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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第三章 新しい事にチャレンジしてみた!
28/66

要求仕様のウソホント

背中に何かが掛けられる感触に俺は目を覚ました。

頬に冷たい感触がある。どうやらよだれを垂らして寝てしまっていたらしい。

「あ、申し訳ありません。起こしてしまいましたか?」

寝ぼけ眼で振り返るとリジットが立っていた。

どうやら、机に突っ伏して寝ている俺に毛布をかけてくれたらしい。

「……いや、もともと寝るつもりじゃなかったんだ。起こしてくれて助かるよ。」

そう言いながら俺は口元をぬぐう。

「お茶でもお入れいたしましょうか?」

「ああ、頼もうかな。」

まだ眠気の残滓が残る頭を振る。

机の上には教科書のページが風に揺られてパラパラとめくられていた。

ユリスに教える為にも、時間のあるうちに一通り教科書をと思っていたのだが、一冊目にしてこのざまだ。机に向かって勉強っていのが相変わらず苦手だな、俺は。

「なにをしていらしたんですか?」

「ああ、ちょっと電気…いや、魔法回路の教科書をね。」

「……魔法回路の教科書……ですか?」

「あぁ、勉強がてら纏めようと思ったんだけど、寝ちゃったようだ。」

「最近は暖かいですから寝てしまっても風邪をひいたりはしないと思いますが……。お気を付けくださいね?」

「ああ、気を付けるよ。」

そういって、リジットの入れてくれたお茶をすする。

「そうだ。明日ラッセンさんのところに行くつもりなんだ。リジットは今日も行くんだろ?アポイント取っておいてくれないか?」

「あら、私がラッセン様のところに行くとよくご存じで。」

ご存じもなにもない。ユリスと一緒に買い物に行くきでも、帰りしなにリジットは「ちょっと…」とか言って商人ギルドに寄っていくという事はユリスから報告をうけている。

「……てか、隠してないだろお前。」

「まぁ、正式なわたくしの雇主はラッセン様ですから。当然といえば当然かと。」

「ま、そうだよな。俺も責めてるわけじゃない。今のところ被害を被ったわけでもないしな。ってわけで、アポイントの件、よろしく。」

「フフフ……かしこまりました。」


-------------------------

今回ラッセンに用があるのは、表向きは電卓魔法の件だ。

ちなみに、「電卓魔法」ではこの世界では意味が通じないので、正式名称は「魔導計算機」とした。

「魔法計算機」と悩んだのだが、俺の中二心がささやいたのだ。

そして、表向きの話題は魔導計算機の販売だが、裏の話もある。「モールス君」の件だ。

ラッセンは「モールス君」に非常に興味を持っている。当然だろう、世界にイノベーションを起こせるのは間違いない。だが、俺もこの世界の事が分かってくるにつれ、これが非常に危険な要素をはらむことに気付いたのだ。


現在俺が住むこのイバリークはカント王国の領内に存在している。そして北にはオルミヤ帝国があり二つの国は何度も領土争いを行ってきていた。現在は小康状態が続いているが、互いになにかきっかけがあれば再び戦乱に突入するのは間違いないといわれている。

そんな中にこの「モールス君」によって遠距離無線通信技術がもたらされたらどうなるか。戦力の拮抗は戦略レベルから崩れる。俺は戦争の引き金になりうるものを作ってしまったわけだ。


だから俺は、ラッセンにこのモールス君から手を引き、すべて忘れてもらうよう交渉するつもりだ。そのためには今回作った電卓「魔道計算機」の技術を丸々譲渡してもよいと考えている。


