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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第ニ章 奴隷を手に入れた!
15/66

232Cに連なるモノを

所持金 金貨195枚 銀貨1枚 銅貨7枚


な、なんとか間に合った…

俺はギリギリでユリスをうけとめた。

まぁ踏ん張りきれずに倒れてしまったが…


…いや、無理だろあんな咄嗟の体制で落ちてくる人間1人を受け止めるなんて。


と、とにかく。周りを見回す。

足元には今は倒した大男。

他に事態を飲み込めてない奴が3人。1人は舟の火を消そうとしている。逃走防止に舟に火をかけたのは正解だったようだ。まぁ、本当は火を見て慌てて出てきた所、こっそり忍び込んでユリスが救出するつもりだったのだが、まさか抱えて出てくるとは思わなかった。

さて、どうするか…


一瞬考え、そして俺は声をはりあげた。

「おまえらっ、すぐに衛兵が来るぞっ」

その声に、人攫い共は一瞬顔を見合わせると

「ッチ」

舌打ちをして逃げ出した。

コレでいい。あいつらにしてもコッチに関わって逃げる時間を損失するほうが痛いはずだ。最低限の計算が出来るやつで助かった。逃すのは癪だが、これでヤケになってコッチに襲ってきたらどうしようかと思ったところだ。衛兵のが向ってるのは間違いないと思うがあとどれくらいでくるかは分からないのだ。

フウ…

俺は息をつきながら、ユリスを下ろした。

なんとか助かった…


…が、


突然、大きな影が覆いかぶさる。

頭の悪い人攫いが残っていたようだ。

最初にユリスを抱えていた奴だ。

奴は俺に馬乗りになると首を締め殺しにくる。

咄嗟に組みついておさえこもうとするが、筋力の差が歴然だ。

くそっ、コイツなんで逃げないんだっ。

と、思ったが、実は最初にコイツ足を吹っ飛ばしてやったのだ。多分骨折くらいはしているはずで、逃げられないのだと思い至る。まぁ、分かった所で、この状況では全然嬉しくないが…。

暫くもみあうが、筋力差がある上に馬乗りになられては抗いきれない。

とうとう奴の力に抗しきれずに俺の首に奴の手がかかる。

「へ、へへっ。よくもやりやがったなぁ、死ぃねぇやぁ…」

狂犬のように口を開き、ギラギラした目をひんむいて男の顔が俺に近づき首の指に力が篭る。その時に…


ッゴ!


と、鈍い音が響くと男の体が一瞬浮かび上がり、ドサリと落ちる。

その下敷きになった俺は

グエッ

と、潰れたカエルのような声をあげた。


はぁ…はぁ…


ま、間に合った…


「ゲホッゲホッ…」

おれは這い出るように、そいつの下から抜け出す。

ユリスがなにかを言っているが猿轡でなにをいっているかわからない。

俺は這いずってユリスに近づき猿轡を取ってやる。


「ご、ご主人様。大丈夫だですか⁈」

「はぁ、はぁ…いや、死ぬかと思った…」

そうした、改めて大男を見る。

ピクリとも動かないが多分死んではいないはずだ。

「攻撃魔法…ですか?」

「あ、ああ。実戦で使うのはじめてだけどね。」

ていうか、実戦が初めてですが…。


今使ったのはフォスの魔法を8個を対象に対して逆円錐上に配置し同時に起動したのだ。最初、ユリスを抱えていた時には奴の足を、今回は奴の胸当てに向かってその魔法をかけた。

チャージポンプで30マジカまで昇圧した魔素を一気にフォスのスペルに流し込む。フォスが生む力は流れ込む魔素に比例するため、昇圧した魔素を流し込むと瞬間的にかなりのトルクを生む。さらに、円錐上に配置したフォスの生む運動エネルギーは一点に集中して、対象を破壊する。所謂ノイマン効果を狙っての配置だ。

最初のイメージとしては道路工事でよく見るコンクリを砕く油圧ブレーカーだったのだが、どちらかと言うと成形炸薬弾の原理に近くなった。連打で岩を砕く油圧ブレーカーと違ってコッチは単発しか打てないが、それでも石壁に穴を穿つ程度の威力はある。


…いや、都市防壁で実験したとかソンナ事ハナイヨ?


