海上と海中での戦闘
小枝たち海底トンネルで戦闘を行っているプレイヤーたちは正午を過ぎた辺りから戦況が変化したことを感じていた。
「これってどういうことなんでしょうか。」
「よくわからんが1つだけ言えることは突如としてモンスターの絶対数が減ってきているということだろう。そしてそれは十中八九今朝のクエストが関係しているのだろう。」
戦いながらそう考察するプレイヤーたちの予想はほとんど正解であった。現在第5の街の港に集められたプレイヤーたちは大型船に乗り込み海の上にいたのである。
「こっちの方にも攻撃を頼む。数体登ってきているやつがいる。」
「こっちもだ。あと回復魔法を使えるプレイヤーか妖精を持ってるやつもきてくれ何人かやられそうだ。」
「倒したモンスターの素材はこっちの生産職プレイヤーに回してください。壊れた武器や防具も。素材を使ってそれらの修復や船の強化にも使いますから早く。」
船上では色々な所から指示が飛びプレイヤーたちは各地で戦闘や生産をしていた。
海のモンスターたちは陸に上がれるモンスターは船上に上がり戦闘をしようとし、それ以外のモンスターは海の中から魔法などで攻撃を仕掛けてくるのであった。
一瞬も気を抜けない戦いが続く。しかしそのお陰もあり彼らの下。海底トンネルでの戦闘はかなり楽になっているのであった。
今までモンスターを倒しても倒しても出てくるため先に進めれなかったプレイヤーたちであったが今は先に行く道に隙間ができる程度にはモンスターの数が減っていた。
「今なら進めるんじゃないですか?」
小枝がアックスたちに言うと
「ああそうだね。この状態がいつまでも続くとは限らない。行くなら今だろう。」
「だが減ったと言ってもまだ多いからな。一気に進むとしたらここのモンスターどもを一掃しないことにはどうにもならんのではないか。」
今まで通り少しずつ進む分には問題はないがこの状態が元に戻ってしまったらさっきまでと同じ硬調状態になってしまうため一気に進みたいと考えたベルである。
「でも....」
そう簡単ではない。言葉を詰まらせた小枝に代わって後ろから声がする。
「ふふ。私がやるわ。ここのモンスターを一網打尽にすればいいのでしょ。」
声の主はレディであった。レディは純粋な魔法職。範囲攻撃は得意であった。
「レディさん。そんな魔法あったんですか?」
小枝がレディに尋ねると
「あるスキルを使えばなんとか。でもそれには時間が欲しいわ。だからこえだには私を守って欲しいの。今の貴女ならできるわよね。」
「....分かりました。やってみます。」
このゲームでは魔法を使うときある特定の魔法を除き詠唱をする必要はない。魔法の名称を唱えるだけで基本的に魔法が発動する仕組みになっているのである。それにも関わらずレディは詠唱を唱え始めた。
それはレディのスキル『詠唱魔法』。発動する魔法の詠唱を唱えることでその魔法の威力等を上げる効果を持つのであった。しかしこのスキルは一つ一つの魔法に設定されている詠唱を唱える必要があるためなかなか難易度は高いのであった。
そして危険を察知したのかモンスターたちの攻撃がレディに集中する。しかしレディの前には小枝がいる。小枝は『カスタム』で壁用のステータスに変えレディを守る。今の小枝に攻撃を通せるモンスターはこの場に存在しないだろう。そして小枝がモンスターを抑えているうちに他のプレイヤーたちがモンスターを倒す。いかんせん数が多いが小枝は必死にレディを守る。
たかが数十秒なのだがモンスターの猛攻に耐えきれなそうになったときレディの詠唱が終わる。どうにか間に合ったのである。
「ありがとうこえだ。「疾風迅雷」」
激しい風と雷がフィールド中に吹き荒れる。通常とは比べ物にならないほどの威力のそれを受けたモンスターたちは消し飛んでいったのである。




