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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第四章 街を追い出された!
33/66

ショットノイズを入れないでっ!

ロロ達を撃退して2時間。

目的のダッツ村長の村が見えてきた。

「小さな村ですねぇ。」

……ユリスそう言う事は思っても村長の前で言わない。

後でお説教だな。

まぁでも、ユリスの言う通りだ。周りは一面畑になっており、民間が真ん中に集まるように立っている。中心には井戸があり、小さいながらも教会が建っていた。


馬車は教会の脇を進むと少し高い位置にある家の前で止まった。

「ココが私の家です。今晩はココにお泊まり頂き。明日は朝から封印の方に向かって頂きます。」

よかった、このまま夜を徹して封印作業になるのかと思ってた。


村長の家では簡単な夕飯が振舞われた。ライ麦パンと野菜のスープだ。そして、その後あてがわれた部屋にて。

「嫌ですっ。私も一緒に行きますっ!」

「駄目だ。リジットもいいな?」

「ですが……。」

「明日は時間はかからないから世話はいらない。それにこれは俺の仕事だ。主人の仕事に口は出さないんだろう?」

「……かしこまりました。」

なんとかリジットは説得出来たな。あとはユリスか……。

「う〜〜っ」

「大丈夫だよ。ブルの腕は見たろ?」

「でもぉ……。」

「頼むよユリス、俺に命令させないでくれ。」

そう、いざとなれば命令にユリスは逆らえない。おれが命令として言った言葉に逆らうとユリスの奴隷の首輪が締まるのだ。

「……わかり…ました……。でも、ちゃんと帰ってきて下さいねっ!」

「あぁ、約束するよ。」

ふう。どうにか説得完了だ。

まぁ、凍らせればいいだけならペルチェ魔法をかければ可能だろう。と言うのが俺の目算だ。宝珠の復活は無理でも二、三日ペルチェ魔法をかけ続けるような魔道具を作るのは問題ない。そしたら騎士団とやらもやってくるだろう。


-----------

ウィル達の泊まる村から少し離れた所。

野営をする一段の影があった。昼間ウィル達を襲ったロウエル・ローゼリアの一味だ。

「まったく…あいつ女の顔をなんだと思ってるんだ。」

ローゼリアが頭のコブをなでる。

「姉御ぉどうしますか?流石にブル相手は分が悪いですよ?」

部下Aことベンスが、焚き火の火を調整しながら言う。

「そうっス。かないっこないッス」

部下Bことトーキーも同意する。

「煩いねっ!あんな土下座までさせられて黙ってられるかっ!」

「まぁ、あの魔法使いの魔法凄かったですからねぇ。あれ見たら仕方がないでしょ。」

「そうッスよ。ビビったッス」

「だが、あいつはその後ヘロヘロだったじゃないか。どうやったかは知らないがあれは1発限りの脅しだったってことだ。その証拠に追いかけた時一目散に逃げたろ?ハッタリじゃないなら逃げる必要なんてないんだ。」

「そりゃそうですが……。」

パチパチと焚き火が弾ける。

炙っていた兎の肉から肉汁が垂れてきた。このウサギは先ほどトーキーが狩ってきたものだ。

「そういや、あいつらは一体なんでユンネ村なんかに?あそこは別にこれと言った産物もないはずだが……。」

「あれじゃないですか?噂ですがこの近くに封印してた魔物、あれの封印が解けそうだって聞きましたぜ。」

「なるほど、再封印しようってのか……。いいじゃないか、チャンスだよ。」

「どういう事っすか?」

「だからね、あいつらが封印に成功してホッとした所を襲えばいいのさ。」

「封印に失敗したら?」

「そんときゃ魔物に食い殺されるあいつらを高みの見物さ。」

「さっすが姉御ッス。完璧な作戦ッス。悪のカリスマッス」

「そんなに上手くいくかねぇ……」


----------

翌朝、俺たちは日の出と共に出発した。

目的の封印は村からさらに北に2時間程北上した先にあった。洞窟というので小さい入り口を想像していたのだが、入り口だけでも高さ10メートルくらいある巨大なものだった。

