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役に立たない使命感

「エリン様とはぐれるとはなんたる不覚、ご無事であればいいのだが」

「ロネとネルが一緒にいれば大丈夫では」

「いかにフェンリルといえどもあの二頭はまだ子供、魔狼にも劣る。安心はできない」

いかにも心配そうな表情を浮かべる姉と希望的観測を捨てない妹、二人は双子である。

エリンがまだ王女として暮らしていた頃、二人は護衛として行動を共にしていた。

ある時二人がふと目を離した隙にエリンが森に入り行方不明になったことがあった。父親である王は二人を叱責し、解雇しようとしたが母親である王妃はそういう態度をとる王をたしなめ二人に必ず見つけるように指示を出した。

この時エリンはさ迷った森の中で親とはぐれたフェンリルと遭遇し、発見されるまでの三日間を耐え抜いた。お互いつらい出来事を耐え抜いたフェンリルとエリンは絆を深め常に行動を共にし、この二人はエリンの信頼を失い、護衛の任務からははずされなかったものの話しかけるこそさえできなかった。あの内乱の混乱のなかで、母親が目の前で殺されてもエリンは二人を頼ることなくフェンリル二頭と共に脱出した。クボタに出会うまでの間再び苦難を味わうことになるのだった。

エリンの信頼を得られていないにも関わらず二人は護衛という任務にこだわっていた。こんなことになってあの少女を守れるのは自分達だけだと本気で思っていた。実際はエリン自身の能力とフェンリルの力で生き抜いてこれたので二人は全く役に立っていない。

あてもなく町に向かっていた二人だが姉の方が異変に気づいた。

「あれはなんだ」

姉には千里眼の能力があり、はるか遠くを見渡すことができる。だから飛行中のグリフォンにもそれに乗っている二人も見つけることができた。

「あれはもしかしてエリン様、なぜグリフォンに、しかももう一人は聖女様では」

実は姉は聖女とは面識があるし、聖女がどういうことをしてきたかも知っている。だからエリンが聖女と一緒にいることに安堵した。

「聖女様、エリン様をお助けいただきありがとうございます。今、迎えに参ります」

迎えに行こうとしたがグリフォンを追いかけてくる巨大な黒い雲のような物体におののいた。

「あれはもしかしてバルー、聖女様を追いかけているのか」

どうしようもない。ただみていることしかできない。エリン様の危機に自分は何もできない。姉は自分の無力さをただ悔しがることしかできなかった。


突然、爆音と共に強烈な光がバルーを直撃する。一瞬にしてバルーは消滅した。何事もなかったようにグリフォンは光の発生源と思われる地点に降りていく。そこには魔法杖を持った老婆、はしゃぐ幼女、うなだれる男がいた。

姉は状況を理解できていない妹の手を掴みその地点に向かって走り出すのだった。


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