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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第六章 初めてのおつかいに行ってみた
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絶望のオープンループ

馬に休養を取らせ、俺たちはロロの言う村へと向かう。

そこは、ロロ達の隠れ里となっており、普通の人間は滅多に立ち寄ることはないらしい。近隣でも知るものの少ない村とのことで、ロットンから逃げる俺らからすればまさにうってつけの村だった。


「ふん……本来はお前らのようなよそ者をいれる村じゃないんだからなっ。」


自分から教えてくれたくせに、ロロは渋っている。

渋ってるとはいっても、口で言うだけで案内はちゃんとしてくれているけどね。


「な、なんか盗賊の隠れ里って……ちょっと怖いかもです。」


「あ?……まぁ、そんなに構えることはないよ。そこはあたしらがたまに拠点にしてるってだけで普通の村さ。べつに村人全員がその……なんだ。私らと同じような仕事ってわけじゃないよ。」


ちょっと言いにくそうにロロが答える。

こういう風に話していると、ロロが盗賊の頭なんだという事は忘れてしまうな……。」


「そういや、お前はどうして捕まってたんだ?」


「あたしらのアジトの一つが衛兵のやつらに踏み込まれたのさ。まったくさんざんな目にあった。まぁ、入口であたしが暴れてるあいだにみんな逃げおおせたはずだけどね。」


「じゃ、お前ひとり逃げられなかったのか。」


「う、うるさいな。とり囲まれたんじゃしょうがないだろ!」


そういうと、ロロはプイっと外を向いてしまう。

……でも、こいつは一人で仲間を守ったってことだよな。

なんていうか、仲間とっては結構いいリーダーなのかもしれない。


ちょっと向こう見ずなところはありそうだけど……。



やがて馬車は街道を外れ、けもの道のような細い道を上っていく。

ぎりぎり馬車が通るような狭い道だった。

必然、馬車の進行も遅くなる。


「なぁ、まだ遠いのか?」


「ふん、文句が多いね。もう直ぐだよ。」


「さっきもそう言ってたじゃないかよ……。」


もう直ぐだと、ロロが最初に言ってからかれこれ1時間。

轍に車輪を取られやさないかと、ずっとヒヤヒヤで疲れてきた。


「あ、でも。なんか匂いがして来ましたよ?」


ユリスに言われて鼻にスンスンと空気を吸い込む。

そう言われれば、なんか空気が変わって来たな。


「これは……なにか焼いたような匂いがですね。今の時期に焼畑でもしているのですか?」


リジットの言葉にロロが首を傾げる。


「いや、焼畑なら先月やってたはずだ。こんな時期に……」


ロロはだんだん険しい顔になってくる。

そして、それは俺も同じだった。嫌な予感な喉をせり上がってくるような感じだ?


と、ロロがサイズを手にして馬車を飛び降りた。


「ユリス、リジット。俺もちょっと様子を見てくるから、ここで待っててくれ!」


俺はそれだけ伝えると、ユリスとリジットに馬車を任せ、ロロを追いかけた。



----------

煙が立ち上っていた。

あちらからもこちらからも。

焼き尽くされた家屋と畑。

立ち尽くすロロは、それを現実として受け入れられているのだろうか。


村は何者かに襲撃されていた。

まだ火が燻っている所からそんなに前の話ではない。


「……おいっ! 誰かいないのか⁉︎ 私だ、ローゼリアだ!!」


しかし、答えるものは誰もいない。


……いや、微かだが何か聞こえる……?


……歌?


「ロロ! 向こうから何か聞こえないか⁈」


「……!」


俺の言葉にロロも聞こえたらしい。微かに聞こえるその歌に向かって俺とロロは慎重に向かって向かう。

この先にいるのは敵か味方か……もちろん敵だ。

こんな状況で歌を歌える味方かなんかいるわけがない。


「こっちは……裏切りの谷か……」


「裏切りの谷?」


「あぁ、あまり気分のいい場所じゃない。村の裏切り者の処刑場……さ。」


そう言うロロの顔色は少し青ざめて見える。


「村に死体は無かった。きっと……いや、兎に角探すしかないだろう。」


「……そうだな。」


本当はきっと大丈夫と言いたかった。死体は無かったのだから、何処かに生きているのだと。

でも、……言えなかった。


シトシトと鬱陶しい雨が降り始めていた。



鬱蒼とした獣道を足音を殺して進むと森の開けた場所にでる。そこには僅かに開けた平地があり、その先の地面は切れている。

平地の真ん中には人より大きな岩がある。成人5人くらいで手を広げて一周できるかどうかくらいの大きさだ。

そして、その上には人影がらある。

大岩の上には片膝を立てて座っていた。

全てを見透かすように、こちら見てすわっていた。


「待ってたぜ? 宿敵。」


地獄がひしゃげた様な笑みだった。


--------

「どうして此処が分かった?」


「つまんない事、聞くなよ宿敵。お前がロウエルといたのは見たからな。まぁ、此処にくるだろうと思ってよ。朝から歓迎の準備してたのさ。」


「歓迎……だと?」


「そうだとも。ところであの嬢ちゃんはどうした? 俺の愛しいエリスはよ?」


「貴様……!」


俺は血が出そうなほど歯をくいしばる。


「今回はあいつの為に用意したんだがなぁ。

あの時の気持ちを。最初の気持ちってのを思い出してもらう為によ?いやぁ、残念だ。」


「村の人をどこにやった!!」


その言葉の不吉さにロロが叫んだ。


「ククク……村人か?あぁ、大体まだ生きてるぜ。何人か抵抗した奴は死んじまった奴もいるがなぁ。あぁ、心が痛むねぇ。」


「貴様の茶番に付き合ってる暇はない! 言えっ!」


「なぁに、別に隠してる訳じゃないさ。目の前だよ。お前たちの目の前。」


「目の前……だと?」


ロロが目を細める。

見回しても目の前には岩と崖くらいしか。


……いや、待て。岩に何かが巻き付けてある。


……ロープだ。


ちょうどしめ縄の様になっていて。漠然とそう言うものかと思ってしまったが……しめ縄では無さそうだ。何本ものロープが岩に巻き付けられている。

巻き付けられたロープは岩を周回したあと、崖の方に伸びているようだ。そして、崖の下に何かがぶら下がっているようにロープが張っている。


ここまで、見れば感の悪いおれでもわかる。


そして、おそらくロロも分かったのだろう。声が震えている。


「ま、まさか貴様……村のみんなは……」


「そうだ。生きてそこの崖から宙ぶらりんだ。1人一本のロープで結んでいるからな、大変だったんだぞ?」


「貴様ぁ!」


「まぁ、落ち着けよ。ゲームのルールはこれからだぜ?」




…最近話のストックがなくなり、自転車操業でございます。(^^;

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