Common-Mead Rejection Retio
は、はわ〜はわわわ〜〜っ!
やってしまいました。
私、なんで「デートにつれてけっ」なんてっ?
ち、違うんです。リジットが強気で行けっていったのはこんな意味じゃ無いてって分かってるんです。
でもご主人様を前にしたらなんだか頭が真っ白になったゃって……。
そ、そしたら何故かあんな言葉が
ご主人様、ちょっと引いた顔で「あ、あぁ、別にいいけど……」って……。
引いてますっ! 完全に私引かれてますぅ〜。
で、でも、とりあえずご主人様を外に連れ出すことには成功しました。こ、ここからです。ここから何とか挽回しないとっ!
「で、ユリス?」
「ひゃ、ひゃいっ!」
と、隣を歩くご主人様からいきなり声を掛けられて、私の声が裏返ってしまいました。落ち着いつ……落ち着いて話すのです、
「えっと……何処か行きたい所とかあるのか?」
き、来ました。で、でーとぷらんという奴です。
その辺はぬかりありません。お化粧をしながら(されながら)リジットと、ジーナと綿密に打ち合わせ済みです。
今日は初めてのデート。時間ももう午後です。ここは欲張ってはいけません。あっさりデートで次につなげるのです!
まずは町でショッピング、その後海の見えるレストランで夕陽を眺めながらディナーなのです。
「ショッピングで夕飯を見たいです!!」
「いや、夕飯は食べようよ……」
な、何で夕飯を見るんですか、私は〜っ⁈
夕陽をみながら夕飯をたべるんでしょっ!
「は、はいっ!夕陽を食べましょう!」
「……それは何かの比喩なのか?」
夕陽が食べられる訳ないでしょ〜っ!
何を言ってるんですか、私はっ。
ご主人様、そう、ご主人様と夕飯を食べるんでしょうが〜っ!
「ご主人様を食べたいですっ!」
「え〜〜っ!」
何を口走ってるんですか私は〜〜っ!!
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「あの子……意外と積極的ね……。」
「いや〜、あれはテンパってあらぬ事を口走ってるだけだと思うよ……?」
店の前ですったもんだをしているウィルとユリスを扉の影から覗き見るリジットとジーナ。そんな2人にユーリッドは青筋をたてているが、もちろんそんなのは無視だ。
と、ウィルの視線がこちらを向き、慌てて隠れる2人。
「み、見つかったかしら?」
「さぁ、意外とししょーも鋭いからねえ。恋愛には鈍そうだけど。」
「いいからお前ら仕事しろっ!」
ユーリッドはいたくご立腹だ。
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リジットとジーナの顔が扉の影に引っ込むのを俺は確かに見た。
……あいつら、ユリスになにか吹き込んだな?
