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ある土曜日  作者: hyo
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01

きっちりと締め切ったカーテンの隙間から、じんわりと光が入り込んでくる。

今日は外は曇り空、光は朝の到来を継げるため、真っ暗な部屋を優しく包んでいく。


静まり返った一帯に響くのは、冷蔵庫の鈍いうなり声と、穏やかな寝息だけだ。


窓からは少し離れたテーブルの上、いつからか一定のリズムで点滅を続けていた黄緑色のランプが、ピッという小さな音とともに姿を消した。

しかし代わりに、そのランプの持ち主である卓上電子時計が、「土曜日」と表示された文字盤を携えて姿を表した。



甘い夢を堪能していた私を叩き起こしたのは、爽やかな小鳥のさえずりでも、彼氏が作る朝食の香りでもなかった。

何よりも不快で、何よりも効果のある電子音。

毎朝決まった時間に鳴るけたたましいアラームだ。


私は目も開けず、アラームの鳴る位置をもぞもぞと手探りし携帯を探す。

いつもなら枕のすぐ横で鳴り響く音が、どうやら今日は少し遠くから聞こえてくる。

音の鳴る腰の横あたりでバタバタと手をかき回し、やがて小指に触れた固い感触から目ざとく携帯を引っ掴むと、画面を見もせず慣れた手つきでアラームを解除した。


静寂が帰ってくる。

しかし夢から引っ張り出された意識は、どうやらしっかりとこちらに腰を降ろしてしまったようだ。


「うー。酒くさっ。」


たいした量を飲んだわけでもないのに、昨日の残り酒をほのかに感じる。


なぜ優雅なはずの土曜の朝一から自分の歳を感じなくてはならないのか。

待ちに待った休みだというのに、今週末のスタートは全くもって幸先が悪い。


引っ張り出された意識をもう一度夢の世界へ送り込もうと、目を固く閉じて息を深く吐いたところで、今度は聞き慣れない電子音が部屋中にこだました。


全く予期していないことが起き た時、人それぞれリアクションの取り方は違うだろう。


私のリアクションは特に大きいと周りからよく注意されるが、部屋で1人の今日もご多分に漏れず、まるで漫画のドジっ子主人公のように派手に両手を上げて驚いた。

それだけなら、まだましだった。

振り上げた左手は、さっきまで格闘していた携帯を、手を上げきるほんの手前まで道連れにしたらしい。


目を開くのにコンマ1秒。

焦点を合わせるのにコンマ1秒。


私が携帯に照準を合わせた時、携帯は無駄に高い天井すれすれまで飛翔していた。

私は声にならない悲鳴を上げてベッドから転がり落ち、携帯の軌道を先読みして精一杯手を伸ばす。

が、携帯は私の決死のダイブなど気にも止めず、伸ばした手の遥か先で鈍い音とともに着地した。

目を反らしたくなるような、大失敗の着地だった。


今週末のスタートは、全くもって幸先が悪い。

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