翌日、俺が商人ギルドを訪れると、トルテさんはすぐに商談室に案内してくれた。

そこにはすでにラッセンがいつもの笑顔で待ち構えていた。

「いやぁウィルさん。足のほうはもう大丈夫なんですか?」

「ええ、もうすっかりです。少々不本意ではありますがリジットにも助けられました。」

「それはよかった。それで本日は?リジットより電卓の事で…と伺っています。いや、正直な話、リジットからその事を聞いてからずっと興味があったのですよ」

「ええ、てっきりラッセンさんは飛んでくるのではと思っていましたよ。」

「いえいえ、きっとウィルさんは準備が整えばこちらに話を持ってきていただけると信じていましたので。飛んでいきたい気持ちは一生懸命抑えましたよ。」

まぁ、電卓のメインターゲットは商人だ。で、あれば商人ギルドに話を持ち掛けるのが自然だし、ほかの経路では展開は難しい。

さて、ジャブの打ち合いもこんなもんでいいだろう。

俺は早速商品を取り出した。

「これが電卓、正式名称は魔導計算機です」

「ほうこれが…話に聞いていたよりもコンパクトなのですね。」

そう。これは今ルーシアが使っているのとは別に作った2号機だ。サイズを小さくして本当の電卓サイズにしてある。

「どういうものかの説明はいりませんよね?どうぞ触ってみてください。」

「では……。」

ラッセンはそういうと、魔導計算機を早速動かした。

初めて扱うはずだが、なかなかその姿は様になっている。なんか、やり手の会計士って感じだな。

「素晴らしい……。そうとしか言えませんな。これは…。」

やがて、ラッセンさんはそう言って魔導計算機を机に置いた。

「さて……では伺いましょうか。今日はどのようなご用件で?この魔法具の販売ですか?それとも販路の相談?技術売却?あるいは王への接見?」

「……交渉に来ました。」

「交渉ですか…いいでしょう。あなたは私に何を望まれますか?」

交渉と聞いて、ラッセンの目が鋭くなった。

俺は言葉を選んで話し出す。頭の中はフル回転だ。

「モールス君に対する一切の干渉を止め、あなたの知るモールス君に関する情報を秘匿していただきたいんです。」

「……対価は?」

「電卓魔法の技術を譲渡します」

俺は魔導計算機の回路を記録した呪符を出す。ロックはかけていないので複製が可能だ。

ラッセンさんはそれを手に取り暫く眺める。そして首を横に振った

「足りませんね。全然足らない。」

「ラッセンさん……先ほどあなたは王への接見……といいました。それはつまり……。」

「ええ、気づいていますとも。モールス君の持つ軍事的可能性。王に接見し、直接売り込むことができればあなたのこの国での立場は盤石ですよ?むしろあなたが気づいていないのではと不安でした。」

「もしもこの国がモールス君を使えば帝国との軍事的バランスが崩れます。戦争が引き起こされるかもしれないのですよ?」

「そして勝つでしょう。相手が持たないものを持つという技術的アドバンテージは圧倒的なものです。我が国が得るものは限りなく大きいでしょうな。逆に伺いたい。国が長年戦い続けてきた相手を打倒しうる技術。それを手放せという対価としてこの魔道計算機は見合うのでしょうか?」

…見合うものではない。計算機は計算機。なくても紙とペンがあれば代用しうるものだ。

だが、無線は違う。ほかに手段のない新しい技術なのだ。

「戦争になれば大勢人が死ぬんですよ!?」

机をたたく俺。ラッセンはそれを静かに受ける。

「今は小康状態に過ぎない偽物の平和です。いつ次の戦争が来るかはわからないそんな状態でした。それが今になるだけです。勝利と共にね……」

沈黙が流れる。


この商談室は防音されており、外の音は一切入ってこない。


静寂がうるさい。そう感じてしまう。


俺は息を吸い込み、そしてラッセンに問う。

「……ラッセンさん。あなたは商人だ。だから教えてください。あなたにとってこの『偽物の平和』の価値は?」

「偽物の平和の価値……?」

ラッセンはそう言うと一呼吸おいて立ち上がり、こちらに背を向けた。

「……よい質問ですね。どうやらあなたは魔法技術だけではなく、政治に対する視点もお持ちのようだ。驚嘆します。どこでそのような知識を?」

「……私が育った国では、皆が学校に通い歴史を学びます。」

「学校で歴史を?素晴らしい制度がある国なのですね。」

ラッセンは商談室の扉の前までくると、ノブに手をかけた。

「ですが、交渉として私の情緒に訴えるようなやり方はいただけませんね。それは結局、相手に委ねたやり方だ。」

ラッセンが扉を開けるとそこにはリジットが立っていた。

…何故ココでリジットが?