見ればユリスは両手で顔を覆って蹲って、プルプル震えている。
俺はさっきのユリスの発言を思い返す。
……。
ま、まぁ、言い間違えだろうが、聞きようによっては、えらく刺激的な発言をしてたからな。もちろん俺は、そんな言い間違えに一喜一憂するほど、子供じゃないから大丈夫だ。全然まったく何事もなかったように振る舞う、大人の余裕ってヤツを見せてやろうじゃないか。
「よし、ホテル行くかっ」
「ほてる…ってなんですか?」
純真な瞳でこちらを見上げるユリス。
俺はもう汚れちまったなぁ……。
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まぁ、そんなすったもんだはあったものの、取り敢えずは街を散歩することにした。
ちなみに、すったもんだはあったが吸ってもいないし、揉んでもいない。おかしな勘違いが発生しないよう、念の為註釈しておく。
とはいえ……、本当に綺麗になったもんだ。初めてあった頃からすれば別人のようだ。
と、俺の視線に気づいてユリスがニパッと笑う。
屈託のない笑顔だった。
本当に表情が出てきたな。
「本当に色んなお店がありますね、ご主人様!」
そう言いながらキョロキョロと辺りを見回すユリス。
田舎者丸出しな動きだが、それは俺も同じだ。
ここには食料や衣服といった生活必需品以外にも、おもちゃ屋や絵画を売ってる美術商などの店もある。なかには、海外の珍しい雑貨を扱っているような所もあるようだ。
「ユリスはなんか欲しいものとかあるのか?」
「私ですか……?」
ユリスがアゴに指を当てて考える。
「思いつきませんね。いつもご主人様から何でもいただいてますから。」
そう言ってコロコロと笑うユリスが、いつもの2割増し可愛く見える。……この化粧はジーナとリジットか……やるな、あいつら。
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一通り街を見て回りると、日も傾き街が茜色に染まる時間になってきた。そろそろ俺も腹の虫がなってきた。
「なんか食べて帰るか?」
「で、でな〜ですねっ!行きますっ、行きましょう!」
……ま、ユリスも乗り気みたいだし、何処かで飯を食べて帰るとするか。
そう思って周りを見回す。
めぼしい食い物屋は…と…。
「あの…海の方までいきませんか?」
「ん?海の方になんかいいお店でもあるのか?」
「そ、その……夕陽を……」
「夕陽?夕陽なら山側行かないと見えないだろ?」
「はっ……はわっ⁈」
ここの海は東側にある。夕陽をみたいなら、反対の西側に行かなくては見えない。まぁ、建物越しの夕陽ならみえるだろうけどなぁ。
「……この辺で食べましょう……」
「そ、そうか?」
な、なんかユリスの元気が無くなってしまった。
一体どうしたんだろう。
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入った店はチョット高級感のあるレストランを選びたかっが、基本的に大衆食堂的なものしかない。
高級なお店は中央区にいかないとないようだ。一度くらいは行ってみたいな。
席に着くと俺は鹿肉のゴブリン焼きを、ユリスはシーフードパスタを頼む、事にする。後は飲み物は…やはりエールかなぁ。
と、メニューに、目を走らせるとミードなる飲み物が書いてある。
……なんだろう、これ?
「ユリス、ミードってなんだか知ってるか?」
「えっと……すみません。分からないです。」
ふむ、ユリスも分からないなら素直に聞いてみる事にしよう。と、言うことで店員を捕まえて聞いてみると、小太りの店員はニヤリと笑って答えてくれた。
「そいつは旦那、まぁ、所謂蜂蜜で出来たジュースですぜ。甘くてご婦人方には大人気でさぁ。」
「甘いんですか⁈」
あ、ユリスの目がキラキラしてる。めっちゃ欲しそうだ。
「飲んでみるか?」
「い、良いんですか⁈」
「ああ、ま、折角のデート…だしな。」
そう言うとユリスが顔を赤くしながらも嬉しそうだ。
「というわけで、ミードを頼む。あとエールも一杯な。」
「ミードとエールですね、かしこまりました。ですが、旦那、飲ませすぎには注意ですぜ?」
そう言うと店員はニヤニヤしたまま、席を離れた。
……飲ませすぎにはって……甘いから太るってことか?
