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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第六章 初めてのおつかいに行ってみた
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希望のクローズドループ

「ルール…ルールだと?」


「そうだ、ルールだ。今日のゲームのな。」


「ふざけやがって……」


こいつは本気だ。本気でゲームを楽しむつもりなのだ。

そして、それは間違いなく無理難題。人質を取られている俺達は従うしかない。

俺はイライラを抑えられずで腰のポーチを指で叩く。


トントントン トーントーントーン トントントン


「なぁに、ルールはシンプルだ。今からお前ら殺しあえ。どっちかが死んだら、このぶら下がってる連中は助けてやるよ。」


そう来たか…。まぁ、人質取られてありがちな展開だな。

ロロはどうする?

チラリと様子を伺うと明らかに覚悟を決めた目でこちらを見ている。


ま、当然そうなるよな。


「そうそう、途中で俺に襲いかかって来てもいいぜ。失敗する毎に1人ずつ落とすけどな。」


その言葉と同時に岩陰から赤と青が出て来た。


「ふふ、無駄だよ。どんな攻撃だって私たちが弾いちゃうからね。」


「まぁ、そう言わずに。私としては果敢な挑戦を期待しますけどねぇ。」


防備は万全という事らしい。


「あと、ダラダラ長引かせんなよ?飽きたから1人ずつ落として遊びだすかもしれねぇからな。」


ロロは無言でサイズを構えて俺に対峙する。


「ま、待て。何か方法が……」


「だったら今すぐ言え。実行しろ。出来ないなら殺す。それしかないだろう?」


「……まいったなどうも……」


腰に手を出し当ててポーチを叩く。


トントントン トーントーントーン トントントン


「まぁ、私たち元々こうなるのは運命だったさ。気にするな!」


ロロが一気に近づき鎌を横に薙ぐ。


俺は踏み込んで鎌の刃よりも内側に入り込み、柄の部分で受ける。

ロロは止められたサイズの柄を引き込む。サイズの刃が俺の背中に迫る。


いつかのロロとブルの攻防の再現だ。

だが、俺は片手でこいつの武器を抑え込んだりは出来ない。代わりに柄を跳ねあげながらしゃがみこみ刃を躱した。

ついでに足元の土を掴みロロの顔に投げつける。


「くっ! 汚いぞ!!」


……まさか盗賊に汚い言われるとは思わなかったな。


俺はこの隙に距離を取り、周りの様子を伺う。


ロットン前に立つ赤と青。油断している様子はない。

他に何かないか……

俺は周囲に視線を巡らせる。


「オイオイ何やってるだ。追撃のチャンスだろうが。あんまチンタラした戦いしてっと、暇つぶし始めちまうぞ。」


「く……そうだ。ウィル。諦めろ。もうこうなったら私たちどちらかが死ぬしかないんだ。元々我々は敵同士だ。別にそう心も痛まないだろ?」


「どちらかが死ぬしかない?諦めろ?心が痛まない?」


まったく、何を行ってるんだこいつは。

俺はハッキリと言い放つ。


「どれもNOだ。」


「……馬鹿なやつ」


そう言ってロロはちょっと笑った。ちょっと寂しそうな笑いだった。


ロロが飛びかかってくる。俺はその連続攻撃を剣で受け止め、あるいはフォスによる高速機動でなんとか避ける。

だが、それでもロロは生粋の盗賊にして戦士。

俺がいつまでも避け続けられるわけもなかった。


ロロがしかけたフェイントに引っかかった俺は、柄の一撃を思いっきり足に受け、転ばされてしまう。

慌てて起きようとするが、それよりも早く冷たい鎌の刃が俺の首に添えられた。

一瞬、俺とロロの視線が交錯する。


「残念だわ。」


「俺もだよ。」


破裂音が響き渡り、ロロの身体がユックリと倒れる。


雷撃呪


俺の首に鎌を添え、そこで一瞬手を止めたロロ。その瞬間に俺は起動しておいた雷撃呪を発動した。電撃は鎌を伝ってロロの体を走ったはずだ。


