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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第三章 新しい事にチャレンジしてみた!
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帰還回路の歩き方

野外訓練は基本的にムラーノの大森林入り口でゴブリン、オークを探しては狩るを繰り返していた。

また、昼食の後暫くと、夕方には射撃の訓練。

戦っていない時には旅の技術-薬草の見分け方や、獲物の追い方、旅人同士の処世術などを教えてもらう。

野うさぎがいれば狩り、その場で解体する。

まさにこの世界で旅をするには絶対に抑えておきたいスキルだ。俺も自然、真剣に取り組む。

ただ、そういう作業をしようとするたびにユリスが

「そういう事は私がやりますっ」

と、言ってきたのは困った。

自分でやらにゃ訓練にならないというのに、どうも最近のユリスはやたら仕事をしたがる。もちろん、働きたがらないよりよっぽどいい傾向なんだけどね。


狩りをして、採取をして、野営をして…。

この間までのはんだごてとカッターナイフで基盤修正していた日々からは想像も出来ない生活だ。

向こうの世界はどうなっているだろう。こっちにいるのと同じだけ向こうの世界も時間が進んでいるんだとしたら…。

あ…久々に胃が…。

…ま、まあ、それは考えても仕方ない。


しかし…

昨日の夜空を思い出す。

地球と同じ夜空が見えたという事は、ココは地球なのだろうか。

並行世界?

タイムスリップ?

その辺が分かれば変える方法も…いや、分かっても難しい。世界を飛び越える方法なんてサッパリわからん。

とりあえず、俺と同じような人が他にもいないか探すしかないな。



訓練6日目。

いよいよ明日で終わりだ。

正直、こんなにテントで寝るのがしんどいとは思わなかった。硬い地面が体に刺さるのだ。

布団のありがたみを痛感した。

そんな事を思いながら俺は固まった体をほぐす。


「ドーハン師匠、今日のメニューは?」

俺はいつの間にか二人の事を師匠と呼ぶようになっていた。

「楽しみにしときな。今日は特別メニューだぜ」

そう言って、悪い感じにニヤリと笑うドーハン師匠。

うへぇ…なんかキツそうだ。

なんだが、此処までの疲れがどっとでてきたぞ…。

「ちょっと、なにバテた顔してんの。ユリスを見習いなさいな。」

「そ、そんな。私なんて…」

ユリスは慌てた様子でルメリアの言葉を否定した。

だが、実際ユリスは俺として同じに旅道具一式持って、テントで寝てるのに全然疲れた様子は見せない。

曰く、今まで暮らしてきたところに比べれば、テント生活は快適なものらしい。

「寝袋にマット敷いてるとフカフカで気持ち良いのです」

ルメリアは嬉しそうに言うが、一体どんなベットで寝てきたんだ…。


出発の準備も大体終わり、周りを見回すとドーハンとルメリアは優雅にお茶を飲んでいた。

…あれ?出発の準備をしていない?

いつも、さっさと準備を終え、俺たちに遅いとかなんとか言ってくる二人がまだなにも支度をしていなかった。

と、俺たちの準備が終わったのを見たドーハンが立ち上がる。

「準備出来たか?それじゃ今日のメニューの発表だ。」

もったいぶったドーハンの物言いに思わずゴクリ喉を鳴らしてしまう。

「此処からはお前らだけでイバリークまで帰れ。」

「此処から?」

ここはムンサンの大森林内部、少し奥に入ったところだ。といっても、大森林全体から言えばまだまだ外周だが。

「お前らだとおそらく2日くらいかかるだろう。無事に帰れりゃ訓練終了だ。」

「えつと…無事に帰れなかったら?」

「そんときゃ、俺らは依頼料貰えず非常に困るな。」

成る程、依頼料はギルドに支払っているが、俺らが依頼完了証にサインしなければドーハン達は依頼料は貰えない。

…って、気にしてるのはそこではない。

「まぁ、心配しないで。1日遅れで後をちゃんと追うから、何かあってもちょっと凌いでてくれれば助けてあげるよ。」

「凌げなかったら?」

「骨は拾ってあげるわよ」

ルメリアがニッコリ笑った。



ユリスはと二人で歩き出したムンサンの森は、なんだか今までと違って見える。

木の陰、茂みの裏、なにかいるような気がしてしまう。

少し旅に慣れた気がしていたが、ドーハンとルメリアに頼っていただけなのだろう。

まぁ、そう言う意味では正しい最終試験なのはわかるのだが…厳しいなぁ。


「ご主人様、荷物をお持ちします」

ドーハン、ルメリアから離れて暫くすると、ユリスがそう言って俺の荷物を持とうとする。

「いいよ、ユリス。」

「でも…」

「前にも言ったけどこれもトレーニングなんだ。自分でやらなきゃ意味ないだろ?それにいざとなった時に、ユリスがバテて動けなかったらどうするんだよ。」

「そ、その時は私を囮にして逃げてください。」

「アホか。」

ユリスの頭にチョップする。

しながら、チョップって死語かなぁ?と気になった。

「うぅ…でもぉ…」

「良いから、さっさと進もうぜ。ノンビリしてて師匠達に追いつかれたりしたらそれこそなにを言われるかわからないからな」

そんな事を話しながら俺たちは歩き続ける。


小高い丘に上り方角を確認する。見えるのは木、川、

そして遥か彼方にイバリークの城壁が見える。川はムンサンの森を割るように伸びており、そのままイバリークに向かっている。この川はイバリークの街の中を流れる川の上流にあたるようだ。

「タルマ川沿いに行けば、イバリークまで抜けられそうですね。」

タルマ川というのが、今見えている川の名前だ。ユリスの言う通り、それが一番迷わずいけそうたな。森を抜けた所でキャンプを張りたいが、いけるかどうかはギリギリというところか。

あとはゴブリンなんかに気をつければいけるだろう。

最初は不安だったが、行程が見えればなんとかなりそうに思えてくる。


開発を行う際、最初に工程表を起こす。

不思議な事に、それがどんなに無茶な短納期でも、工程の線を引くと何故か出来るような気がしてしまう。

まぁ、それは「設計」や「作動確認」の言葉に内包される中身を見ないために起こる幻覚なのだが…。

俺はかつてこの失敗を繰り返した。

そして今また繰り返そうとしている。

工程も行程も予定どおりには行かないものだと思い知ったのはもう少し後の話しだ。


所持金 金貨190枚 銀貨17枚 銅貨5枚

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