村長の案内で中に入っていく、と、入り口の床の一部が木板になっている事に気付く。

「村長さん。そこの床って……」

「へぇ、踏まねえようにして下さい。元々は魔物を落とす落とし穴だったそうです。一応木の板で塞いでますが何分古いもので、所々腐ってるんですじゃ。」

おおう、それは怖い。

って事は、ここに落ちたら魔物の所に一直線ってわけか。

確かに見た目はもうボロボロだ。

「その魔物はどのくらい封印されてるんだ?」

「へぇ、なんでも100年前とか。私の祖父が子供の頃に封印したのを見ていたそうですじゃ。」

100年か…まぁ、それ程古いって感じでもないな。封印て言うとなんか何千年とかってイメージだが。

そんな話をしながら洞窟を進む。洞窟は螺旋を描くように降っていた。道幅も割と一定で歩きやすい、これは恐らく自然に出来た物ではないだろう。あるいは100年前にその魔物を捉える為に当時の人が掘ったのかもしれないな。


-----

「姉御。あいつら入って行きましたね。」

「ヨシヨシ。そしたらその魔物ってのを拝んでやろうじゃないのさ。」

「よっしゃ!追いかけるッス!」

飛び出そうとするトーキーをローゼリアが止める。

「待ちなっ。洞窟ってのは音が響くんだ。今行ったら見つかっちまうよ。もう少し時間を置いてから追いかけるんだ。」


……10分経過……


「そろそろイイっすかね?」

トーキーが、ソワソワと言う。短気な性格ゆえ、待つという事が苦手なのだ。

そして、それはローゼリアも同じだった。

「そうだね、十分だろ。行くよっ」

「大丈夫かなぁ……。」

そうして、3人は隠れていた草むらから洞窟に駆け込んだ。


------

15分程進むとウィスプの照らす先に鉄格子が見えてきた。

かなり大きい頑丈な鉄格子だ。おそらく魔物を閉じ込めることを考えてのことなのだろう。

鉄格子の端には人間が入れる用の小さな格子戸があった。ダッツ村長が懐から古めかしい鍵束を取り出して扉の鍵を開ける。錆びた金属音が洞窟内に響く。なかなかの迫力だ。

格子戸をくぐるとそこは大きなホールのようになっていた。俺たちが出てきた場所はホールの壁にあるバルコニーのような場所だ。そこから壁沿いに下り階段がそこまで続いている。高さは一番下から上までで5mほどだろうか。広さで言えばサッカーぐらいはできそうな大きさがある。

「こりゃすげぇな……。」

ブルも感嘆の声を上げる。

そして、そこの中心には巨大な氷の塊があった。

あれが魔物ってやつか…。


近づき、氷をウィスプで照らす。

「う……。」

思わず声が漏れた。

それは獅子の顔と山羊と顔、そして蛇の尾をもっていた。しかし、獅子といっても動物園にいるライオンのようなやつではない。もっと明らかに邪悪で破壊衝動に満ちた顔をしている。

全長で5m位あるのではないか。あきらかに普通のライオンよりも二回りはでかい。

「こりゃキマイラじゃねぇか。なんでこんなところに……。」

「戦ったことあるのか?」

「まぁ一度だけ討伐隊に入ったことがある。ってか、これを凍らしただけで放置するたぁ騎士団の怠慢だな。」

なるほど、という事は倒せないほどのモンスターというわけではないのか。まぁ、今回の件で騎士団も動いてくれるだろう。それまでは封印は維持しなくてはいけない。


村長の言う通り、氷の表面は溶け出しているのも見て取れた。これが封印が解けかけているということなのだろう。少し離れたところに宝珠と思しき球がおいてある。しかし、それはよく見ると亀裂が入っていた。おそらくこれが封印の解けた原因だ。長年の使用で限界がきたのだろうか。魔法の宝珠も使い続けると限界が来るんだな…、これは新たな知見を得られたぞ。


「さて、お手並み拝見だな……。」

「よろしくお願いしますじゃ……。」

二人から熱い視線が注がれなんか緊張するな。

俺は用意しておいたアメジストを手に取り、力場を展開する。


ピシッ


……今なんか音しなかった?

