1話-2
やってしまった。
幼い男の子は意識不明の重態。
こんなことが。
「真面目に生きてれば…」
糞ババァ。
「きっと良いことが…」
ふざけんな。ふざけんな。
病院の待ち合い室で、俺はいつの間にか寝てしまったらしい。
目を開けると暗かった。
何も見えない。目をこする。
次第に闇に慣れてきた。
暗い暗い。
剥き出しのコンクリートが見える。
四方。コンクリートの壁。
「…」
しばし、絶句の後、気づいた。
四方の壁がコンクリートだが、一辺だけ木製と思われる扉がある。
数歩、扉に向かって進む。
不思議と、こんな不可思議な現象に、驚いたりもしなかった。
まだ、夢の中にいるのかもしれない。
疲れてるから、俺。
扉を開ける。
その先に広がっているのは、
「…カフェ」
こじんまりしたカフェである。
扉は今入ってきた一つだけで、窓の外は夜だった。
「いらっしゃいませ」
カッチリとした白シャツに黒いベストを着用した、20代半ばらしい爽やかな男が微笑む。
「いや…」
言葉が出ない。何て言えばいい?
病院にいたのに、気がついたらコンクリート部屋にいて、扉を開いたらここでした。
と言って笑うか?
俺が患者として病院を紹介されるのがオチだ。
「どうされました?まぁ、ビックリしますよね」
爽やかな笑顔で続けた言葉に、人生で一番ビックリした。
「病院にいたのに、気がついたらコンクリート部屋にいて、扉を開けたらこんなカフェでは」