……パンパンパン……


雨の中、ロットンの拍手が響き渡る。


「見事だウィル・ハーモニクス。中々見所のあるショーだったんじゃないか?個人的にはもっと葛藤を見せて欲しかったけどな。」


まったく嬉しくない賛辞だ。


「これで村人は解放してくれるんだよな?」


「何言ってんだ。まだトドメを刺してないだろう?」


ロットンが倒れたロロを指差す。


「さっきの雷撃呪が絶命にいたるものだったか? いや、そうは思えねぇなぁ。仕事はきっちりやるもんだぜ?」


……チラリとロロをみる。

その胸は微かに上下している。

それもそのはず、この雨で俺たちは全身濡れている。

雷撃呪の電流は殆ど濡れた体の表面を流れたはずだ。よって、実質的ダメージはそれほど無い。

と、いっても実験したわけじょないし、実際はどれ程かはわかはないのだが……。


「知るかよ。」


俺は言い放った。


「俺はこいつらとは赤の他人だぞ?なんでお前の言い分に従わなきゃならないんだ?」


俺はロロに向かい立つ。


「おれの敵はお前だろ?」


「ククク、正解だ。」


ロットンが座っていた岩から飛び降りる。

よし、これであいつが人質から興味が無くなった。後はどうやってこの場を離れるか……。


「正解だけどなぁ?」



ロットンが岩に手をかける。


……そして、サラリと言った。


「念のためこいつらは殺しておこう。いや、なに、単なる嫌がらせさ。」


弾け飛ぶ巨岩。底にくくりつけられていた縄も当然弾け飛ぶ。


それはつまり……。



……だが聞こえてくると思った悲鳴は聞こえなかった。


代わりに崖の下から石が飛んでくる。


「なに⁈ なんだ、この石はっ、どうなってやがる?」


飛んでくる石に驚愕の表情で立ち尽くすロットン。


「お下がりください!」


石がロットンに当たらないように赤と青が弾きかえす。


と、ロロが跳ね起きて背中を向けたロットンを狙う。


「地獄に帰れ、この腐れ顔がぁ!」


咄嗟に体をそらして躱すろっとんだが、避けきれず体に赤い一本の線が走る。


そこに俺の追撃のインパクトブレーカーをあわせる。


「チィッ!」


だが、ロットンもそれに合わせて魔法を発動。

互いの呪文が交錯し、爆発音と共に俺の体は弾け飛ぶ。


背中に地面が着いたと思った瞬間。俺の体はゴロゴロと転がる。


……手応えはなかった。外した直感し、顔を上げる。

そこには先ほどまでの不敵さをとりもとしたロットンが立つ。

そして、その背後の崖からは崖を這い上がってくる人影。その様はロットンの姿と被り地獄の亡者を連想させる。

だが、違う。

コレがさっきの石飛礫の正体。人質にされていた村人達だ。


「ったく……、一計を案じるのはいいが、ちょっとは手加減しろ。身体が痺れてたせいであいつを仕留め損なったじゃないか。」


「すみません。ロロはどう動くか分からなかったし、取り敢えず全力でヤリました。」


「……ま、茂みの奥に、崖を下ろうと回り込むリジット達を見るまでは、私も本気だったからな。」


そう言ってロロが崖の方を見る。

そこには村人達に混ざり崖を登ってくるリジットとユリスがいる。そして、二人で高らかかに掲げるVサイン。


ロットンがそれを見ながらため息をついた。


「……どうやったのかは分からないが、状況を伝えてたって事か。こりゃぁヤラレタな。」


俺は腰のポーチを一回叩く。感謝の合図だ。

その反応として、ポーチが一瞬バイブレーションする。

このポーチの中にはモールス君が入っている。こいつを使って俺はユリスと通信をした。と、言っても送ったのは


「SOS」


の三文字だけだけどな。

そして、それだけで、あいつらは見事状況を打破してくれたのだ。


「さて、形成逆転だな。」


俺はロットンに剣を向けた。




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