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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第四章 街を追い出された!
30/66

ローゼリア怒りの逆起電力

みなごろしすたー

なる女が俺たちの前に立ちはだかる。


どうやら、コレが野党のリーダーらしい。


……なんか頭悪い奴らだな……


「さぁ、おとなしくするんだな。取り敢えず命まではとらないでやる。」

サイズをこちらにむけて、女ローゼリアが宣言する。


あれ?みなごろしじゃないの?


と、聞きたい所だが、いらない刺激を与える事もないだろう。

しかし、このままでは逃げる事も出来ないし、戦う訳にもいかない。投降したところで、奴の言うように殺されない保証なんてない。


……やれやれ、仕方ないか……。


俺は一人で馬車を降りた。

「ご主人様っ!」

「大丈夫だ。心配するな。」

俺はユリスにそう声をかけて、ローゼリアに向き合う。


「ロウエル・ローゼリアとやら……、貴様、俺を魔導師ウィル・ハーモニクスと知っての襲撃か?」

出来るだけドスを効かせてみる。出来るだけ低く、そして声を響かせるように。…我ながら迫力が……。

「な、なに?」

しかし、予想と違うこちらの反応にローゼリアが少し怯んでくれた。

よしよし、そのままビビってくれよ…。

「俺も舐められたものだ……」

俺は近くの岩に近づくと徐ろに手を添えた。

そして、全力全開でインパクトブレーカーを並列発動する。

人の大きさも程ある岩が木っ端微塵に粉砕される。

「な……っ⁉︎」

盗賊どもが明らかに怯んだ。

「ふん、調子はいいようだ。さて、こちらの準備はすんだぞ?始めるか?」

手をグニグニさせて、雰囲気を出す。いや、ちゃんと出てるかどうかは分からないが。因みに、俺の魔力はこれでほぼ空だ。


と、


「スンマセンでしたーっ!」


はやっ‼︎


それはローゼリアの見事な土下座だった。

「そんな偉大な魔導師様とはつゆしらず、大変失礼いたしましたぁ!!お前ら何やってんだい。頭が高いぞっ!」

そういうと、盗賊が全員では一斉に


「「スンマセンでしたーっ!」」


おおう…これほどまで引っかかるとは。

「ふん…まぁいい。じゃぁ。我々は行っていいんだな?」

「も、もちろんでございます。ほら、お前達、網を退けるんだよっ。」

ローゼリアがそう言うと、あっという間に行く道を塞いでいた網が退けられる。

「それでは行くとしよう。お前達も、襲う相手は選ぶことだ。」

「へへ〜っ!」

最初の勢いはどこへかな。ローゼリアは平身低頭している。


……どうやら切り抜けられたらしい。俺の演技も中々いけるじゃないか。


と、馬車にむけて一歩踏みだした瞬間。


あ、あれ?

