観光中
王都に着いた翌日、雫は色々なところを見て回っていた。冒険ギルドや商業ギルド以外にも錬金術師のギルドなどのギルドも多く存在し、武器屋なんかはざっと見て回っただけでも数店舗ある。
「どうするです。別に武器とか防具とかは必要ないですし。」
今のところ戦力的な悩みのない雫はそういった物に興味がない。魔法を売っている魔法屋なんかもあったのでそっちに足を伸ばして見ようかと考えているとさっきから注目をされていることに気づく雫。しかしその理由までは分からなかった。
「私たちなんかやったですかね。」
自身を見渡して見たが特に変わった点は分からない。まあ普通大きな狼を連れていたら注目するのは当然といえば当然なのだが今までの街では特にそういった注目のされ方は無かったため戸惑う雫であった。そんなとき
「そこの君、少し話を聞いてもいいか。」
後ろからしっかりとした身なりをした女性が話しかけてきた。後ろにもう1人男性を連れておりある程度の身分の者であろうことは察しがつく。
「なんです?」
「ああ、いや別に怪しいものではない。私たちは王国騎士団に所属しているものだ。ここら辺をパトロールしていたのだがな。私たちの用件は君が連れている狼についてなんだがね。」
「わんこがなんかしたです?」
「いやそういう訳じゃない。ただここは王都なのでな。しっかりとテイムされているか確認をと思ってな。」
「…わんこ。」
雫は騎士たちの話を聞き胡散臭そうに騎士たちを見ながらわんこに指示を出す。するとわんこの体が人型に変わる。
「これで問題ないですよね。それじゃあです。」
突然のことに身構える騎士たちを尻目に歩き出す雫たち。すると騎士たちも放置できないと判断したのか雫たちを止めようと雫の腕を掴もうとするがその瞬間雫たちの姿が消える。
「ど、どこに行ったんだ?」
その場に騎士たちだけが残されてしまうのであった。
アンフェの幻惑魔法とわんこの影魔法のコンボで騎士たちを撒いた雫たちは魔法屋に来ていた。難癖をつけられても困るのでわんこも人型のままである。
「それにしてもやっぱり品揃えが凄いです。名前だけ見ても効果が分からん物ばっかです。」
熱心に魔法を見る雫であるがこれまでちゃんと魔法を使ったことがないMP皆無の雫なのでもし購入したとしてもわんこたちに覚えさせるか装備品に封印するだけなのだが。ただ雫が楽しそうなので良いのだろう。
結局魔法を購入することは無かったがここ王都の魔法屋は魔道具なども売っていたため面白そうな物を数点購入し、ご満悦であった。
そんな感じで楽しそうに王都を堪能していた雫たちを探して回る者たちがいた。やはりそれは王国騎士団であった。彼らの使命はこの国の第3王子の要望で連行せよとのことであったがさすがに罪もない者を連行するわけにはいかないため、まずはということで王都の規則である使役されてないモンスターの持ち込み禁止を理由に雫に近づいたのだが、予想外の行動に出られ、その報告を聞いた騎士団の上役が本格的に雫たちを連行するために指示を出したのであった。
「逃げたということは何かあるということだろう。それに狼がいきなり人型になったということはその少女も本当に人かどうか怪しいものだ。」
「そうですな。まあ今中級騎士以下の者たちが捜索に回っています。すぐに連行されてくるでしょう。」
そう簡単にいかないことを彼らは知る由も無かった。
「マスターまた。」
「………………」
「分かったです。アンフェ頼むです。」
「~♪~~♪」
そう雫がアンフェにお願いするが雫たちの姿に変化は特になかった。アンフェが使った魔法は認識阻害系統の魔法で雫たちを雫たちと認識しにくくなる魔法である。この魔法は直接的な姿を消えたりする魔法ではないため観光を楽しみたい雫の邪魔にならないのである。
「じゃあ今度はあっちにいってみるです。」
「あれ?」
「どうかしたのか?」
「いや聞いてた特徴に似た集団を見つけたと思ったんだが勘違いだったみたいだな。」
「そうか。まあいい。ここにはいなさそうだ次に行くぞ。」
彼らはくまなく探したのだが彼らの実力ではアンフェの認識阻害を見破ることは出来なかったのであった。




