合流②
「まずいな、さすがにここまでか
足元に転がる敵兵士を目にいれながらアンブラスはこれからのことを考えるがいいイメージは浮かばない。
「確かに休めとはいいましたがね……、いい加減目覚めてくれるとありがたいですけど、いや、それは言うまい。自分でなんとかするしか……」
「何をぶつくさと。さしもの白服様も限界ですかね。貴様らもう少しだ。もう少しで白服を打ち負かせるぞ。踏ん張れ!」
「よし、やるぞ」
隊長の檄に応える敵兵、一斉にワンブラスに襲いかかる。
覚悟を決めて迎え撃つワンブラスであったが敵の刃が届く直前、大音響とともに目の前が白煙に包まれる。と、同時にすさまじいほどの衝撃が襲いかかる。
吹き飛ばされそうになりながらもなんとか踏みとどまったワンブラスの目に映ったのはもはや人間としての原型をとどめないほどにあちこちに肉片を飛び散らした敵兵の姿だった。
「なにがあった? 今のはいったい…」
「上空からの爆撃、ワイバーンで都市を精密爆撃って。彼らがそんなことを」
先ほどの大音響で目を覚ました聖女は飛び去るワイバーンを目にいれながら目の前の惨状に呟いた。
「ワイバーンって、あれが我らの味方を?」
アンブラスは聖女の呟きに疑問をぶつける。
「よく見て。人が乗っているでしょう。調教に成功したんだわ」
「しかし、ワイバーンにあそこまでの攻撃力はないはず。どういうことでしょうか?」
アンブラスの疑問はすぐに解けた。
二人が見つめる先で白煙とともに火柱があがる。
「爆弾を投下したのよ。でも、あれだけの威力の爆弾を造れるなんて…」
「爆弾とは? 魔法ですか? あれだけの威力だと乗っているのはかなりの使い手、それだけの人材がどこに?」
しかしすぐに次の疑問か浮かぶ。
「魔法じゃないわ。爆弾は敵を殲滅するためのみに使われる破壊兵器。あれがあればすぐにこの戦いは終わる。ただ戦死者は飛躍的に増えるけどね」
聖女の答にアンブラスは戦慄を憶える。
呆然とするアンブラスの耳に再び爆音が響く。ワンブラスは先ほど見た光景を思い浮かべる。そして思う、こんなの戦いじゃない、ただの殺戮だと。
「はやく救出を、治癒を」
我々の役目はあくまで救出である。もはや雌雄は決した。敵兵を治療するように急かすワンブラスに聖女は応じない。
「こんなの治せるわけないでしょう。もはや彼らは人間ではない。どうしようもないわ。それよりもこれからすることは?」
「アルビーと合流します。急ぎましょう」
アンブラスと聖女はアルビーと合流すべく移動を開始する。
「すげぇ、こんなに威力あるのか」
爆弾を投下したワイバーンのパイロットは自らの行為に震えていた。敵に囲まれた味方を救出するために投下したのだがまさかここまでの威力があるのかと。
「だからこそ使いどころは考えないと、おい、しっかりしろ。まだ仕事は終わっていないぞ」
彼の頭のなかで念話が響く。
同僚の呼び掛けに彼は我に返った。彼にはまだ任務があった。