心のある人形と
僕の通うお寺には、いつも何を考えているのか分からない子がいる。
笑ったところを見た子はいなく、泣いたところを見た子もいない、
お寺に通っているとき以外に何をしているのかもわからない子だ。
周りのみんなは、
「何考えているのか分からないから怖いな」
とか、
「あいつの周りに近づくのは止めたほうがいいぜ」
とか言っている。
でも、そんな事を言われても、その子は表情一つ変えない。
だから、いつしか
「あいつには感情がない、それは考えられないからだ」
「だったらあいつは何なんだ」
「そんなの決まってるだろう、人形だよ、だから心がないんだろ」
「そうだな・・なんだか不気味な奴だなぁ」
とかの悪口とともに、心のない人形 と、言われるようになった。
それでも、それ以上にあの子に興味を持っている人はいないのだろう、
あの子から何かを聞き出そうとか、話しかけようとか思っている人はいないみたいだ。
もう夕方だ、みんな家に帰る時間だ。
もちろん僕も帰宅中だ。
この後何しようかな とか考え、ふと前を見ると・・・あの子だ。
少し気になっただけだった、たったそれだけだけど、理由なんてそれで十分だろう。
僕はあの子に話しかけてみる事にした・・・
・・・話したあの子は、なんていうのかな、、普通だった、
少し感情は見えにくいかもしれないけど、どこにでもいる普通の子供だった。
あぁ、なるほど、と思ってしまった。
心がないのは、あの子じゃなくて・・・
僕の通うお寺には、心のある〇〇と、心のない〇〇がいる。