教会にて④
意識を失ってからどれくらいたっただろうか。クボタが目を覚ました場所は最初にいた場所ではなくベッドの上、誰かがこの重い体をここまで運んできたのだろうか。ふと違和感を感じて見渡して見ると足元でエリンが寄り添うように寝ている。
クボタは起き上がり、エリンを抱き抱え、自分が寝ていた位置にエリンを置く。
「俺の心配をしてくれたんだ。もう大丈夫だから安心して休むがいい」
クボタはそう言って寝室から出ようとしたとき、聖女が入ってくる。
「まるで本当の親子みたいね、情が移ったのかしら?」
からかう聖女にクボタは本気で照れていた。
「この子は年に似合わない苦労をしてきた。すこしくらい労ったってバチはあたらんさ」
そう答えるのが精一杯だった。
「まあ、照れちゃって、強そうに見えるあなたでも心に付け入る隙はありそうね。気をつけなさい、これから戦う相手には精神攻撃が得意なのもいるのよ」
クボタはさすがだと思った。こういうアドバイスをするためにこういう話をしたのだと。
(腐っても聖女というところか、確かに気をつけなけねば)
しかし実際は違う、聖女はさっきのほほえましい行為を見てからかっただけだった。そして本気で思った、この二人と家族になりたいと。
二人して講堂に向かう。そこにいたのは真剣な表情をした大賢者と付き従うフェンリル二頭。
「調子はどうじゃ、なにやらいい表情をしているな。魔力はもう充分に行き渡っているはずじゃ」
そう言う大賢者に対し
「ああ、なんだか行けそうな気がする」
と答える。
「それじゃ試してみるか」というやいなや火の玉やら巨大な氷塊など次々飛ばしてくる。
しかし、それらがクボタに衝突しようかとした瞬間、砕けるようにして消滅する。
「危ないなぁ、室内だぞ」
「ほう、無詠唱でプロテクションを発動させたか、予想以上じゃ」
「これが魔法か、こいつはいい」
クボタは素直に喜んだ、新しい力を得たことに
「オヌシの力はこんなものではないはずじゃ、攻撃してこい」
「だから室内だって」
といいながら魔力の塊を次々に打ち出す。
「ほう、これだけの魔弾を連発するのか、初心者にしては上出来じゃ」
といいながらも大賢者は魔弾を消滅させる
「さすがは大賢者、こんなのはどうってことないんだね」
「当たり前じゃ、初心者にやられるようじゃ大賢者なんぞやってられるか」
そんな会話を交わしていたが二人は忘れていた。
「二人とも何をやっているんですか、ここをどこだと思っているのですか」
フェンリルが壊した入り口を修理していたシスターデルマが怒鳴り込んできた。
楽しい時間は終わりを告げる。
その後、シスターデルマによる説教が長時間にわたって続けられたのである