表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/18

見張りの一日

 「ジリリリリリリリリリリリリッ」

今日も時間通り目覚ましが鳴る。


「・・んっ・・・」


毎日早くから起きるのは億劫だが、この音を聞くと起きなければ、と思うくらいには順応しているようだ。

これから仕事だ・・・と思うと少し憂欝な気分になる。

まぁ、それを言ってもはじまらないので、憂鬱を振り払い、顔を洗い、歯を磨き、朝食を食べ、また歯を磨き、着替え、

こうして俺の、いつも通りの見張りの仕事がはじまる。



 最初の仕事は、まだ起きていないだろう同僚を起こしに行くところからだ。

正直、俺が起こしに行くこと自体がおかしい気がするのだが、気にしたら負けだろう。飲みに行ったときには奢ってもらう事もあるしな。

見張りの仕事は、基本的に2~3人で行う、これは1人に問題が起きた時に、もう1人が伝令役となるためだ。

なので、同僚とのコミュニケーションも仕事の内なのだ。

おっと・・そんなことを考えているうちに起きてきたようだ。

「おぉ、おはようさん」

「あぁ、おはよう。今日も迎えに来てもらって悪いな」

悪いという割に悪びれてないように聞こえるが、これが素だと分かっているので気にしない。

付き合いが長いが、悪い奴じゃないの良く知っているしな。

「じゃ、今日も仕事に行くか、柵周辺の見回りからだな」

「了解だ!」

さっき「最初の仕事は」とか言ったが、俺たちの仕事なんて異常がないかの見回りと、不測の事態への対処ぐらいだろう。




「こっちは一通り見まわったが問題なさそうだ!」

「こっちも問題ないみたいだ」

とりあえず1周して見回ったが大きな以上は見つからないようだ。

気になる事と言えば、北側の方が少し古くなっているぐらいだろう、これは後で報告しておこうと思う。

「いったん区切って飯にするか」

「そうだなっ!正直腹が減って、頭も回らなくなってきたところだ」

「おいおい・・・頭なんて使ってるのか!?」

「ひ、ひどいなぁ・・俺だって頭ぐらい・・」

「さ、飯にするか!」

「・・・・は~、分かったよ」

軽くからかいながら適当なテーブル席に腰を落ち着かせる。

このテーブル席は、外で弁当を食べる事の多い見張りのために用意されたものらしい。




「ふぁぁ~~ぁぁあ、眠くなってきたなぁ」

「ホントにな」

俺は相槌を打ちながら、重い瞼が閉じないように必死に眠気と戦っていた。

今日は何事もなく一日が終わるだろうなぁ、とか思っていたが、その思いとは裏腹に甲高いサイレンの音が鳴り響いた。

続いて、

「脱走だっ!!繰り返す、脱走したのがいる!」

ああ、またか。不測の事態ってやつだ。

そう考えた所で手近なスピーカーから詳しい場所や外見についての情報が流れる、ちょうどそれに耳を傾けた時、

「・・・・どうやら、俺たちの仕事のようだな」

「ああ、サクッと終わらせて飲みにでも行くか」

少し先にある柵のあたりを見て、それから俺は、こういう時のために携帯を許された武器を構える。

握りやすい形をし、先端が筒状になっている。

その武器を持った時、ちょうど握るであろうあたりにある引き金に指をかける。

そして、いくつかの深呼吸の後、そっとそれを構えると、

「ふーーーっ・・・・・・・」「ズドン」

引き金を引いた。

目の前で脱走したのが倒れている。

こちらを見て何かをつぶやいている。

そして、それは、

やがて動かなくなった。



「また脱走か・・」

「何年かに一度くらいはあるんだよな、あいつら何がしたいんだ?」

「さあな、俺達には分からんよ・・・・それなりの自由は与えているんだけどな」

「なんだったか・・・上の人たちが言ってたな・・たしか・・・・・」

「品種改良、だったか?」

「それだっ!なんでも色々な遺伝子を組み合わせて実験してるらしい。いいのが出来たら世紀の発見だ、とか騒いでたよ」

「それじゃ失敗したのは?」

「処分だってよ、失敗したなら必要ない、逃げ出したのを置いとくほどの面倒は見られないってさ」

「そしてそれが俺たちの仕事ってわけだ」

「ま、そうだな。とりあえず今日の事は忘れて、飲みにでも行くか」

同じような柵がならぶ前で、失敗作を前に男達はつぶやいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