俺は見上げる。


「ぁ……」

……人の声?


「なんだ?なんの音だ?」

「はて……」


「あーーーーーっ!」


見上げると天井の穴から音は響いてくる。

そして、穴から人影が飛び出し……


ガァン!!!!


封印の氷に直撃した。

「いったーいっ!!なんなのよぉ……」


ろ…ロウエル・ローゼリア……。なぜここに⁉


上から降ってきたのはあの「みなごろしすたー」ロウエル・ローゼリアだった。

「ロロ! お、お前なにやって……」

「え?ブル!?ウソッ」

いや、ウソっとか言いたいのは俺のほうだ。

一体なにが……。


ビシィッ


何かが裂けるような不吉な音が響いた。

…みると氷に立て一文字に亀裂が入る。

そこからピシピシと亀裂が広がる……。


「……今から魔法掛けて間に合うと思うか?」

「何事も挑戦することに価値があるんだぜ?」

「あ、そういうのいいですから……。」

俺とブルがじりじりと後ずさる。

ロロは俺らと氷の間できょろきょろしてる。そして、割れかけている氷の中身を見て事態を把握したようだ。

「逃げろ!」

言うや否や走りだす俺たち。ロロもついてくる。

村長は……あれ?村長がいない…?


ガチャンッ!


という音が聞こえてきた。見れば入口の格子戸の向こうに村長がいる。

…って、ガチャンってどういう事だ⁈


「村長てめぇ!!」

ブルが怒りの声を上げる。

そして、格子戸に飛びつくがいくら揺らしても開かない。

「す、すまないのじゃっ。す、すぐに騎士団を連れて戻ってくるから、それまで持ちこたえて欲しいのじゃっ!」

「俺たちに餌になれってぇのかよっ!!」

「だ、大丈夫、多分封印はもう少しは持つはず…。」

「適当なこと言ってんじゃねぇ!!」

「なにっ?なんで私たち出られないの⁉ ねぇ⁉」

めいめい喚く俺たちからジリジリ離れるダッツ村長。あ、これあかんやつだ…。

「すまないのじゃぁ!!」

村長はそう叫ぶと駆け出していってしまった。

その声は洞窟に響きわたり、そして吸い込まれるように消えた。


「はぁ……。参ったねこりゃ……。」

ブルが自分の頭をペチペチたたく。

「ねぇ…これってどういう状況なわけ?」

ロロはまだ状況を把握しきれていないらしい。

「まぁ簡単に言うとだな。キマイラを再封印しようとしたら、お前が落ちてきて全ておじゃんになった。まもなくキマイラは復活して、俺たちぁ仲良く腹の中だ。」

「な、なによそれ。まるで私が悪いみたいじゃないのっ!」

「そう聞こえなかったんなら、そんな耳いらねぇから取っちまえ!!」

ブルとロロが言い合っている。

だが実際にはロロが降ってくる前に俺は氷の割れるような音を聞いた。

どちらにしろ手遅れだったのかもしれないけどな。


「なぁ。」


言い合う二人に俺は話かけた。

「ブルはキマイラ倒したことあるんだろ?」

「まぁ……。だがあれは専門家が10人単位でチーム作ったんだぞ。それだって犠牲が出たんだ。」

「でも、やるしかないんだろ?100年も封印されてたんだ。弱ってるんじゃないかな?」

「……希望的観測だな。だがま…」

ブルが頭をツルリと撫でてニヤリと笑った。

「やるしかねぇってのは同感だ。」

「え……ちょっと本気!?あんな化け物とやるの?」

と、その時

「姉御ーーーっ!」

と奥から声が響いてきた。

「ベンスッ!トーキーッ!」

昨日馬車を襲った時の二人の男だった。ベンスとトーキーっていうのか。

「姉御、ご無事ですかっ!」

「ダイエット途中で投げ出すからこんな目に合うんッスよ!」

