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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第五章 お店を出してみた!
44/66

イマジナリー ショート

俺は自分の工房に設定した部屋に入り、早速開発にとりかかる。

温度を一定に保つ。つまり、負帰還制御だな。

ある設定温度より温度が上がったら冷却、温度が下がったら加熱してやる。そんな機能を実現するのが負帰還制御だ。

その制御の主力となるのがoperational(オペレーショナル) Amplifier(アンプリファイヤ)、略してオペアンプだ。

現代のアナログ回路のメイン素子。アナログ回路を極めるとはオペアンプを極めることと言っても間違いではない(間違いです)。


-------久しぶりの電気の話 ここから------


オペアンプとは2入力1出力の増幅素子だ。素子の動作だけを言うならば、二つの入力信号の差を10万倍から100万倍にして出力する。そして、入力抵抗が高く(理想的には無限大)、出力抵抗が低い(理想的には0)。

…これだけを聞くと、「1Vの差があれば10万ボルト出るのか!ピカチュウか!」となりそうだが、もちろんそうじゃない。


出力の出せる範囲はあくまで電源電圧までだ。数マイクロボルトや数ナノボルトといった差を拾えるアンプといった方が正しい。それに、実際のオペアンプ回路では信号増幅回路に使う場合でもせいぜい100倍(40デシべル)増幅程度だ。では、なぜこんなにオペアンプがアナログ回路の基本素子として君臨するほど流行しているのか。それは(諸説あるだろうが)増幅率と周波数特性の設定を簡単にできる為だといえる。トランジスタを使ってアナログのローパスフィルタ回路を作ろうとすれば、相当の熟練した回路技術が必要になるが、オペアンプを使えば付属する部品として抵抗2個とコンデンサ1つでできてしまう。


-------久しぶりの電気の話 ここまで------


オペアンプの内部はトランジスタを使った作動増幅回路と、中間増幅回路、出力回路で構成されている。

基本はトランジスタ回路なのだ。トランジスタで一度作ってしまえば、魔法ならパッケージングで自由に扱う事が可能になる。

俺は教科書を見ながらオペアンプの再現に取り掛かった。


_________

「ふぅ……」


ご主人さまの工房から出てきたユリスは一息ついた。


「どう?ご主人様の様子は……。」


リジットが出てきたユリスに声をかける。もう3日もろくに部屋から出てきていないのだ。


「苦戦しているみたいです。今も『ユニティゲインで発振した~』とか『位相保障がとれない~』とか叫んでいます。」


「……そう、意味がまったく分からないけど、大変そうなのは伝わるわね……。」


「はい……」


最近はユリスの勉強も進み、抵抗やコンデンサ、ダイオード簡単な回路なら読めるようになってきたのだが、まだご主人様が作っている回路の意味はさっぱりわからない。


「でも、こんなに無理をしてるとご主人さま、倒れちゃいます。」


「そうねぇ、なんか気晴らしできればいいんだろうけど……。」


リジットは少し考えると、ポンと手をたたく。


「そうだ、ユリスあなたご主人様をデートに誘いなさいよ。」


「……え?」


いきなりの提案にユリスの表情が固まる?


