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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第三章 新しい事にチャレンジしてみた!
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弾けるコンデンサ

イバリークから西にはムンサンの大森林という広大な樹林帯が広がっている。内部は様々な野生動物に溢れており、イバリークの狩人達の多くはこの森で狩りを行っている。また、植生も変化に富んでおり、薬草の採取も可能だが、内部にはゴブリン、オークなどの魔物も確認されているため、そういった仕事は主に冒険者の仕事となっている。


冒険者というのはあれだ。

冒険者ギルドがあって、そこから仕事を斡旋されては、危険な野外での仕事に従事する者の事だ。


そして、俺とユリスは今、その冒険者2人とムンサンの大森林入り口あたりでゴブリンと戦っていた。いや、正確には俺とユリスで闘っている。冒険者2人は見ているだけだ。


ゴブリンは子供くらいの大きさの小鬼だ。基本的な戦闘力は低く、成人した大人ならばそう負ける事はない。大体体格に比例した強さだ。だが、だからといって安心出来るわけではない。ゴブリンは基本的に群を作っているため、単体との遭遇ということはない。運悪く10匹ちかくと遭遇したりするとかなり危険だ。また待ち伏せやして獲物を捕らえるような知能もあるので決して油断出来る相手ではない。ゲームならレベルが10くらいになったら相手にもならないだろうが、この世界ではどんなに熟練した所で、不意に後頭部に一撃もらえば昏倒する。

まぁ、そういう事態にならないよう十重二十重に警戒するからこその熟練だと思うけどね。


今の俺たちの相手は二匹。

本当5匹いたのだが、3匹は冒険者の2人が片付けてくれた。

仲間を殺されて激昂してるのか逃げる様子はない。

俺は昔、体育の授業で習った剣道を思い出しながら買ったばかりのショートソードを正眼に構える。

そして、同時に魔法陣を展開してファイヤーボールを放った。以前は威力の無さに使えない子認定をしていたのだが、相手の注意を引くには十分だった。

ゴブリンは火の玉に驚き、なんとか避けるが転んでしまう。そこに俺は一気に近付いて剣を振り下ろす。

ガキンッ

という音がして、硬い物を打ち付けた衝撃で手が痺れる。

ゴブリンが転がるようにして避け、俺の剣は石を叩いていた。

だが、ゴブリンの態勢は完全にくずれている。

痺れる手を無視して剣を構え直し、ゴブリンに剣をつきたてる。

背後から首を、貫かれ。ゴブリンは少し、痙攣してすぐに動かなくなった。

命をこの手で奪ったことに手が震えるが、まだ戦いは終わっていない。

「キャッッ」

ユリスの声に振り返る。

まずい、

ユリスが別のゴブリンの攻撃を受けている。

なんとか一撃は剣で受けたが、その衝撃に耐えられず剣を落としてしまった。

「逃げろっ、エリスッ!」

言うのと同時に魔法陣を再び展開する。

追撃しようとするゴブリンに、俺は足元の石を拾い上げると、高出力化させたフォスの魔法で打ち出す。

完全にこちらを意識から外していたゴブリンは、高速飛翔する石弾をまともにくらった。

その場で膝を付くゴブリンに俺は素早く近付いて、首を飛ばした。


「はぁ、はぁ…」

なんとかゴブリンを倒し、俺もユリスも座り込んで息を整えていた。

運動としては大した事はしてないのに凄い疲れようだ。

なんて言うか、精神的に疲れた。

「ほい、お疲れさん」

冒険者の1人が俺とユリスに水筒を渡してくれる。

レザーアーマーを着た30代の女性だ。

髪は赤色でライオンのような爆発した天パーだ。

美人ではないが、人懐っこい顔をしており、結構昔はモテたんだ…とは本人談だが、別に今でもイケるような気はする。名前はルメリア・エルバレン、今回俺が雇った冒険者2人のうちの1人だ。

「どうだった?初めての戦いって奴は」

言われて思い出すのはあのゴブリンの目だ。

生きるための必死さと意志が物理的な圧力を伴って突き刺さってくるようだった。

「怖かった…です」

震える自分の手を見ながら答えた。

「そうかい?中々堂にいったもんだったけどね。火の玉で牽制してからの一撃なんてな。」

「ふん、まだまだだっ」

俺の雇ったもう1人の冒険者のドーハン・エルバレンだ。

彼はルメリアの旦那で歳の頃は40前半。

髪は黒の様だがかなり白髪が混じってきている。

だが、年を感じるのはそこだけて、体も動きも俺なんかよりよっぽど若々しい。

「ちょっと、そんな言い方ないだろ」

「うるせぇな。ダメなものを良いとは言えねぇだろうが。」

あと、ココまで付き合いてわかったがかなり口が悪い。

「ご、ご主人様は魔法使いだからしかたが…モゴモゴ〜」

俺をフォローしてくれようとしたユリスの口をふさぐ。

教えて貰っていと言うことは、駄目出しされて当然なのだ。っていうか、駄目出しされる為にお金を払っていると言ってもいい。


「まずはウィル。あの構えだか、お前には合わないからやめとけ。」

「あ、あれ、ダメですか?」

体育の授業では褒められたんだけどな。

まぁ、遠い昔の事だが…

「まぁ、ダメってんじゃねぇけどよ。あの構えだと攻撃前に一度剣を振り上げないといけねぇだろう?」

そう言って実演する。

確かに「突く」以外では振りかぶる必要がある。

「まぁ、剣士同士の戦いでってんなら話は違うが、お前が相手にすんのはゴブリンやら狼やらだ。だったらこう、振りかぶっちまった状態で構えちまった方が攻撃の出がはえー。」