「……トーキー、あとでシバク」

「なんでっすかー!!」

「そんなことよりそっちから鍵は開けられないかい?」

言われてベンスと言われていた方が鍵開けを試みる。

しかし…。

「……駄目ですね。かなり頑丈な鍵がかかってます。」

「……っく」

ロロが落ち込む。だが、二人が外にいるってのはありがたい。

「なぁ、お前ら」

「な、なんッスか?」

「姉御を助けたいか?」

「と、当然だ。」

二人ともすごい勢いでうなずく。

「だったらよく聞け。ここに来るまでにすれ違った爺さんがいただろ?」

「い、いたッス」

「なんかすげー勢いで走っていったよな。」

「そしたらその爺さんを追いかけて、鍵を奪うんだ。」

「鍵ッスか!?」

「ああ、ここのカギだ。古めかしい鍵束についてた。」

「わ、分かったッス。」

「わかった。あのジジイをとっ捕まえればいいんだなっ!」

「ああ、頼む。!」

それだけ言うとトーキーとベンスが走り出した。

「……間に合うかねぇ?」

ブルが煙草をふかしながら言った。

時間差はあるが、走っているのは爺さんだ。あの2人、体力は有りそうだし、追いつくとは思うが……。


ビシッ…ガラッ


氷はどんどん崩れていっている音が聞こえる。

「難しいかも…な。ところで俺にも煙草くれない?」

「ん? お前も吸うのか?」

そういいながら、ブルは俺に煙草を渡してくれた。

「いや、滅多に吸わない。気分だよ、気分」

俺は煙草を受け取り火をつける。

久しぶりに肺に落とした煙が、暴れまわってむせる。

「ゲホゲホっ…きっついな、これ。」

「おう、俺のお気に入りだからなっ。」

「……あんたら、こんな事態だってのに気楽なもんね。」

ロロがあきれ顔だ。

ふぅ…。

俺は煙を吐き出し気持ちを整える。

完全に崩れるのに2〜3分というところか。

「やるしか無いんじゃないか?」

「ま、そうみたいだな。腹ぁくくるかっ。おら、ロロも手伝えっ!」

「え〜〜っ!」



そんな話をしなごらバルコニーから階段を下り、再び氷塊の前へ。

封印の氷はピシピシと音をたて崩れていく。

もう、逃げ場はない。奥歯を噛み締めてなんとか胸を張って立つ。こういう時に下を向いてはいけないのだ。

「しかし、意外と骨があるじゃねぇか。はじめ会ったときは女連れたいけ好かない野郎と思ったんだがな。」


ガララッ!

大きい塊が崩れ落ちる。


「いや、実は超帰りたいっ!」

イヤ、マジでマジで。超帰りたいって。

そんな俺の言葉にブルが笑う。

「正直で結構!俺もだっ!」

「私もよっ!!」

ロロが切れ気味に叫んだ。

残った氷の全面にヒビが入った。


とうとう、封印の氷がはじけ飛ぶ!


崩れ落ちる氷

その中から白い煙をまとって獅子の顔が現れる。続いて山羊と頭、蛇の尾。

100年封印された怒りと、100年の空腹を抱えたソレは、俺たちの姿をその6つの目にとらえた。




禁煙禁煙が推進される世の中です。会社でも喫煙スペースはどんどん減らされています。

私も煙草はほとんど吸わないのですが、でも煙草のもつ雰囲気って好きなんですよね。

煙草文化が消えてしまったらちょっと寂しいなあと思う今日この頃です。


さて、ココまでお読み下さりありがとうございます。

感想、評価なとお気軽に入れて頂けると、作者とても喜びます。

それでは引き続きお付き合い頂けると、嬉しいなぁ。

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