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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第一章 異世界に来た!
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7404の囁き

翌日。

今日の手持ち金額は銅貨4枚。

うっかり昨夜エールを呑んだのが痛い。

宿は一泊朝飯ありで銅貨4枚、夕飯が銅貨1枚。

このままでは夕飯が食べられない。

昼飯はもう抜き決定だ。


さて、なんとか今日も最低一つは売れますようにと祈りながら昨日と同じ場所に露天をひらく。


と、いってもやはり知名度ないのは昨日と変わらず、中々立ち止まってくれない。

まぁ、今日がいい天気でよかった。これで曇りや雨だったらもっと悲惨だったな。と、思いながらノビをする。なんだかのんびりした気分になるな。

そう言えば、仕事しながらこんなノンビリした気持ちになるなんて無かった。いつも納期とトラブルと設計変更に追われていた。あのセッパ詰まった感覚が今は無い。

いや、今だって売れなければ飯抜きだ。そして、このまま売れなければ野垂死にする可能性だってある。今の方が本当は危機的状況のハズなのに…なんでだろう?

ボーっと空を眺める。

天井が無いからかもしれないな、と、なんとなく思った。


そんな物思いに耽っていると、誰か立ち止まった気配がした。

40位のヒゲのおじさんだ。中々恰幅がよい。

「これが最新のマッサージ道具だって?」

「はい。是非お手にとって使ってみてください。少し魔力を流せば動きますから。」

「どれ……あ、ぉぉ…これは中々…」

しばらくおじさんは目を瞑って振動を堪能する。

「なるぼど、ラッセンの奴が珍しく絶賛するわけだ。いくらだい?」

なんと、ギルド長の口コミらしい。


「銀貨一枚になります。」

「安いな、他にないものだしもっと上げても売れるんじゃないかい?」

「いえ、知名度のない、生活必需品でもないとなると、中々売れないと思いまして。」

「そうか、じゃぁ有名になる前に買っておくか。3つもらえるかい?」

「ま、まいど、ありがとうございます!」

ギルド長。最初に胡散臭い顔とか思ってごめんなさい。


午前中の間に売れたのは結局その3個だけだった。とはいえ、コレで今日の宿代は出来た訳だし、午後は街の探索を行うことにした。とりあえず材料のガラス玉を仕入れなくてはいけない。まずは商人ギルドでお店を紹介してもらおう。


商人ギルドに入る。お昼時だからかあまり人はおらず受付に待ってる人は誰もいない。

ラッキーとばかりに受付に進む。受付嬢さんは昨日と同じ人だ。

と、受付嬢さんと目が合う。

「あっ…」

ん?受付嬢さんが俺の顔を確認するなり頬を赤く染めてなにやらモジモジしているような。

少し体を揺らすようにクネクネしてる。

「あの〜」

「ウィルさんっ、そのありがとうございます。素晴らしい商品でした。」

え、なんの事?