モールス君は持ってきている。それに関する情報はリジットにはなにもないはずだ。

「あなたはまだ甘いですね。何故私がリジットを貴方の側に置いたと?」

「モールス君の情報を探るため…では無いですよね。」

「当然です。」

すると、リジットがカバンからなにかを取り出す。

あれは…あれは教科書だ。この間リジットに見せた電気の教科書だった。

「ご主人、こちらです。」

リジットが恭しく頭を垂れる主人は当然俺ではない。

差し出された本をラッセンが受け取る。

「ふむ…なるほど。素晴らしいですね。」

本をパラパラとめくり、ラッセンは続ける。

「調査は任務の一つでしたが対象は貴方自身ですよ。貴方はどこでその知識を得たのか、どのような人間か、何を目的としているのか。そして、もう一つの任務は…」

ラッセンの目が冷たく光る。

「貴方を殺す事です。」

俺は思わず腰を上げる。

リジットはそんな俺を見てニコリと微笑んだ。

沈黙がもたらすプレッシャーに。背中に冷たい物がはしる。

その沈黙を、ラッセンは手に待つ教科書を閉じる音で破った。

「まぁ、そうならなくて良かった。私も未来ある若者を殺すのは心が痛みますからね。」

「はい、わたくしもウィル様を殺したくはありませんでした。」

…どうやら、すぐに殺されたりはしないようだ。だが、彼らはまだ殺さないとも言っていない。

「ウィルさん。貴方がこの国にとって危険人物ならわたしは貴方を殺さなくてはいけなかった。もしもその遠距離通信技術を安易に売りさばいたり、他国に売り込んだりするようならね。」

なるほど、ラッセンは俺以上に無線技術に対して警戒感を持っていたようだ。

「まぁ、ウィルさんは少なくとも技術の危うさに気づき、私にもその譲渡を躊躇った。その判断は正しいものですし、尊重しましょう。遠距離通信技術に関してはこれ以上の詮索はしません。ただし、貴方自身もこの遠距離通信の技術に関しては許可なく販売しないでいただきたい。それと、この本と、魔導計算機はこちらに譲渡していただきます。」

すでにその教科書も、呪符もラッセンの手の中だった。

「そうですね、それと、こちらからは馬車も1台つけましょうか」

…馬車?

なんでココで馬車が出てくるの?

俺がその意図に気づかずいるとラッセンが捕捉する。

「貴方はもうこの街には居られませんよ?」

「街に居られない?どういうことです?」

「遠距離通信技術の存在を知るのは私だけですか?違いますよね。」

言われて、俺は記憶を辿る。

…確か…ユリスを奴隷さらいから助けた時に、調書をとられたな。でもその時の担当は全然理解していない感じだったが…。いや、調書なんだから、当然その上が読むのだ。つまり、担当が理解してなかったとしても……。

「今頃、スリーピングバッカスには役人が詰めかけているはずですよ。」

なん…だと?