「えっと…ゴブリン以外が出てきたら?」

「バッカおめ〜、そんときゃ一目散に逃げるんだよ。」

なるほど、そりゃそうだ。

「あと、あれだユリス…だったな。おめぇは逆にこいつみたいに構えだ方がいい。剣先を相手に突きつけて、とにかく近付けさせるな。さっきみたいに縮こまって構えてるから力もはいらねぇし、剣を弾き飛ばされたりするんだ。」

「…はい」

ちょっと不服そうだが、ユリスもうなずく。

…ドーハンさん、口は悪いけどなんだかんだきっちり教えてくれるな…


俺達が何をしているかと言うと、野外訓練なわけだ。

俺はこの世界を旅して元の世界に戻るつもりなのだが、俺もユリスも旅の経験なんて全くない。

モニタの中でならそれこそ数限りなく旅を行い、ゴブリン共の屍山血河を築いてきた俺だが、現実では剣を振るった事すら無いのだ。いや、それが当たり前の日本人だと思うが。

旅をするにも、まずこの世界での旅スキルを学ぶ必要があると感じ、俺は冒険者ギルドに旅の基礎技能を教えてもらう依頼を出したのだ。そして、冒険者ギルドから紹介されたのがこの2人だった。

余談だが、最初に会った時に

「お二人の職業は?」

と、聞いたら2人は何とも不思議そうな顔をして。

「お前は冒険者を雇ったんだろう?」

と、聞き返されてしまった。

俺としては剣士とか盗賊…という職種を聞いたつもりだったが、この世界の冒険者はあまりそういう分類分けはしないとのことだ。まぁ、確かに1人である程度なんでも出来ないと旅は難しいかもしれない。もちろん、得意不得意はあるのでパーティを組めば、役割分担はするようだ。

そういう意味で言うならドーハンは剣が得意、ルメリアは弓を使うのと、探索と、植物採取と、あと魔法が得意との事だった。ドーハン、脳筋だ〜と思うが、結局戦闘が一番危険なので、前衛役はそれでいいらしい。