「その〜…、肩が、そう、肩がとっても軽くなりました。肩が気持ちよかったんです。」

……

え〜っと

「もしかしてなんですけど…ギルド長の?」

「あ、言ってませんでしたっけ?私、ラッセン・フィーダルの妻、トルテ・フィーダルです。トルテとお呼びください。」

そう言ってペコリと頭をさげるトルテさん。

ん〜、ギルド長はまぁ30後半から40前半という所。トルテさんは上に見積もっても20半ば。まぁ、考えられない程の歳差ではないけど…。

そう言えばトルテさん。昨日より肌がツヤツヤしてるような…。

うん、深く考えちゃ駄目だ。

「いえ、こちらこそご購入ありがとうございました。気に入って貰えたなら良かった。なにかご要望とか、ありますか?」

「ん〜、あれって、一定以上は魔力込めても強くならないじゃないですか。それってなにか理由があるんですか?」

「ええ、あれはリミッターをかけてるんです。ガラスなんであまり強く振動させると割れる危険があるかなと思いまして。」

「ん〜〜…確かに怖いですね。」

なんか凄く納得されたみたいだ。

「ですからもっと別の材料を使えば強める事は出来ますよ。ただ、そうするとどうしてもお値段が…」

「そうですよねぇ。でも、そうすれば強くはできるんですねぇ。」

なんだろう、トルテさんの目が肉食系だ。

「あ、そしたら速度を変える事は出来ないんですか?あれって、強さを変えても振動の速さは変わらないじゃないですか。」

「あぁ。なるほど。確かに…ただ、遅い方には変えられますが、早くするのはやっぱり危ないので。」

「ええ、ゆったりとした振動も気持ちいいかなって思って」

そう言って。トルテさんがペロッとしたをだす。な、なんだろちょっと可愛い。

と、トルテさんの後ろからラッセンさんがやってきた。

「トルテ、仕事中になにを話してるんだ。」

「あ、ごめんなさい。ラッセンさん。」

そう言って振り返ったトルテさん。怒られながらも嬉しそうな雰囲気を醸す。

む、むぅ。爆発シロ…

じゃ、なかった。

「申し訳ありません、ラッセンさん。私が商品のアドバイスを、頂いていたんですよ」

「いや、ウィルさん。お気遣いありがとうございます。ですが、仕事であまやかしてはいけませんから。ところで今日はどのような?」

「えぇ、マッサージ玉の材料にガラス玉を仕入れたくてですね。何処かお店を紹介していただけないかと。あとは魔法スペル関係のお店ですね。」

「ふむ…そうですね。」

彼は顎になぞりながら少し悩む。

「そしたら。ベルーナの魔法具店がいいと思いますよ。」

「え?」

ラッセンの言葉に疑問符をあげたのはトルテさんだった。

「ラッセンさん。ガラス玉やスペル符なら私の父の所でも扱ってますよ?」

「トルテ。ギルドの人間、特にギルド長の立場で身内を優先してはいけません。それは組織の信用をなくす事につながりますからね」

「でも…」

トルテは納得していないようだったがそれ以上は言うのをやめたようだ。

「失礼しました。それでベルーナの店ですが中央広場から川にそっえ南東に向かった所にあります。小さいお店ですが品揃えのツボは抑えていますよ。ガラス玉もおいていたはずです。」

「ありがとうございます。行ってみますよ。それでトルテさんのお父さんのお店をというのは…。」

「あ、いやこれは、また気を使わせてしまいましたね。実はトルテの父、まぁ私の義父ですが、こちらも雑貨屋のようなものを開いていましてね。魔法具も少々置いてはいるのですよ。トルテの言うようにガラス玉もあったはずです。ですがまぁ、今回の、ウィルさんのご要望的には専門店のほうが合っているでしょう。今後の事もあるでしょうし。」

「なるほど、確かに魔法店のエキスパートの方には是非色々教わりたいですね。」

「ええ、一見私とおなじで胡散臭そうにみえるかもしれませんが。なに、商売はしっかりしてますよ。それと話しついでではありますが、義父の店も良い店です。生活用品、食料、お酒、魔法具まで開く取り揃えていますので、ちょっとした買い物に便利なお店ですよ。」

「分かりました、そちらも後で覗かせてもらいます。」

「ええ、どうぞご贔屓に。…と、いうのが不味いわけですが」

そうあってラッセンさんがニヤッと笑う。

そしてトルテさんのお父さんのお店も教えてもらった。

ふと気になった事を聞いてみた。

「そういえば、ラッセンさんもお店を持たれているのですか?」

と。ラッセンさんとトルテさんがふと目配せしたように見えた。

そして、少し照れたように

「実は私も義父店で働いていたんですよ。そこでトルテとも。ですが、ギルド長になってからはそちらからは手をひきましてね。席だけはまだありますが、事実上引退しています。今はギルドの仕事の他に領主様への商業、金融政策に対するアドバイスなんかもやらせていただいております。」

