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剣と魔法とオームの法則  作者: なまぐさぼーず
第ニ章 奴隷を手に入れた!
13/66

電離層までは何マイル?

所持金 金貨195枚 銀貨1枚 銅貨11枚


俺は目的地に向かう道すがら、ユリスに今回実験に使う魔法具の説明をした。

今回作ったのは今まで作っていた送信機と受信機をあわせた物だ。これを2つ作って、互いが通信できる。簡単に言うと、一方に魔力を流すともう一方が光るのだ。因みに送信は込めた魔力で行うのでいいのだが、受信はガラス玉に込めた魔力で作動する。なので、あまり大量の魔力が貯められないのでこまめな充電…充魔?が必要だ。まぁ、実験には充分にだと思う。取り敢えず名前はモールス君β2.1版とする。


俺の説明を受けるとユリスは熱心にモールスくんを動かしていた。

「不思議です。どうして離れた方のモールス君が光るんですか?」

「ふふふ…、魔法みたいだろう?」

「魔法じゃないんですか?」

「……魔法です。」

ユリスは不思議そうな顔をしたが、すぐに興味はモールス君に戻った。

まったく、魔法が常識だとかえって夢がないな。などと俺は勝手に憮然とした。



着いたのは町の端、都市城壁の前だ。目立ちたくもないので、あまり人気のないところにした。モールス君の1つを俺が持ち、もう1つをユリスが持つ。因みにこの2つの周波数は変えてあるので混信はしないはずだ。

「そしたらユリスはモールス君1号を持ってここで待って貰えるか?それで、俺が定期的にユリスは玉を光らせるから、光ったらユリスもコッチのを光らせて欲しいんだ。」

「はい、分かりました。光ったら魔力を込めればいいんですね?」

「そういうことだ。やってみるな。」

と、俺が自分の持つモールス君に魔力を込めた。

ユリスのモールス君が光る。

「ん…」

光ったのを確認してユリスも魔力をこめる。

俺のが光ったのを確認して、魔力を流すのをやめた。

「上出来、そんな感じで頼むな」

「はいっ」

ユリスが元気に答える。なんだか楽しそうだ。

よし、そしたら街を歩いて何処まで届くかだな。まぁ街の半分まで届けば合格。逆端まで行ければ御の字だろう。


地図を見ながら街の中心まで来た。所々で行った送信テストの結果はココまで良好だ。地図の上にテスト結果を書き込んでいるが、今の所全部◯だ。建物の陰でも関係なく信号は拾えている。

広場の中心、噴水の前に立ちまたモールス君に魔力を込める。すると、すぐにモールス君が光る。ユリスはちゃんとやってくれているな。文字も声もないけどなんかチャットしてるような気分でなんか楽しい。

「あ、ウィルさん」

突然そんな声がかけられた。

一瞬遅れて自分が呼ばれたと認識する。

どうもまだ、この名前に慣れてないな…。

振り返るとそこには以前服を買った店の兄妹がいた。確かユーリッドとジーナといったな。

「あぁ、君たちか。」

「この間は大量に注文して頂いてありがとうございました。今、頑張って作ってますから。」

そう言って兄妹はぺこりと頭を下げた。

そう、旅道具の皮カバンやらポーチやらフードやらを纏めて注文したのだ。たしか完成はあと半月ほど先だったと思う。

「そうか、宜しくたのむよ。」

と、ふと思いついた。

「なぁジーナ、この辺で化粧品とか置いてる店はあるかな?」

…?

今、一瞬ユーリッドがビクッとしたような?

そしてジーナの目がキランと光ったような?