「はうぅ、蜂蜜のジュースなんて楽しみです。」
ユリスが目をキラキラさせながら両頬に手を当てる。まるで、支えていないと頬が落ちてしまうかのようだ。
「ユリスは甘いものが本当に好きだなぁ。」
俺が言うとユリスはニコニコと頷く。
「はいっ、大好きです。でも。それだけじゃありません。ご主人様と出会ってからは美味しい物ばかりです。」
……そっか。出会った時のあの栄養状態だもんな。本当に碌な物は食べられなかったのだろう。
と、ミードとエールが運ばれてきた。
ミードは色も蜂蜜を少し薄くしたような色だな。俺の所まで微かに甘い匂いが漂ってくる。
「コレがミードですかぁ。楽しみですっ!」
「よし、乾杯するかっ。」
そう言って俺たちはグラスを合わせる。もちろん、エールは冷却している。
グラスを合わせて冷えたエールを喉に流し込む。
っく〜っ、コレがたまらないのだ。
「あまぁーい……なんか、ポカポカするあじです。」
ユリスも蕩けそうな顔をしている。かなりお気に入りのようだな。
やがて料理が運ばれてきた。
うむ、酒が美味けりゃ飯も美味いや。
ゴブリン焼きとはなんぞやと思ったが、ようは包みやきだな。大きな葉っぱで包まれている。一緒にキノコやクルミなんかも一緒に入っている。キノコはともかくくるみは珍しいな。でも、肉に香ばしい香りが乗って良い感じだ。
ユリスのパスタは長細い所謂スパゲティーではなく、ペンネのような小さいコロコロしたものだった。それをクリームソースで和えている。それをユリスはスプーンですくって食べては味を噛み締めている。
「はぁ……幸せですぅ。……って、それじゃダメです!」
突然、ユリスが我に返ったように言う。
「ど、どうした、突然。」
「今日はご主人様の息抜きなんです。ご主人様に楽しんでいただかないとっ!」
ああ、今日の突然のデートはそう言う意味だったのか。
まぁ、確かに少し根を詰めてやっていたからな。少しみんなに心配を掛けてしまったかもしれない。
「ご主人様、今日は息抜き出来ましたか? やっぱり、私じゃなくてリジットやジーナの方が良かったですか?」
……うわ、面倒くさい質問だ……なんて、もちろん夢にも思わない俺は素直に答えてやる。
「いや、良い息抜きが出来たよ。ありがとう」
余計な事は言わず。感謝のみを伝える。これが大事だ。
俺がそう言うとユリスはニパッと笑った。
「良かったですぅ。……最近ご主人様、リジットにばっかり優しいから……」
そ、そうだったかな?
そんな事はないと思うけど……。
「ねぇ、ご主人様ぁ? 私をずーっと、奴隷にして下さいねっ。」
オイオイ……、イキナリ何を言ってるんだ。てか。なんかユリスの様子がおかしくないか?
耳まで真っ赤だけど、照れてるとかそんな感じじゃない。目は何処かで挑発的にこちらを見てる。……ってか、ユリスってこんなに大人っぽい表情できるのか⁉︎
「ねえ、ご主人様ぁ。わたしをず〜っとそばに置いてくださいますかぁ?」
……いや、これは大人っぽいというより……。
俺はユリスのミードに手を伸ばし、一口含む。
口に広がる甘さと、甘さの中にかくれた独特の香り……
……これ酒じゃねぇか!
あの店員、何がジュースだ。そら飲ませすぎには注意だよっ。
「ご主人様ぁ、私のジュースとっちゃ嫌ですぅ。」
手を伸ばしてミードを取り返そうとするユリスを俺は片手で抑える。
「だーめーだ、これ酒じゃないか。」
「えーっ。ご主人様意地悪ですぅ。」
ジタバタジタバタ。
これ、お店で騒ぐんじゃありません。
俺は残っていたミードを自分の胃袋に流し込む。と言っても、半分以上ユリスが飲んでしまっていたので、大した量はない。
「あーっ、わたしのミード……」
「やかましい。ほれ、後でりんごジュース頼んでやるから。」
と言った途端ユリスがニパッお笑う。
「りんごジュース。楽しみです。」
切り替えハヤッ!
……りんごジュースで釣れるって、小さな子供みたいだな……。
ま、この世界のりんごジュースは現世とちがってかなり高級なので、子供においそれと飲ませられる物ではないのだけどね。
た、タイトルが思いつかなくなってきました。
ちなみに今のところ一番好きなタイトルは
「お刺身のリアクタンス」
我ながら全く意味がわかりません。
それではココまでお読み下さりありがとうございました。
引き続き、お付き合いいただけましたら、嬉しいなぁ。