新たなる展開
「寄生虫なんてのは焼いたり煮たりして熱を通せばなんとかなる。酢漬けにするとか。生で食べなければまず大丈夫」
「それは消化器系にに寄生するタイプの対処法、でもこのタイプはアニサキス以外はだいたいおとなしいもの。食べ過ぎても太らなかったりアレルギーを防いだりいい面もあるのよね、て、あなたまだ寝てなきゃ駄目でしょうが」
のそのそと起き出してきたクボタをたしなめる聖女。
「ちょいと興味がわいてきたんだ。カルストン医師の戦いぶりに。強者の武勇伝は何かしら参考になることが多いから」
「あんたって子は。根っからの武人なのね」
そんな会話をしていてもカルストンは周囲の警戒を怠らない。医師であると同時に優れた戦士であった彼は微少ではあるが何か異様な雰囲気を感じていた。その様子に気付いたクボタがふと辺りを見渡すと幾人かの人影を見つける。
「先生、あれはなんだろう」
そう問いかけられカルストンはそれを見て
「なんだろう。こんなとこ歩いているのは冒険者ぐらいだがそんな雰囲気はないな」
と不思議がる。
「ねえ、フェンリルくん、あそこへいってくれないか」
カルストンがそう言うとフェンリルはそちらへ向かう。
「すごいな、契約者でもないのにちゃんと言う事を聞いてくれてる」
カルストンの呟きにクボタは
「その場の状況を即時に判断し、誰の指示に従うか、自分の意思で動くかを自分で考え即実行する。さすがに神獣というだけあって利口なんです」
と答える。
そう誉められてフェンリルたちは上機嫌である。神獣といえどもまだまだ子供、もっともっと誉めて欲しいと思うのだった。
さて、近づていくと確かに様子がおかしい。何か目的があってここにいるわけではなさそうだ。何か嫌な予感を感じた一行はまさかに備えてフェンリルを自由に動けるようにする。上空をグリフォンわセントオウルが警戒飛行をしており何があっても対応できるようにはなっている。各自警戒しながら接触を試みる。生気がなくどこか虚ろな表情を集団の一人に声をかけようとしたカルストンは彼が何かを訴えようとしているのに気付いたがそれと同時に異変を感じ全員に聞こえるように叫ぶ。
「全員離れろ」
そう叫ぶや否やその人そのものが爆発したように肉片となって飛び散る。と同時に生き物とも作り物ともいえないおぞましい物体がカルストンに襲いかかる、が、カルストンは一刀のもとに切り伏せる。
「なんだこれは」
みんなが驚愕するなかクボタだけが
「このギズモみないなやつ、もしかして」
と冷静にカルストンに語りかける。
「そうだ。こいつが寄生獣だ」
とこちらも冷静に答える。
「絶滅したんじゃなかったのか」
「カタをつけたとは言ったが絶滅したとは言っていない。しかしやつらはもう人には寄生しないはずだったのにどういうことなんだ」
「なにこいつら、こっちくるな」
思考するカルストンのそばで悲鳴があがる。だが反応が遅れ助けられない。
それでもエリンに襲いかかる寄生獣をクボタは渾身の左ストレートで迎撃する。しかし
「あっ熱い!! くそっ」
クボタの左拳は激しく焼けただれていた。修復機能のおかげ傷は癒えたが痛みが消えたわけではなかった。
「こいつらの体液は酸でできている。素手での攻撃は危険だ」
「そういうことはもっとはやくいってくれないか」
痛みの引かない左手をかばいながらクボタは文句を言う。
「すまん、まさか素手で戦うとは思ってなかったもので」
「そんなことよりこの連中全員寄生されているのか」
「おそらく、集団でこられたらかなりやばいですね」
大賢者とカルストンのこの会話で全員がかなりやばい状況であることを認識する。
オレタチハモウタスカラナイ。イッソノコトコノママコロシテクレ」
「ん、会話できるのか? 事情を説明してくれないか」
集団の一人が喋り出したのでどういうことなのか説明するように促す。
「オレタチハキセイジュウヲハンショクサセルタメノドダイニサレタ。セイブツヘイキノケンキュウザイリョウニ。ムラゼンタイガジッケンジョウニサレタ。タダマダナンニンカハザイリョウニサレズニニゲノビテイル。デキルコトナラカレラヲタスケテホシイ」
「ジェイルの野郎。そんなことまで」
憤るクボタをなだめながら大賢者と聖女は助けに行く算段を考えていた。
「君たちはそれを知らせるためにここまで逃げてきたのか」
「ソウダ。モウモクテキハハタシタ。キセイジュウガデテクルマエニコロシテクレ」
そう言いきると事切れたようで意識を失ったように倒れていく。
「出てくるぞ!!」
カルストンの叫びともに倒れ込んだ彼らの体が爆発したかのように粉々に吹っ飛ぶ。
血飛沫の中から寄生獣が何匹も飛び出してくる。
「ファンタスティックライト」
アルビーが発動した魔法によりあたり一面が強烈な光に包まれる。そのおかげでその場にいた全員が視力を失う。
「発動する前に何か言ってくれ」
誰が言ったかは分からないがそんな苦情に対して
「ごめん、今度から何かするときは声をかけるから」
と言うのが精一杯だった。やがて光が消えて周りが見えるようになったとき皆が見たのは断末魔をあげたような表情をして転がっている寄生獣の姿だった。




