教会にて
教会にやって来たが誰もいないようだ。
「ごめんください、どなたですか、冒険者のクボタと申します、お入りください、ありがとう」
そういうギャグをかましてもコケる人もいない、ツッコミも入らない。
このオッサン、何を言ってるんだとエリンは蔑んだ表情でクボタを見る。
それでもクボタはめげずに「悪いが君たちはここで待っていて」とフェンリル達にそう指示し教会の中へ入っていく。
「ちょっと貴方達何を勝手に入ってきてるんですか」
あわてて奥の方からシスターが出てくる。
「忙しい中申しわけない。ちょっとした事情があって助けてもらいたいのだが」
「ここは教会ですから助けてと言われれば助けない訳にはいきませんが私はただの留守番でして。今、ここの方々は全員王都に行っていましてどうにもできないのです」
シスターがそう告げるやいなや教会内部が突然光に包まれる。
「お待ちしてましたよ。ヤスノリ=クボタ」
光の中から声がする。
「あっ、あっている。いや、待っていたとはどういうことだ」
名前を間違われなかったという事実に安心してしまい、いろいろと突っ込むことを忘れてしまい、素直に反応してしまう。
「あなたはここに来る前、使命を果たせと言われたでしょう。その話をしたいのですよ」
光のなかから一人の女性が現れる。
「もしかして、貴方は聖女様、ここにいらっしゃるとは噂には聞いていましたがまさか本当に会えるとは…」
シスターはその姿を見てひざまづく。
「聖女とは…、本当にいたんだ。ここまでお約束に忠実とは」
クボタも驚きを隠せない。
エリンも驚いているがその表情は何かこの先に起きる事態を想像して怯えているようだった。
「シスターデルマ、いきなりで申しわけありませんがあなたには席を外していただきたい。この者達と内密の話がしたいのです」
「しかし聖女様、このような得体のしれない者達だけというのは」
「心配はいらん。ワシがおるからの」
出ていくのをためらうシスターに対し声をかけたのは一人の老婆、見た目に反し、凄まじいほどのオーラを放っている。
シスターはそのオーラに気圧されあわてて外に飛び出す。
「さて、クボタよ、ワシと対峙して少しも動じないとは、さすがというべきか」
「その雰囲気、かなりの強者とみた。名を聞いても」
「ワシか、名はソラル。世間じゃ大賢者と呼ばれておる。今はこのように聖女の護衛をしておる」
(「聖女に大賢者、さすがに異世界、お約束通りだ」)
クボタは心の中でそう呟いた。
その一方でエリンはただ怯えていた。それに気づいた聖女、優しく声をかける
「安心して、エリン王女、私たちはあなたの味方です」