「お化粧品ですか?私はいつも自分で作っていますからあまり買うことはないんですけど…あ、でも、紹介できる場所ありますよ。良かったらご案内しましょうか?」

「いいのか?買い物かなにかのしてるんだろう?」

「もう終わって帰るところですから。ね、兄さん」

「あ、ああ…ハハ…」

乾いた笑いだ。一体どうしたんだろうか、ユーリッドは…。


…その乾いた笑いの意味は、案内された雑貨屋にはいった後に分かった。

ハツキの花のオイルが髪をしなやかにする事。

寝る前はローエルの根お絞った汁を顔に塗るとむくまない事。

白ササリの花を乾燥させて作ったホワイトパウダーを顔に塗ると肌が白くなる事

化粧品の効果は値段の二乗に比例する事。

最近オレンジでのパックが、女の子に流行っているけど、ジーナはそんな流行にはのらない事

……

と、止まらない。

ユーリッドが妬ましげな顔でこちらを見てるが、そんな目をされても俺も困る。寧ろ妹なら止めて欲しい。

…と、目で訴える。

出来るわけ無いでしょう。

と、目で返される。

完全に視線だけで会話してる俺たち。


結局、その店の商品全部の説明を受けたが、全然頭に入ってこなかった。寧ろ女性はこれ全てを使いこなしているというのか。日本も、この世界も美容にかける情熱は変わらないのかもしれない。

一応。ジーナと相談の結果、ユリスにはシミナスの水と言うのを買った。コレは複数の薬草をブレンドしたもので、肌の調子を整えてくれるらしい。いわゆる化粧水という奴だろうか。

因みにユーリッドも同じものをジーナに買う事になった。…さすがに後でその分は払おう…

でも、ユーリッドも嫌そうにしていながら何処か楽しそうだ。

「兄弟仲がいいんだな」

俺が思わずつぶやく。

「え、いやそうですか?」

ユーリッドがちょっと照れたように答える。

「揃って買い物してる位だ、仲が悪いわけもないだろう。」

「あ、いえ。それはほら、最近人さらいが流行ってるじゃないです。」

「人さらい?」

「あ、ご存知ないですか?まぁ、狙われるのは若い奴隷みたいなんですがね。ここ1ヶ月で3件発生したらしいですよ。」

「…でも、所有奴隷は盗んだって自分ものにも出来ないし、売り払う事も出来ないだろう。」

「いえ、それが盗まれた奴隷が何時までも見つからないと、新しい奴隷を買うために所有を解除してしまう人が多いらしいんです。そしたらその奴隷は未所有奴隷になりますから」

なるほど、確かゼンが、奴隷は多く持とうとすると、税金が増えると言っていたな。

…そういえば、ジーナに付き合って、通信テストの間隔が少し空いてしまったな。ま、まぁ、大丈夫…。

俺はモールス君に魔力を込める。

……

モールス君が光った。

…ふう。取り敢えずば心配無いよう…

モールス君が消える。

また光る、消える、光る。

激しく明滅する…。


「す、すまない。店には今度行くから!」

「あ、ウィルさん!?」

俺は2人にそれだけ言って駆け出した。

まったく。ユリスの奴、あれだけコッチが光らせた時だけ光らせろって行ったのに遊びやがって。後でお仕置きだな。


走る。


いや、もしかしてバグか?まぁ、テスト足りなかったもんなぁ。


走る。


もう、早くユリス見つけて、今日は早く寝よう。


走る



走る



しかし、その場所にユリスはいなかった。


…そして、その場所には争ったような跡がある…。



…落ち着け

モールス君はまだ明滅を繰り返している。

つまりユリスはまだ無事だ。

周りに目撃者は…いそうにない。

クソッ、こんな人目のないところでやるんじゃなかった。しかし、すべては後の祭りだ。

考えるしかない、今は考えるしかないんだ。

周りの見回す。ユリスの立っていたはずの場所の地面が少し荒れている。それに車輪の跡がある。しかし、それも石畳からは追えない。


くそ…他にヒントは…


相変わらずモールス君が明滅する。

きっと助けを求める為に必死に動かしているんだろう。

焦燥感に駆られながら明滅を繰り返すモールス君を見つめる。


……ん?


ふと、今までめちゃくちゃに光っていると思っていた明滅にパターンがあるように見えてきた。

…まさか…

俺はその点滅を観察する。

8回光って1秒待ち、

4回光って2秒待ち、

を繰り返している?


8…4…

なにかの数字…

番地?

いや、この街は通りの名前で住所が区切られてるから数字では表せない。

街のXY座標?

…最初に座標定義してなきゃ意味がないし、そんな事はしていない。

なにか…なにかユリスがわかり得る情報で、かつ俺もわかる数字な筈だ。


…時が刻一刻と過ぎてゆく。








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