まぁ、それは良いとして…

もちろん習うのは戦闘だけじゃない。道の歩き方、天気の読み方、夜営の仕方など、多岐に渡る。

教わるのは一週間でお願いしたけど、短すぎたかもしれない…。


ゴブリンを倒した夜、俺たちは焚き火を囲い、みんなで夕飯を食べていた。なんかキャンプみたいでワクワクする。

ただ、飯は旨くなかった。粟?ヒエ?のような穀物のお粥と、途中で採取した野草のスープ。あとは干し肉だ。


基本的に洋風な世界だし主食はパンなのかと思ったが、旅先では保存の効き、かさばらない穀物が使いやすいらしい。

以前ユリスに旅先で美味しい食事を…とか言ったが、かなりの無茶振りだったと思い知った。

「ところで昼間の魔法だけどよ。」

ドーハンが思い出したように話しかけてきた。

「昼間の魔法ってファイヤーボールですか?」

「ちげーよ。そのあとの奴だ。」

「あぁ、あのユリスちゃん襲ったゴブリンを仕留めた奴ね。確かに私も興味あるよ。今まであんなの見たことないね」

やっぱりそっちか〜。

まぁ、基本的な所だけなら話してもいいだろう。

「あれはフォスの魔法で石を打ち込んだだけです。」

「フォスだぁ?あれにそんな威力でるわけねぇだろ。」

「そうだよ。私だってそれ位はつかえるけど…ホラ」

ルメリアの手のひらの石がカエルの様にビョンと飛ぶ。

「まぁせいぜいこんなもんだろ?」

「それはフォスの使い方が違うんですよ。キャパの魔法は使えますか。」

「あ、ああ。勿論それくらいは使えるさ。」

「そしたら最初にキャパの両端に全力で魔力をかけて下さい。」

「ん…こうかい?」

「えぇ、そしたらその状態を維持しながらフォスとキャパを魔力路でつないでください。あ、先にターゲットの石にフォスを設定してからですよ?」

「それでなんか変わるの?結局普通に使った時と変わらない様に思うんだけど…」

「まぁまぁ、繋げばわかりますって。」

「そうかなぁ?」

ルメリアが半信半疑ながら石を拾った。

そして…

ビユン!と石が飛び出し、俺の頬をかすめてった。

……って、あぶねぇな、オイッ

「おぉ、スゴイっ。今、10mくらい飛んだよ⁈なんでっ?ただキャパつないだだけなのに。」

ドーハンも魔法を使ったルメリアも目を丸くしている。

「ま、マジカのかけ方が違うんですよ。ってか人の顔を狙わないでください!」

「ゴメン、まさかあんなに飛ぶなんて思ってなかったからさぁ。で、魔力のかけ方ってなに?」

「ちょっ、そういいながらコッチ狙ってくるのやめてくださいっ」

再びルメリアの拾った石が俺の方を向いてる気がしてしょうがない。

「分かったから早く〜」

「ハイハイ。良いですか?最初にルメリアさんがやった時ってフォスに直接マジカをかけましたよね。多分その時のかけてるマジカって0から1.2.って感じでチカラがかかっていくんじゃないですか?」

「ん〜、そうねぇ。私は最大は8.2マジカくらいだけど、イキナリ8.2マジカかけられないからねぇ」

むぁ、この人俺より大分マジカ強いな…。

ま、まぁいい…。

…これは人が力を込める時もイキナリ最大の力をかけられないのと同じだ。力の入れ出しから、最大の力が出るまでにはコンマ数秒時間がかかる。

「その最大マジカまでに到達する時間がフォスの力を弱めてしまうんです。フォスの出力は流入魔素の量に比例します。なので最大出力にするには、最大マジカを、いきなりら与えないといけない…と言うわけです。」

「ふ、ふーん…そうなのかい?あんた」

「お、おれに聞くなよ…」

むぅ、ちょっとついて来られなかったみたいだ。

まぁ仕方ない。コンデンサに対する突入電流の話しに近いのだが、なかなかこちらの世界の言葉だけではイメージしにくいだろう。

「まぁ、教えたやり方でフォスを動かすと強力ですよ〜って事ですよ。」

「いや、でもさぁ。」

と、話の収束を図ったが、まだ終わらなかった。まぁ、予想はしてたけどね。

「確かに強力にはなったけど、あんたが昼にやって見せたのはこんなもんじゃなかったと思ったけど…」

「まぁ、…それはこめられる最大マジカの差ですかね〜。」

と、俺はちょっとおどけたように言って誤魔化した。ちなみに、昇圧回路は俺のトップシークレットだから教えない。

「ふーん…流石、今話題の魔道具技師様ってところなのかねぇ?」

「話題つってもよぉ。あのエロ道具だろう?」

ちょい待てヤァ…と、思うが口には出さない。ひきっつった笑顔を顔に貼り付けておくことにする。

「ご主人様はすごいんです!」

と、何故かユリスがドヤ顔だ。

でも、エロ道具のくだりが出る前にドヤって欲しかった…。

「あははっ、確かにあんたのご主人様の道具は凄かったよ。ねぇ!あんたっ」

そう言ってルメリアがドーハンの背中をバンバン叩く。ドーハンはやや困り顔で「お、おう」と小さな声で答える。

そんな2人のやり取りを見て、なんだか俺も吹き出してしまった。

夫婦の力関係を見た気がする。


なんだか久しぶりにこんなに楽しい気分になった気がするな。

そんな風に思いながら、ふと見上げれば空。

今日は雲ひとつなく、満天の星空に俺は息を飲む。

「きれいだなぁ」

俺が思わずつぶやくと、みんな空を見上げた。

「きれいです…」

ユリスが呟く。最近は大分感情を出してくれるようになったな。

「ほんとうだ、今日は空気が澄んでるねぇ。天帝の星もあんなにくっきり見える。」

ルメリアが北の空を見ながら言う。

「天帝の星?」

「知らないのかい?空の中心の星さ。ちょうどあの1本高い木の上に見えてるのがそれさ。」

そう言われて、ルメリアが指差す方を見る。

確かに1本高い木がありその少し上に他より少し明るい星が見える。

「不動の星だね。他の星はみんな天帝の星を中心に動いてるんだ。いつも同じ位置にあるから、私達みたいな旅するものには道を示してくれる守り神みたいなものさね。」

ふーん。

北極星みたいだな…やっぱりこの世界も地球と同じような惑星なのだろうか。

と、思いながら見ていると…あ、あれ?

違和感を覚えた俺は改めて北の空を観察する。天帝の星の横に明るい星がWの形に並んでいるのが見える。

あれはカシオペア…?

…てことは…

視線をカシオペア座から天帝の星を挟んで逆に向けると…

あった。北斗七星だ。

南の空を見れば天の川の中にさそり座がある…


え?ココって…

地球…なのか?


所持金 金貨190枚 銀貨17枚 銅貨5枚

取り合えず再開しました。

でも、プロットもまだできてません。

行き当たりばったり、七転八倒、明日には明日の風が吹く。

どうなるのか、私にもわかりませんが、再度離陸したこのストーリー。

胴体着陸でもいいのでなんとか着陸させたいです。

よろしくお願いします。

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