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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第四章 街を追い出された!
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なぜなにユリスちゃん3

ユリス「なぜなにユリスちゃん!」


ウィル「おぉ、またか……」


ユリス「またとは何ですか。だってご主人様、前回話を途中でやめちゃったじゃないですか。」


ウィル「そういえば……そうだったか?」


ユリス「そうです。第3回なぜなにゆりすちゃん。電気設計の仕事って? 後編! ……です。」


ウィル「電気設計の仕事についてかぁ……。」


ユリス「前回はアウトプットDR(デザインレビュー)についてで終わってます。」


ウィル「そうか〜。いや、アウトプットしでは稀に仕様変更が起こる事があってだな。」


ユリス「そこは暗黒面におちるからいいですっ。次に行きましょう。」


ウィル「次というと……PCB(プリント基盤)のアートワーク設計かな。」


ユリス「アートワーク?」


ウィル「そう。回路設計ではまず、部品と部品の電気的な繋がりを記載していくんだ。これはイメージする所謂回路図を作っていく。でも、それだけじゃ基盤は出来ない。どんな大きさのボードで、どこに部品を配置するか。電気の接続にあたる銅のラインをどのように引き廻すか。そう言うことを設計するのがアートワーク設計だ。」


ユリス「基盤ていうのかイメージ出来ないです。」


ウィル「……ま、この世界にはないしな。と、とにかく電気の部品が乗った緑の板だ。魔法具と思ってもらってもいい。」


ユリス「魔法具ですかっ。なるほど〜」


ウィル「で、作業なのだが、アートワークは回路を書くのとは別のCADを使うんだ。なので、回路CADから部品同士の繋がりを示したデータ『ネットリスト』を出力する。基本ネットリストはテキストデータなので、メモ帳なんかで確認出来るんだ。そこで、ネットリストデータをメモ帳などで開いて紙に出力。回路図と見比べながら思った通りに繋がっているか、一本一本確認して行く。これぞ電気設計名物『ネットリストチェック』じゃっ!」


ユリス「な、なんかテンション高いですね。」


ウィル「ま、電気設計五台苦行の一つだからな。デカイ基盤になると3日くらいはリストと回路図を突き合わせてひたすらチェック作業だ。これだけCADが進んだ世の中でも、これだけは自動化出来ない。眠いんだ、コレが……。」


ユリス「よくはわかりませんが、仕事中は寝ちゃダメです。」


ウィル「……はい、ゴメンなさい。……コホンッ。ま、まぁこのチェックが終わったらアートワーク用CADにデータをネットリストデータと必要な部品データを入れてアートワーク設計を行う。これは、ウチの会社では、小さい基盤は自分でやる事もあるけど、大きい物は外部に委託して設計してもらっていたな。」


ユリス「これで設計は終わりですか?」


ウィル「そうだな。ココまできたら試作用の部品発注だ。ま、実際には設計途中でも、確定してる部品や納期がかかるものは手配しちゃうけどな。あと、FPGAやPLDがある場合はこの部品が入ってくるまでの間にプログラムを作っておくかな。」


ユリス「おお、この間出てきたFPGAですね。」


ウィル「あぁ、正直FPGAまともにら使うなら、それだけの専門部隊を作って欲しいくらいなのだけど、うちの会社は電気設計が兼任だったな。」


ユリス「でも、これで後は入ってきた物を組み立てて終わりですね。」


ウィル「いやいや、何を言っているんだ。ココからが本番だよ。入ってきたものを組み立てたら作動チェックだ。実際には全部纏めては動かさずではなく、機能毎に動かしていくけどな。んで、この試作に電気を入れる瞬間がこわくてなぁ。」


ユリス「怖い?」


ウィル「そう。まず神様に日頃の行いを懺悔する。それから祈るような気持ちで電源を入れるんだ。そして、目と耳と鼻で異常が無いかを確認、少しでも違和感があればすぐに電源をおとす。」


ユリス「な、なんか凄い緊張感ですね。」


ウィル「ま、ここで変なミスがあると、発煙だのブレーカーが落ちるだののトラブルが起こるからな。そこで、無事通電出来たら一個一個機能を確認していくんだ。」


ユリス「なるほど……機能の確認ができたら終わりですよね?」


ウィル「んなわけないだろ。関係者みんなでデバックをしてほぼ最終形ができたら(……って、たいてい試作開始からここまでがデスロードなのだが’……)各種電気試験を行う。」


ユリス「電気試験?」


ウィル「商品を世の中に出すには守らなきゃ行けない法律や規則があさたくさんあるんだ。国内なら電気安全法なんかだな。海外に出すならUL規格やCEマーキングに準拠している事も重要だ。他にも最近はWEEEだのRohsだの色々ある。それらに適合しているか試験して、適合して無ければまた修正だ。」


ユリス「なんか大変そうです……」


ウィル「はっきりいって、大変だぞ。この試験をするための環境試験室ってのが会社にはあるんだが、そこに入って仕事をすることを『ちょっと篭ってくる』と表現していた。これも電気設計五台苦行の一つだな。」


ユリス「苦行だらけですねぇ」


ウィル「これが終わったら、生産ライン向けのデータや資料さくせいだ。組み立て手順書や、調整手順書を書いていく。」


ユリス「いよいよ終わりですか?」


ウィル「まぁそうだな。生産部隊に資料を渡したら表向きは終了かな。」


ユリス「表向き?」


ウィル「実際には生産部隊に資料を渡した後も仕事は続く。最初のロットはトラブルが何かと起こるからな、そう言うのもフォローしなきゃいけないし、改善提案された物を、実際の設計に反映もしなきゃならない。中々、スッキリとは終われないものさ。」


ユリス「中々果てし無い仕事なんですね〜。」


ウィル「まぁ、そうだな。だけど、実際には自分が設計した装置が思った通りに動いたとかなんて感動だぞ。初めてパソコンからのコマンドでモータが回った時なんて感動すら覚える。……ま、他の部署の人には中々理解されないけどね……。」


ユリス「外からは分かりにくい仕事なんですね。」


ウィル「ま、うちの会社にも電気って聞いただけで『分からないっ」ってアレルギー反応持つ人もいるからな。でも、装置の全体に関わる仕事だし、面白い仕事だと思うよ。シンドイ所はあるけど、それはどの仕事も同じだしな。」


ユリス「はい、なんとなく電気設計って仕事が分かったような気がしないでもないです。ありがとうございました。」


ウィル「おう、また何でも聞いてくれ。」


ユリス「……じゃ、今までで一番辛かった仕様変更は?」


ウィル「〜くぁwせdrftgyふじこlp!!!」


ユリス「それではみなさん、また次回『なぜなにユリスちゃん』で、お会いしましょ〜。」

因みに現在作者は異動になりまして。電気設計の仕事はしておりません。

懺悔と共に告白いたします。


ここまでお読み下さりありがとうございます!

引き続きお付き合い頂けたら、嬉しいなぁ。

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