「で、デートですか?」


「そうそう、男は女の子に手をつながれて歩けば、それだけで元気になるもの。ご主人様だって同じよ?」


「それは……でも、それならリジットやジーナさんが誘ったほうがいいと思います……。」


そういって、ユリスはうつむく。


「あらどうして?」


「だって……わたし、リジットやジーナみたいにきれいじゃないです。それに私はその……顔に……。」


顔を背けてしまうユリス。


「まったく……。あ、ジーナ、ちょうどいいところに。」


そこにたまたま上がってきたジーナにリジットはナイスタイミングとばかりに呼び止める。


「? なに?」


「実はね……。カクカクシカジカ……」


そう事情を説明するリジット。そして、二人して悪魔の顔になる。


「なるほどねぇ……やっちゃう?」


「ええ、やっちゃいましょう。」


「え…? え? な、なんですか」


リジットとジーナでユリスの両腕を抱えると、そのままジーナの部屋へと引きづりこまれる。


「この子はいつもシミナスの水しかつけないから…。ま、それでも十分ななんでしょうけど。」


「ふふ、この街にきてからいろいろお化粧品も増えたんだよねぇ。早速試してあげるね、ユリスちゃん!」


_________

30分後、そこにはリジットとジーナの共同作品が出来上がっていた。

その出来栄えに二人はうっとりと眺める。


「かなり……いい出来ね。」


ジーナはうんうんとうなずく。


「素体がいいからねぇ…。」


リジットも満足そうだ。化粧水を塗りファンデーションを塗りチークを刺しアイラインをいれ。

きっちり化粧はされているのだが、それを感じさせないナチュラルメイク。

一番男を落とすのに適したメイクだ。


「すごい……」


ユリスも自分の顔を鏡で見てびっくりする。


「で、でも……」


そういって、自らの火傷のあとを触る。

ウィルに会った当初に比べ、傷は格段に目立たなくなってはいるが、それでも消えることはない。

それは化粧をしても同じことだった。


「それは完全には消えないわよ。でもね、それはもうあなたの個性なんだと思うよ。あなたのかわいさを損なうものじゃないわ。」


ジーナがユリスに後ろから肩に手を置き、そう伝える。

さすがはジーナ、これは接客の際に見せてるジーナの顔だ。でも言っていることはリジットもその通りだと思う。


「そ、そうでしょうか……。」


まだ迷ってるユリスにリジットはダメ押しをする。


「だいたい、あなた以外いないのよ、ユリス。ジーナはブル一筋だし、私は……ねぇ?」


「え? デートぐらいなら別に……モガッ!」


余計事を言おうとするジーナの口をリジットが塞ぐ。


まぁ、ジーナはともかく、リジットは名実ともにラッセンのスパイなのだ。

そんな人間とデートしても落ち着きはしないだろう。


「で、でも、そんな……どうやって誘えば……。」


「そんなの、ご飯食ようでも、海が見たいでもなんでもいいじゃん。大丈夫だよ、今のユリスなら、どんな男だって一発OKだって。」


「その通り、ご主人様の手を掴んで、デートに連れてけと言えば大丈夫です。強気でいくのよ?」


それでもなかなか迷いが降りきれないユリス。

でも、ここまでしてもらって、何もしないわけにもいかなかった。


「わ、分かりました。私、ご主人さまをで、デートに誘ってみます!」


両手を握りしめて立ち上がるユリス。


「リジット、ジーナ、ありがとうございました。」


そういうと、ユリスは大股に部屋を出ていった。


「やる気だねぇ、ユリス。……でもリジット、あなた良かったの?」


「……言ったでしょう。私はそういう役はできないって」


「臆病なだけじゃなくって?」


「……あなた、若いくせに言いますね。」


「接客業は長いからね、それなりに見えるのよ」


「ジーナ、貴女、女友達少ないでしょう?」


「あなたは多そうね、リジット。」


そう言って2人は笑った。


----------

駄目だ…ちょっとした入力の変化をきっかけに発振してしまう。おそらく位相余裕がなさ過ぎるんだろう。

ここでも、オシロが無いことが悔やまれる。オシロさえあれば発信してる所を追えるのに…。

もちろん、オシロを作る事は俺の開発計画にもある。しかし、そのオシロを作るにも、このオペアンプは不可欠なのだ。


まったく、卵が先か、鶏が先か……だな。


と、俺が悩んでいるところにユリスが入ってきた。


「あぁ、ユリス。すまないがそこの三番のガラス玉をとって……」


……しかし、ユリスは動いてくれない。

あ、あれ?なんかユリスの鼻息が荒いな。

どうしたんだろう?


ユリスは大股に俺の前までくる。


「ご、ご主人様っ!」


「お、おう? どうした?」


鼻息だけではなく、頬も紅潮させている。

よっぽど興奮しているようだ。


「私をっ」


「私を?」


なんか心なし目力も強いぞ。

こんなユリスを見るのは初めてだ。


「デ、デーっ……デーっ!」


「……で、デーっ?」


………


「デートに連れてけっ!!」


「な……なんで命令形⁈」




オペアンプ、

本当はもう少し詳しく書こうかと思ったのですが、

反転増幅ひとつだけでもかなりな文章になりそうなので断念しました。

そのうちなぜなにで取り上げる……かも。


それではココまでお読み下さりありがとうございます!

引き続き、お付き合いいただければ、嬉しいなぁ。

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