なるほど、ギルド長ともなると仕事は政治になってくるわけだ。

俺は2人にお礼を言い、ギルド出た。



途中、どうしても腹が減った俺は屋台で肉の串焼きを買ってしまった。なんの肉かは分からないが、牛よりも豚にちかい感じだ。脂が乗っておいしい。その後、ベルーナ魔法具店にむかったのだが、店はすぐに見つかった。

まぁ、なんていうか少しこ汚い感じの店だ。らしいといえばらしいか。

「ヒヒッ、いらっしゃい」

年のころは30か40か。小柄な店主が店の奥ですわってこちらを見ている。愛想笑いを浮かべているが…確かにこりゃぁ胡散臭いな。

猫背で、体を少し斜めに向けた座り方で、伺うようにこちらを見てる。

「あの、ラッセンさんの紹介で来ました。」

「あぁ、聞いてるよ。ガラス玉ならほれ、そこの手前の棚にある。魔法スペルはその本棚だ。あんたも魔法屋なんだって?」

「ええ、駆け出しですけど…」

聞いてる…って、やけに情報が早いな。やっぱり、電話に相当するような魔法があるのだろうか?

「そうかい。じゃあ、自分の魔力は測ったことあるかい?」

「いえ…ないんですよ。」

「そしたらそこに魔力測定機があるからやってみな。」

ベルーナが指差す方を見ると、ひょろ長い器具が置いてある。ちょうど病院にあるような手動の血圧計みたいな見た目だ。左右には握りこむような取っ手が付いている。

「それに全力で魔力を流すんだ。そしたら中の玉が浮かび上がる。何処まで行ったかでお前さんの今の魔力がわかるよ。」

なるほど、確かに目盛りと数字がふってある。単位はマジカだな。0から30までふってある。…22の所になんか目印があるな。

「この22の所の印はなんですか?」

「あぁ、…ヒヒッ、気にしなくていい。それは僕が最盛期に出した記録さ。大した記録じゃないけどね。不思議とそれを超える人がいないんだよ。ヒヒッ」

ん〜、なんていうかなぁ。

これでよくあるパターンなら、俺が軽くその記録を抜いて驚かすって所だけど、俺の魔力は大したことないってイリーにも言われてるからなぁ。

取り敢えず左右の取っ手を持ち、魔力をこめる。魔素は余り流れないな。これなら全力で流しても身体の負担はないだろう。

目をつぶり全力で魔力をかけた。

「んっ…」

チラリと片目を開いて目盛りを読む。

…6.5…6.6

ふぅ…


「どうだい?僕の記録を抜いてくれたかな?」

位置的に目盛りは見えてるはずだ。細かくは見えないにしろ、自分の記録に届いてないなんてわかるよだろう…。

「いや、全然ですよ。6.6です。」

「6.6!…6.6⁈…君、それ本気でやっているのかい?いやまぁ、普通のひとならそんなもんかな。まぁ精進したまえよ。一般人でも努力すれば少しは伸びるらしいからさ。ヒヒッ」

「はぁ、頑張ります。」

うん、嫌な人だぞこの人。胡散臭いというより、嫌な人だ。

まぁ、言ってもしょうがないんだから、商品を見させてもらおう。ガラス玉は言われた棚に山積みになっている。ガラス玉は安いので、一般の人も買って、自分で簡単な魔法をかけたりしてつかっているらしく、結構需要のある品らしい。

大きさも手頃な感じだ。

買うのは後にして次に魔法書をみてみよう。


魔法書は呪符が短冊のようにぶら下がったバラ売りと、本になっている纏め売りがあった。本のほうには各スペルの使い方も合わせて書いてある。説明とは別に呪印が刻まれているページがある。

