合流④
「あのさ、あの宰相っていうのは勇猛果敢な猛将だってはなし……,そんな人が守るべき主君から逃げ出すとは思えないだけど」
「逃げたのは事実、そのおかげで……」
使者を追い返した後もエリンは怒っていた。
「誤解だとか、意志疎通を欠いていたとか、なんか気になるんだけど」
「単なる言い訳でしょう。あのような者を使者にするということで宰相の人間性がわかるというものです」
女望み白服も怒っていた。
「まあいいか。さっさと戻ろうか」
そう促したクボタが見たのは燃え盛る町の風景だった。
「申し訳ありません、完全に誤解なされておられます。全く話を聞いてもらえませんでした」
「貴様を送ったのがそもそもの間違いだったようだ。やはり直接釈明したほうがいいのかもな、それに保護者と名乗る男も気になる」
さてどうするか、宰相は思案する。
「王女の後を追え。無理矢理にでも合流する」
「いったいどうしたというのだ」
「ワイバーンが町を攻撃したと」
「ワイバーンがなぜそんなことを、町を襲うほど獲物に困っているわけではあるまい」
「人が乗っていたとの目撃情報があります。ワイバーンを使役できるテイマーが襲わせたのかも?」
「ワイバーンを使役できるほどのテイマーがいるのか? そんなの聞いたことないぞ」
「しかし、事実であります。それにとてつもない威力の魔弾を放ち、なおかつ人を降らせたとか」
「とうてい信じられる話ではありませんな」
「本当か嘘かどのみち行かねばなるまい。全軍に伝えよ。ファンタスティーに進軍する。ただ気づかれるな。戦闘は極力避けたい」
三者三様にファンタスティーを目指す。
「敵をすべて排除、完全に制圧しました」
「了解した。引き続き救出活動を続けろ。負傷者の治療を優先しろ」
「それならあの方が」
ぶかが指し示した方向に一人の男がいた。
「あなたが隊長さん、この度の救援に深く感謝申し上げる」
「貴方は?」
「これは失礼、まあ名乗るほどでもないしがない治癒師です。たまたま訪れていたらこんなことになってしまってね」
「いえ、こちらこそ助かりました。あなたがいたおかげで救出活動がはかどりました。礼をいうのはこちらのほうです」
「でもね、助けられない命も多数ありましたよ。治癒師としての限界を感じます。彼ら一般市民には全く関係ないこと。いつだって犠牲になるのは無関係の人たちだ。どうにかならないものかな」
そう話す彼に対し隊長は返す言葉が出ない。
「いや、攻めているわけではないんですよ。ただそう思っただけですよ」
治癒師はそう続けた。
「もしかしてグルージン先輩?」
「アルビーか、なんだ、能力の使い道を理解できたのか」
「説教は後で聞きます。助けてください」
アルビーは必死だった。治癒師に助けを求めた