあるだろうからその時はよろしくな」と門番に見送られギルドに向かう。
その道中クボタは異様な気配を感じていた。狙いは貨幣のち待った袋が、どうやら受け渡しの現場を見られていたようだ。
「オラァ、死にたくなければ金だしな」
とナイフをつらつかせながら迫ってくるが、言い終わるがいなやフェンリル二頭に押さえ込まれていた。
「助けてくれたのはありがたいが、君たちそれを食べたいだけなんじゃないの?言っとくけど人を食べちゃダメだよ」
それを聞いたフェンリル二頭、クボタを見つめる。まるで
「こいつら悪人でしょ。だったら食ってもいいじゃない」と訴えるように。
「悪人でもダメなの。あの人たちに引き渡すから」と犯行に気づいてやって来た警備員を指差す。
警備員は襲撃犯を身柄確保しながら言う。
「指名手配犯の逮捕にご協力いただき感謝いたします。こいつらは札付きの悪で今までなかなか犯行現場を押さえられなかったのです、これで少しは安心できるでしょう。それにしてもあなたの従獣はかなり優秀ですね。指示を待つことなく自分の意思で最適な判断を下せるのだから」
「いや、違うのだけど、こいつら食べたかっただけなんだ。それに俺の使い魔でもないし」とクボタは思いながら本来の契約者であるエリンを見る。
確かにエリンは俺と出会ってから従獣であるフェンリル二頭に明確な指示を出していない。それどころか町に入ってから一言も喋っていない。どうかしたのかと問うてみたが
「私のことは気にしないで」
と目で訴えてきた。