足に力が…


なんとか転ばずにすんだが、ヒョコヒョコとまるで生まれたての子鹿のような足どりだ。

イカン…緊張と魔力の使いすぎで……


呆然とするみんな。

その間に一歩でも歩を進める俺。


「は…は…」

や、やべっ

ローゼリアがプルプル震えてる。

「ハッタリだ〜っ!!」

なんとか馬車にたどり着く。

「何やってるんですかぁ!!」

ユリスとリジットに馬車に引きずり込まれるのと同時に馬車が走り出す。

もう網はない。

一度走り出してしまえば、徒歩の奴らでは追いつけない。

ユリスとリジットが後ろにむけて弓を放つ。

「絶対逃すなっ!あの野郎人をコケにしやがって〜っ!」

なんて声が聞こえてくる。

はは、そりゃ怒るよなぁ。


なんか、俺っていつもハッタリで戦闘を切り抜けてるよな…。


-----


なんとか振り切った俺たちは馬車の中で漸く安堵のため息をつけた。

「こ、怖かったよ、お兄ちゃんー」

ジーナがユーリッドにしがみついている。まあ、いきなりあんな風に襲われたらそうだよな。

「ご主人様、相変わらず無茶しすぎですぅ。」

ユリスが少し御立腹だ。

「はは、他に手が思いつかないんだよ。」

「で、でも凄い魔法でした。あれなら、マトモにやっても勝てたのでは?」

ユーリッドはインパクトブレーカーに感動したみたいだ。

もちろん威力を落とせば何発かは出せるが、あれは近接でしか使えない。あんな大人数に囲まれて矢を打たれたら手も足も出なくなる。

「ま、ちょっと難しいな。俺一人じゃ……」

「あら、わたくしも久しぶりに戦えるとワクワクしていたのですが…」

リジットが、少し物足りなさそうだ。

「そういえばリジット…戦えるの?」

「メイドですから。」

「いや、メイドって戦わないだろ、普通。」

「まぁ、並みのハウスメイドはそうですね。ですがわたくしは伝説のメイド長を目指す身。当然コンバットメイドのスキルも習得しております。」

「そ、そう…すごいね」

コンバットメイドってなんだよ。冒険者は職業分けしてないのに、なんでメイドはそんなに分かれてるんだよっ。

…と、ツッコミたいが、不毛なのでやめておこう。

まぉ、リジットの実力はあとで確認しておいたほうがよさそうだ。ひょっとしたら、貴重な戦力かもしれん。



盗賊から逃げ出して一晩が経つと、フーチの街が見えてきた。イバリークに比べると小さな街だが、一応、宿場町として栄えている街らしい。

周りに城壁はないが、堀と柵が巡らされていて外敵の浸入を防いでいた。

イバリークと違い、検問は簡単なもだった。まぁ。戦略的重要地でもないところならばこんなものかもしれない。申し訳程度の身分確認と荷物検査だけだった。


「のどかな街だな。」

「ええ、ここは王都チヨルドと交易都市イバリークの中継街なんです。近隣の村からは採れた野菜や肉をここに持ち込んで、旅商人に卸したりもしてます。」

「なるほどね、街の規模の割には市場の食糧が豊富だなとは思ったんだ。」

などと会話をしながら宿をさがす。


丁度馬車小屋付きの宿があったので、そこに宿泊する事にした、旅の疲れを癒す為にも2泊くらいしよう。

部屋は二部屋。俺とユーリッドで一部屋、ユリス、リジット、ジーナで一部屋だ。

「わ、私はご主人様とご一緒したほうが…」

「却下。反論は抜きだ。」

「「え〜っ」」

ユリス、リジットは不満げだが仕方ないだろう。

「じゃ、俺は少し街を見て回る。ユリスは…」

「お供します。」

即答だった。

「リジットは…」

「荷物を整理しておきますわ。あとお夕飯は?」

「折角街にきたんだ。何処かに食べに行こう。」

そういうと、みんなから笑顔が溢れる。まぁ、ずっと粟のおかゆと干し肉ばかりだったからな。ユリスもリジットも色々工夫してくれたが、飽きはくる。

「ユーリッドとジーナはまだ時間もあるし、露店開いてみたらどうだ?」

一応、ユーリッドもジーナも自分の商品を持ってきている。それに道中も暇を見つけては生産していたので在庫はいくらかある。

「いくら弟子とは言え二人は商人なんだ。自分の食い扶持は稼いでもらうぞ。」

「「は、はいっ。」」

ユーリッドとジーナが声を揃えて返事する。


と、言うわけで俺とユリスは街を見て回る事にする。

イバリークと違い街を一周するのも2時間も掛からないし、

買い物が出来そうな所は街の中心にかたまっている。

街の広場的な空間の周りに商店も露店も輪を作るようにならんでいる。

「食事が出来そうな所はあの酒場くらいです?」

「そうだな。ユリスは飲んじゃダメだぞ。」

「………」

ユリスが無言でプクーっと膨らんだ。

「まぁ、変わりに甘いもの頼んでいいから。」

「えへへ、ご主人様大好きですっ!」


……誰かユリスにいらん事教えていないか?

なんか、だんだんあざとくなって来てるんだが…。


「あ、あそこに魔法屋がありますよ?」

と、ユリスが路地を指差した。路地を少し入った所に確かに魔法屋がある。どうして、魔法屋って少し陰気な所にあるんだろうな。魔法イメージの改善に少し努めたいところだ。

ま、それはともかく少し顔を出してみる事にする。


そこは少し薄暗い感じの小さな魔法屋だった。

ちょっとベルーナの所を思い出すが、あそこよりもスッキリと片付けられている。

「いらっしゃい。ゆっくり見ていってねぇ。」

感じの良いおばあちゃんが店番だった。

魔力測定器もあるが、どこかの店のようにこれみよがしな線なんかは入っていない。

えっと、魔術符は…


ノルテ、トラン、レギ…

基本符ばかりかな…


「なんか変わった呪符とかある?」

おばあちゃんに聞いてみる。

「そうねえ、これなんてどうかねえ?」

そういうと一枚の符を出してくれた。

「ペルテっていうんだけどね、これは熱を操る魔法なんだよ。ただ、普通の魔法とちがってね、ある面を冷やすと同時に逆の面が温まるんだ。温めると冷やすのが同時に出来て便利だとおもうんだけどねぇ、冷やすと同時に温めて何になるんだって、なんか人気がないんだよ……。」

……温めるのと冷やすのが同時になんてやらねぇよ。何がしたいんだよ……と、言うなかれ。

これは要するにペルチェ素子じゃないか。


ペルチェ素子は熱電素子の一種だ。

この素子に電流を流すと、ある面の熱量を逆の面に移す事が出来る。

コンプレッサーをつかわずに冷却が出来ることから、車に設置する小型の冷蔵庫なんかに使われているな。

ちなみに、ペルチェ素子はかける電圧を反転させると、冷える面と温まる面も反転する。この性質を利用して温めも冷却も出来る温冷蔵庫みたいな物も売られていたな。


「いや、中々いいじゃないか。温度を察知できる魔法なんかもある?」

「ああ、そしたらテンプ・センスって魔法があるよ。」

「よし、そしたらそれを貰おうかな。いくら?」

「合わせて銀貨2枚かねぇ。」

うん、呪符は安くていいね。

俺は金を払うと、早速呪符を使い新たな魔法を覚えた。


「ご主人様、この魔法って重ねてかけたら凄く冷たい温度とかも作れるんでしょうか?」

さすがユリス。良いところに気づく。


ペルチェ素子は表と裏に温度差を作れる。つまり素子重ねる事で、その温度差を大きくする事も可能なのだ。現実世界でも3段重ねのペルチェ素子を使えばマイナス40度くらいまでは冷やせる。(加熱側の熱をうまく逃がす必要があるが……)しかも、魔法なら物理的制約がなくなるのだ。うまくすれば液体窒素温度(マイナス196度)や液体ヘリウム温度(マイナス269度)にも到達できるかもしれない。

……ま、そんなに冷やして何する?っていう話はあるのだが…。あれ?いや…待てよ……?

俺はふとある事を思い付き、食品を売っている店に向かった。






皆さま年度末進行の最中いかがお過ごしでしょう?

僕は元気に死んでます。

納品出張が増えたので、移動時間を利用してお話書く時間はなんとか取れていますが…。<不良社員


お読み頂きありがとうございます。

次回はペルチェ素子についてもう少し解説していく予定です。

それでは引き続き、お付き合いいただけると、嬉しいなぁ。

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