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そして父になる

そう言われて少女ははっと何かに気づいたかのように

「これは失礼、私はエリンと申します。この子たちが私以外の人間にこんなになつくなんて今までなかったものですから少し驚いてしまいました」

と言い返す。

それを聞いた男、

「俺はクボタヤスノリという」

と答える。

失礼ですがえらく長い名前ですね」とエリンと名乗った少女は再び問い返す。

「姓がクボタ、名はヤスノリだ」と男がいえば

「やはり名持ち、ただ者ではないと思っていましたが」

それを聞いたクボタと名乗った男はしまったと思った。ここの世界は明治維新以前の日本のように姓を持つのは一部の特権階級もしくは多大な功績を挙げた一般人に限られることを理解していなければならなかったのだと気づくべきだったのだ。しかしもう遅い。少女は男を何か特別なものを見るかのような表情をして

「お願いします。私と行動を共にしてください」と言った。

男は思う。考えてみればこんな少女がこんなところで一人でいるのはおかしい。いくら大型犬二頭がいるとはいえ護衛としては心もとない。まあ聞くだけ聞いてみようかと

「どういう事か聞いてみても」

「助けて欲しいのです、今は詳しく話せませんが」

「それだけの話で助けるとでも、ここに来たばかりで何がどうなっているのかさっぱりわからないのでね、あなたも俺のこと何もしらないでしょ」

「この子たちがあなたになつくということは十分に信用できるという証です。神獣が意味もなくなつくということはありませんから」

「ちょっと待って、神獣って。犬か狼じゃないの」

「パット見はそう見えるかもしれませんがこの子たちフェンリルですよ」

「フェンリルといったら神の片腕食いちぎったという……」

「そいう伝説もありますがそこまで狂暴ではありません。敵対しない限りはおとなしいものです」

「じゃ大丈夫なのか、それにしてもフェンリルを飼い慣らしているなんてあんたの方がよっぽどすごいと思うけどね」

「みんなこわがるけれどフェンリルって実はやさしい生き物なんです。私の境遇に同情して契約してくれましたし」

「契約って」

「あっ、私、テイマーなんで契約する事で主従関係を結べるのです」

「だったらオレなんかよりよっぽど役に立つのでは。さっきも言ったがここの状況がさっぱりわからん。あんたが思うような働きはできないと思うよ。」

「いいえ、この子たちがいかに優秀でも町には入れません。私みたいな子供が生きていくためにはあなたみたいな大人に保護者のような役割をしてもらわなければならないのです。」

「だからって俺でなくても」

「あなたのように事情がわからない人の方がいいのです。簡単には理由を説明するわけにはいかないので、それにさっき大蛇を倒したのを見てますから。ところでその大蛇はどうしたですか?」

「それだったらなんか亜空間収納というのにしまってある。使い始めたばかりでよくわからんのだが」

空間収納の使い手というだけでも希少なのに神獣に懐かれるは大蛇を瞬殺するはであなたは一体…」

「あんたが身の上を語らないように俺にも人に言えない事情がある。それはお互い様だ。だけど俺にも仲間が必要なのは確かだからな」

「それじゃあ」

「いいよ、俺でよければ。それでどうする。恋人とか兄妹とかいうのは無理だろう」

「親子ということで、よろしくヤストさん」

「ヤスノリだ。間違えるな」



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