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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第五章 お店を出してみた!
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剣と魔法とオームの法則

こうしてチヨルドでの俺たちの生活が始まった。

ユリスたちの掃除の甲斐もあり、見違えるほどきれいに片づけられた。

食器や家具を運び込み、店に並べる商品を在庫していく。

なんだかんだで、店を開店できるところまで来るのに半月近くかかってしまった。


「なんとか開店できるところまできたな。」


店舗内装を見回して、俺はしみじみ呟く。

商品はユーリッドの革製品とジーナの作った服。それに俺の作る魔法具だ。

と、いっても今のところひんやり服と冷蔵バック、あとはどこにでもある発火魔法を仕込んだガラス玉や。加熱魔法を仕込んだトルマリンの魔法具しかない。

魔道計算器やマッサージ玉は販売できないので、なにか新しいものを考えなくてはいけないな。


いよいよ開店を明日に控えた夜。食卓ににて


「ご主人さま、この新しいお店に名前をつけませんか?」


ユリスがそう提案してきた。

……名前かぁ。


「師匠の店なんですから、ウィルの魔法店でよいのでは?」

「えー、お兄ちゃん。それは安直だよ、センスないよ。」

「私やユリスがいるのですからマジカルメイドショップはいかがでしょう?」


……それは、かの国では別の意味で大人気になりそうなお店だな……。


「却下」

「……残念です……。」


リジットと、なぜかユリスも少ししょんぼりだ。

まぁ、そうだな……。せっかく俺がやるんだから、何か電気に関係した言葉をつけたいものだ。

そうなると……やはりこれかな。


「魔法具店 オームズ・ロウにしよう。」


俺はどや顔でみんなを見回す。


「ご主人さま……。」

「師匠……」


……ん? あれ? なんかみんな少し困った顔をしてるような……。


「ひんやり服だとか冷蔵バックの時も思ってたけどぉ……。ししょーのネーミングセンスは壊滅的ですっ。」


な、なんだとぅ!

……しかし、見回すと、みんなうんうんとうなずいている。


「わ、私はいい名前だと思いますよ?」


……ユリスのフォローが却って痛い今日このごろです。

だが、決めたのだ。誰がなんと言おうと決めたのだ!


「店の名前はオームズ・ロウ。 剣と魔法の世界において、電気の知識でみんなを助ける。魔法具店オームズ・ロウだ!」


勢いで言い切る俺。


……いい名前だと思うんだけどなぁ……。


------

オームズ・ロウは開店後暫くは順調な売り上げを誇った。

第3王女の肝入りという噂も手伝って、主力であったヒンヤリ服や冷蔵バックは飛ぶように売れたのだ。

だが、半月もすると目に見えて売り上げが落ちてきた。まさか市場飽和が起こるほど売り上げたわけでもないはず。


俺たちはテーブルを囲って、いきなりの経営危機に頭を抱えるのだった。


「売り上げは開店初週の1/4か……」


俺は売り上げ帳簿を見て唸る。


「なにかトラブルや、客からのクレームは?」

「えーっ。私ちゃんとやってるもん。そんなのあるわけないじゃんっ」


ジーナが憤慨したように言う。だが、たしかに、接客をしている時のこいつは別人だ。決して客を不快にさせるような事はないだろう。

ユーリッドに目を向けるが彼も首を横に振る。


「いえ、そんな大した話はありません。クレームというより要望みたいなのはありましたが……。」


実際に接客を行っているユーリッドが言う。


「要望? どんなだ?」

「冷蔵鞄の設定温度が低すぎて素材が凍ってしまったとか、ヒンヤリ服は設定限界温度付近だと冷却機能が頻繁にオンオフして落ち着かないだとか。」


なるほど、たしかにリミット温度に対して単純なオンオフ制御をしているだけだからな。そう言う動きをする事もあるだろう。


「……大切な意見だが、売り上げ激減にはつながらなさそうだな。」

「はい。これらをおっしゃったお客様も、決して怒っているわけではなく、もっとこうだったら使いやすいのに……程度のものでした。基本的には皆さん満足して使って頂いてると思います。」