「ゆ、ユリスッ」

「ご安心ください。」

リジットそう言うと、横からユリスが現れた。

「ご主人様っ」

…良かった。しかし、この状況はどうなんだ?どんどん俺が追い詰められているような気がする。

「ご主人様、リジットに言われて荷物をまとめて出てきたんです。そしたら入れ替わりに宿に役人が入ってきて…。」

ユリスが状況を説明する。

ユリスには奴隷の首輪が有るので嘘は言えないはずだ。どうやら役人が押しかけたのは本当らしい。

「す、すみません。話をまとめさせてください。以前取った調書から遠距離通信技術の存在を知った国の役人が、俺を捉えようとしてると。」

「国ではないですね、この街の領主です。」

「……捕まると?」

「まぁ、貴方の持つ技術を全てはかされた上で技術の漏洩を防ぐ為に幽閉、あるいは…」

「じゃ、じゃあ、この街を出ても追われ続けるって事ですか?」

「まぁ、街を出れば表だっては追えないはずです。通信技術の事を領主も他の者に知られたくはないはずですからね。」

……表だっては…ね。

俺はもうラッセンから馬車を受け取ってこのまま、旅にでるしかないと言うわけだ。

「以上がこちらからの提案ですが、如何でしょう?」

無線技術は黙っててやるから、魔法の技術と魔導計算機の権利丸々置いて街を出て行けというわけだ。

こ、こんちくしょう。余裕の笑顔がムカつく。

しかし、逃げ道は全て塞がれていた。

「……受けます。」

「結構。それでは、馬車は街の西門を出たところの馬屋に用意させています。こちらが馬車の証書ですからお受け取り下さい。」

そう言ってラッセンが差し出した証書を、俺はひったくるように受け取った。

「いやぁ、いい交渉が出来ました。今後ともご贔屓に。」

ラッセンはにっこり笑った。


-------

「フフフ、慌てて出て行きましたね。ウィル様達…。ご主人様に交渉を持ちかけるには、まだ少し早かったでしょうか?」

「交渉はそこに持ち込んだ手札ですでに決まっているんですよ。交渉中の論説にひっくり返されるのは二流のやることです。」

「ですが何故このような交渉を?ワザワザ馬車まで用意してウィル様をお手元から手放すなんて。」

「そうですねぇ、まぁ旅をさせる事で若者の成長を促したい…というね。それに、完全に手放したわけではありません。」

そう言ってラッセンは手に入れた教科書をめくる。

「随分字の汚い教科書ですねぇ……これはどうやら、私の一人勝ちとも言えないようです。ところでリジット。貴方は何時までここにいるのです?」

「……え?」

「領主は執念深い男です。ウィルさん本人に逃げられたなら周りの人間から情報を聞き出そうとするでしょうね。」

「え……え?」

「スリーピングバッカスには迷惑をかけられませんから私から手を回しますがあなたは……ねぇ」

「そ、そんな…ウィ、ウィル様待って〜〜。」

慌てて駆け出すリジット。

その背中にラッセンは声をかける。

「任務は継続ですよ。情報に応じて報酬を払いましょう。」


そして、入れ替わるように一人の男が入ってきた。

黒を基調とした、礼服をまとい、肩から司法士である事をしめす肩掛けを垂らしている。

「やってくれましたね。何故逃したのです?」

それは以前ベルーナを裁いた司法士だった。

「さて?」

ラッセンは肩を竦める。

「貴方の立場だ。直接的な裁きはないにしろ、領主の心証が悪くなる事は避けられませんぞ?」

「まぁ、それでも一先ずは十分な儲けですよ。ご領主殿の信頼はこいつで取り戻すとしょう。」

そう言ってラッセンは魔導計算機を手に取る。

「そこまでして、彼奴を庇うのですか。貴方の根回しのお陰で憲兵を出すのにも一苦労です。結果紙一重で逃げられましたよ」

「本当はもう少し手元に置いて置きたかったのですがねぇ、貴方がアレに気づかなければ…私だって本当は損をしてるんですよ?」

これはラッセンの心からの本音であったが、どうやら相手には通じなかったようだ。

「ご自分だけはきっちり利益を確保しておいてよくいいますね。まったく…。その魔法具の販売には一枚かませていただけるのですかな?」

「そうですね、それでは交渉とまいりましょうか。」


----------


まったく…なんていう事だ。

当初の目的である無線技術の隠匿は成し得たのに、何故か負けた気分だ。っていか、完敗だ。

電卓…魔道計算機の利権は持って行かれ、教科書を一冊奪われた。そう、一冊だけ。しかもそれはユリス用に俺が纏めていたものだ。本物の教科書はしっかりユリスがカバンの隠し底に仕舞って持ち出してくれている。

まぁ、今更言うまでもないが、リジットの目的がモールス君じゃない事は当然気づいていた。そして、モールス君じゃないとすれば、俺の技術その物が考えられた。と、いうわけで、ワザとユリス向けの教科書を自分の教科書のように振舞っていたのだ。盗られてもそこまで大した事は書いていないし、取られなければユリスの勉強に使えばいい。

と、いう訳で、そこまでは正に狙い通りだった訳だが、まさか街にいられなくなるとは思わなかった。


俺たちは急いで西の門を抜けて馬屋に入る。そこには立派な二頭立の馬車が用意されていた。中には保存食や旅道具も揃えられている。これならすぐに旅立てる。だが、ココで困った事が。


俺、馬車なんて扱えないよ?