まぁ、近距離でしか使えないけど威力はこの通りというところか。名前は油圧ブレーカー…じゃ格好悪いし、インパクトブレーカーと命名した。うむ、格好いいじゃないか。

そんな一撃をうけた奴の金属の胸当てはベッコリへこんでいる。足の時は多少手加減したのだが、それでも骨折はしているはずだ。てか、足を骨折しながらも馬乗りにになって襲ってくるなんて、なんて奴だと改めて思う。


「ユリスこそ、大丈夫だったか?怪我は?酷い事はされなかったか?」

そう言いながら話しながら、彼女の手枷と足枷を外してやる。

「大丈夫…です。」

「そっか。怖かったろう。中々見つけられなくてごめんな。」

と、彼女は少し俯く。

「…攫われた事は怖くありませんでした。でも…」

少しの間の後、彼女は言った。

「ご主人様、今回は私の不手際でご面倒をかけ申し訳ありませんでした。」

そう言って彼女は頭をさげた。

……チョップ……

を、俺は彼女の頭にいれた。

「えっ?」

驚いた表情の彼女に、俺はため息をつく。

そして、カバンからシミナスの水を取り出した。

「ユリスにこれ買ってたら遅くなった。」

そう言って俺はかったシミナスの水をユリスにわたす。

「これ…は…?」

「いや、そういう化粧品とか渡してなかったろ?だから実験の途中で…さ、買ってたら色々あって遅くなった。」

そう、あそこで実験をしっかり継続してたらもっと早く気づけたかもしれないのだ。

いや、それをいうなら、あんな人気の無いところに1人立たせて待たせるのがそもそもどうかしていた。まだ日本の感覚が抜けていないのだ。

と、ユリスは渡されたシミナスの瓶を胸に押し当てるように持つ。そして、少しふるえている。

「…ごめん。怖かったよな。」

俺は改めて謝った。

「…怖かった…です。捨てられる…と。…思って、また、あの暗い世界に入るのだと思って…怖かった…怖かった…です。」

俺は震えるユリスの頭にソッと手を添え胸に抱こうと…

「ご主人様っ‼︎」

ヒウッ、ゴメンナサイッ

突然、顔をあげたユリスに俺はビクゥッとなる。

「実験っ、実験はどうなりました?」

「あ、あぁ。えっと…捕まっている間モールス君はどうなってた?」

「さらわれる前後暫くは光ってませんでしたけど、ここ一刻ほどはずっと光ったり消えたり繰り返してました。」

「そっか…だったら…。」

約一刻、その間俺が行った所と、ここの位置関係からして…。

「大成功だ。モールス君は町を殆ど網羅出来る。」

そう言っておれはニコリと笑う。

「すごいっ、すごいです!ご主人様っ!」

ユリスも手を叩いて喜ぶ。

む、むう。喜んでくれるのは嬉しいのだが、せっかくの見せ場が…クスン。


と、そこにラッセンさんに連れられた衛兵さんが此方に向かってきてるのが見えた。

遅いよっ!

…とも思うが、まぁ仕方ないかもしれない。

商人ギルドでこの場所を特定した俺は、ラッセンさんに衛兵を呼ぶように頼み、俺は1人ここにきた。衛兵が到着する前に犯人がユリスを連れて場所を移動する事を恐れたからだ。モールス君での通信と、ユリスが送ってきた数字の事はラッセンさんには話したが、モールス君の事など一般の衛兵には何の事かも分からないだろう。攫われたユリスが、囚われた場所を伝えてきたといっても信憑性は薄い。信憑性が薄いと衛兵も中々動かない。まぁ、ラッセンさんなら立場を使ってゴリ押してくれたはずだし、実際こうして来てくれたんだからよしとするべきだろう。


しかし…


俺は改めてユリスを見る。

彼女が伝えてきた8と4の数字。それは月と時間だった。つまり8の月、4の刻。そして、それはその時に教会の尖塔が影を落とす場所だ。彼女が数字を用いて場所を伝えられる唯一の手段がそれだった。

それに気づいた俺は商人ギルドに飛び込み、日時計表と町の地図を照らしてこの場所を特定したのだ。

日時計の影で場所を指示した発想も凄い。だが、彼女はもっと凄いことをしている。原始的とはいえモールス君を使って無線シリアル通信をやって見せたのだ。そんな概念すらないこの世界で、初めて見る機械で、しかもあの緊急時に…。


…ひょっとして、ユリスはとんでも無い才能を持っているのかもしれないと、その時に思った。

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