ん〜〜……。そもそもあんまりウケなかったと言う事なのかな。


「その事なのですが、ご主人様、コレを……」


そう言ってリジットが一着の服を差し出した。


「これは?」

「大通りに面した服屋で最近売り出した服です。」


それは簡易なシャツだった。しかし、服にガラス玉が縫い合わされている。そこに魔力を通すと……


「こ、これは……」


魔力を通すと服の内側の温度がさがり、逆に外側の温度があがる。

うちのヒンヤリ服と同じだ。しかし、こんな服はうちには置いていない。


「……パクられたか……」


俺が言うとリジットもうなずく。


「はい、それも一軒ではありません。街のあちらこちらで販売しています。」


……俺は腕を組み、頭を巡らせる。

考えてみればヒンヤリ服も冷蔵バックも魔法回路は単純だ。マッサージ玉の発振回路や、魔道計算器のデジタル演算回路とはちがい、ペルチェを使う事にさえ気づけば誰だって作れるだろう。


「そんな。ご主人様の商品を真似するなんて酷いです!」

「いや…ユリス。それは違う。むしろこれは想定すべき事態だった。あんな簡単な回路、真似されて当然だし、真似してこないなら寧ろ怠慢だ。」

「でも……」

「技術は模倣されて進化していくものだからな。とはいえ、あのカバンを見て、この短い時間で商品化までこぎつけるとはな……やるじゃないか。」


何故だろう。少し嬉しくなる。

この世界にも技術者はいるのだな。

この世界に来て以来、回路技術の低さは若干辟易していた。

使う素子は抵抗とダイオードくらい。トランジスタなんかはゴクゴク限られた用途でしか使われていなかった。

おそらくは、魔法は自分自身が電源になり、流す魔力も自由に制御できるため、素子を使った魔力制御は流行らなかったのだろう。

だが、今回の件の素早い動きを見ればわかる。このヒンヤリ服を模倣した連中は、新しい魔法素子の使い方を見せたら飛びついてくるタイプに違いない。


「師匠、どうしたんですか?」

「いや……なんでもない。……よし、この冷蔵バックとヒンヤリ服を改造するぞ。」

「改造……ですか?」

「あぁ、こいつが簡単には模倣出来ないものを作ってやる。ユーリッド達は接客しながら客の要望をできる限り拾ってくれ。」

「分かりました。」

「新しい魔法を作るからな。ユリスはちょっと手伝ってくれ。」

「分かりましたっ」


そう言ってユリスは目をキラキラと輝かせる。


そんなユリスを見ながら、頭の中で俺は簡単に構想を纏める。

追加する機能は温調機能。つまり、設定した温度に対象の温度を保つ機能だ。

ユーリッドの言っていた客の要望を取り入れる。たしかに今のヒンヤリ服にしろ冷蔵バックにしろ設定した温度になってら冷却を止めるという制御しかない。これだと、設定した温度を中心に温度が上がったり下がったりを繰り返す。温度の変化というのは結構身体に負担が掛かるものだ。なので、出来るだけ一定の温度で維持するようにしてやろう。

簡単な機能の追加だ。だが、原理呪による魔力制御をないがしろにしてきた奴らには、中々難しい問題になるはずだ。

ん〜、なんだか、久々にワクワクしてきたぞ。

まずは『あの』素子の開発からだな。


ゴールデンウィークですね。

自分は今年はなんとか9連休をもぎ取りました。

まぁ、おかげで休み前はかなり無茶苦茶な進行でしたが……。

しかも、休みが明けてもデスマーチは見えているのですが……。

あ〜〜……

……五月病は新入社員だけの病気ジャナインダヨ?


なんて、落ち込んでも仕方ありませんね。

休みを満喫する事にいたしましょう。


さてさて、今回も最後までお読み下さり誠にありがとうございます。

引き続きお付き合いいただけたら、嬉しいなぁ。


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