「ユリス、馬車は扱える?」

「すみません、やった事がないです…」

そうか…困ったな。

生き物だから間違った世話をする訳にもいかないし、折角の馬車だが歩いていくしかないか…そう思った時。

「ウィルさん〜」

と俺を呼ぶ声がする。

見ると服飾革物屋のユーリッドとジーナが走ってきた。

「はぁ、はぁ…ウィルさん、ラッセンさんに言われて来ました。」

「ラッセンさんから? 一体どうしたんだ?」

「その…どうか僕たちを雇って下さい。」

「お願いしますっ!」

え?

突然のことにちょっと頭が追いつかない。

「ちょ、ちょっとまって。ラッセンさんから?どういうことだ?」

「はい。その…私たちの店が苦しい状況だったのは前にお話したかと思います。実はその事をギルド長に相談したら、一度店を閉めて、修行してきたらどうかと言われたんです。ウィルさんがもうすぐ旅に出るはずだら、修行としてついて行けば良いって。」

な、なんつう人だあの人は。

「一生懸命お手伝いします。雇っては貰えませんか?」

「って、店は?」

「もう閉めました。店舗はラッセンさんに預けました。」

「ええっと…そうすると、俺が断ると?」

「…路頭に迷います。」

…つくづく、こちらの逃げ道をふさぐ人だな。

「……馬車の運転出来る?」

「は、はいっ。荷の運搬に使ってましたから。」

「分かった。それじゃぁ、雇おう。これから宜しくなっ。」

細かい雇用契約は後で結ぶ事にしよう。

今は一刻も早くイバリークを離れなくては。

俺たちは馬車に乗り込む。そして…

「待って下さい〜〜。」

なんだよもうっ!

と、振り返るとそこにはメイド服で、背中に風呂敷背負ったリジットがドタバタと駆けてきていた。この世界にも風呂敷ってあるんだな。

…普段は超美人なのに、時々残念だよな、リジット…。

「ハァハァ…ま、待って下さい。私も連れて行って下さい。」

「なにを言ってるんですかっ。ずっとご主人様をスパイしてたくせにっ!」

「そ、それは初めからご存じでしたでしょう!?」

…確かに。でも、コイツ俺の命ねらってたんどよなぁ。

「…なぁ。俺の命狙ってたって本当?」

「ナンノコトデスカ〜、私シラナイデス〜」

…本当らしい。

「で、でも、ですね。それは本当にウィル様が危険だと思った時です。事前に警告もするつもりでしたし、私もウィル様を殺したくなんてありませんでした!」

そういって、俺の事をウルウルした目で見上げるリジット。この様子だとラッセンから放り出されたか…。

俺は少し考えて、そして決めた。

「イイぜ。行こうか。」

「「えっ?」」

ユリスとリジットが同時に驚きの声を上げる。

「あ、あの、本当にイイんですか?」

「だ、ダメですよっ。ご主人様の事をずっと騙して…騙して…はいないかもしれませんけど」

「ま、今回ユリスも助けてくれたしな。暫くはいいだろ。どうせ、ラッセンからのお目付け役も兼ねてるんだろ?」

「はぁ、まぁ情報には報酬を払うと……。」

「ってわけだ。リジットを断ったら別の奴がくるさ。いまさら、訳の分からない奴に付纏わられるくらいなら、リジットの方が気楽だ。」

「は、はぁ。まぁ、そうかもしれませんが…」

「ほれ、グダグダしてたら怖い人たちきちゃうからもう行くぞ?」

そういって、俺は馬車から手を差し出す。

「ほ、はいっ、よろしくお願いします。ご主人様っ」

リジットが俺の手を掴み、飛び乗ってくる。


こうして俺たちは、住み慣れたイバリークを追われるように旅に出た。冒険の始まりだ。

旅仲間も五人になったわけだし、何はともあれっ

…5人分の生活費をかせがないとなぁ。…はぁ。


俺の冒険は所帯染みていた。






取り敢えず今話で一旦一区切りです。

また、少しネタを考えますので次回投稿は少し開くかもしれません。


しかし、ここ数日で急にアクセスが伸びてビックリです。調べてみたら、このお話しを紹介して下さっていたページがありました。思わず感激してプルプル震えてしまいました。紹介ページを作ってくださった方、本当にありがとうございます。


それでは、拙い拙作ではございますが、これからもお付き合い頂ければ幸いです。

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