ちなみに、値段は流石に高い。大体のやつが10金貨前後だ。簡易魔法をまとめた「生活に便利な魔法集」でも金貨1枚する。


とても買えない。

仕方ない、バラ売りの呪符を見よう。

あ…、なんかこれ。欲しい機械が高くて買えないから、自分で作ろうと秋葉原の部品店回ってる感じに近いな。まぁ、最近はほとんどネットで買ってたけど。


バラ売りの所には原理呪と発動呪が分かれて置いてある。発動呪が値段が高く、原理呪は安い。


発動呪サラマンダー

炎を吹き出す。必要マジカ8以上。金貨2枚。


ふう…これも手が出ない。

「ヒヒッ、落ち込むなよ。真面目に訓練すれば、いつかそれ位発動できるうになるさ。ヒヒッ」

ベルーナはマジカが足りなくてため息をついたと思ったらようだ。だが俺が届かないのは値段だ。

魔力は別に回路でどうとでもなる。

と、いうか魔力を、昇圧させるのは一般的な事ではないのだろうか。発振回路が珍しいみたいだし、ありえない話ではないが…。

試しに聞いてみるか。

「ベルーナさん。マジカを上げるような回路はないんでしょうか。」

「なんだって!」

俺の質問にベルーナは憮然とした態度をとる。

「君ね。そんな甘えた考えだからマジカが弱いんだ。まずは努力だ。努力なくして何をいってるんだい。確かにインダクト系の原理呪で、魔力をの変化を数倍の大きさにして伝達するものはあるらしい。だがそれも瞬間値を出せるにすぎないし、君の望むような夢物語はないよ。ヒヒッ。」

「そうですよねぇ〜」

そう言って、ぽりぽりと頭を書いて落ち込んで見せる。

もちろん、本気で落ち込んでるわけではない。

言い方はムカつくが、情報は重要な物だった。まず、チャージポンプのような昇圧回路はなさそうだ。もちろんベルーナが知らないだけの可能性もあるが、少なくとも一般的ではないのだろう。あとインダクト系の云々は恐らくトランスだろう。昇圧トランスやステップダウントランスもあるならかなり扱える電圧、もとい魔力に幅ができる。

そんな事を考えながら原理呪を見る。

こちらは銀貨1枚からある。何も書いていない白符も銀貨1枚だからほとんど符の値段という事だ。

抵抗、コンデンサとほとんど俺が持ってるものだな。と、持っていないのがあった。

銀貨2枚のノルトとコンピアートだ。

「これは?」

「ヒヒッ、そいつかい?そいつは少しマイナーな原理呪だ。中々複雑だが理解できるかな?ヒヒッ。

まずは四角形を、思いうかべな。上から下に向けて魔力をを、ながすんだ。そんで左からもマジカをて流し…」

そういって説明ベルーナは説明してくれた。が、分かりにくいっ。

一応ゲルトの説明によると…ノルト符は入力マジカが一定以上になったら出力をオフし、一定以下の時オンするものらしい。

コンピアートは入力が二つ、AとBがあり。Aのほうが大きければ出力オン、Bの方が大きければ出力オフするもの。どちらも罠系魔法を使うのに重宝するのだとか。


ん?まだ分かりにくい?

not回路とコンパレータ回路だ。


両方欲しいけど、お金が足りないので今作ってみたい回路に必要なnot回路のノルテ符を買う事にした。

「ヒヒッ、せいぜいがんばんな。」


…しかし、嫌な奴だったな。あそこまであからさまだと、あまり嫌悪感もない。むしろ、今までどうやって生きてきたのだろうと不思議に思える。

まぁ、いい。今は3時頃かな。この世界では太陽が上がってから沈むまでを6つに分けて、それぞれ一つ刻、二つ刻と呼んでいるようだが、俺はまだそれになれない。ちなみに、時刻は町の中心の教会が鐘でしらせてくれる。三回なったら三つ刻だ。

さて、広場に戻って露天をしてもいいが…

しかして、俺は早く回路の実験がしたかったので早々に宿に戻ったのだった。


残金 銀貨1枚 銅貨3枚















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