第5の街では
次の日。昨日遅くまでゲームをプレイしていた雫はまだログインしていない午前中にNPCからのクエストが発令された。そのクエストは現在第5の街に行くことが可能なプレイヤーのみにアナウンスされた。その内容は本日正午に第5の街の港に集まれと言うものであった。そしてクリア条件は一定数のプレイヤーが港に集まることであった。
とはいえそう言われてもそれどころではないプレイヤーも多くそのクエストに参加できるであろうプレイヤーは少数になるであろうというのが大方の予想であった。
そんな中、第5のフィールドでは激しい戦闘が続いていた。試練を突破して海底トンネルまで進んでくるプレイヤーは増えてはいるがそれでも苦戦中である。
「もうすぐ残り一日になるが正直厳しいな。」
「そうですよね。」
「ただし、このままではだがな。第1と第2のクエスト攻略情報のページを見たか?」
「NPCが助太刀に来てくれたという情報がありましたよね。」
「それは俺も確認したがそれが何だって言うんだ?」
「それはな。このフィールドにも助けが来るかもしれないってことだよ。そしてそれで怪しいのはやはり今朝出されたクエストじゃないかと俺はみている。だからクエストが成功してほしいものだ。」
海の下で戦っているプレイヤーは自分達のことで手一杯で港に行っている余裕は残念ながらないのである。そのため他のプレイヤーで港に集まってくれるプレイヤーを欲しているのであった。
正午まで残り2時間ほどまで迫ってきた頃雫はゲームにログインしようとしていた。
「うーん眠いです。むにゃむにゃです。もう少し寝ようかなです。」
そんなことを言いながらもゲームを立ち上げる。
「ふぁー。まあいいです。今日は少しやったらもう寝ようかなです。」
今日は第2の街に行く予定であるがそこまでの用事はないため早めに切り上げようとする雫であった。
ログインをして、亜人の街から第2の街に移動した雫たちであったが、
「うーん。なんかしっくりこないです。やっぱりわんこ、人化解いてくれです。」
雫の中で狼の状態のわんこの方が人化状態よりも何か勝っていたのだろうか。元に戻るように指示を出した雫であった。
「偶にならいいですけどいつもだとなんか嫌です。だからまた今度です。」
雫にそう言われたわんこはすぐさま狼の状態に戻るのだった。
なお鉄ちゃんは人化を解くと目立ちすぎるためそのままということになった。
肩にシロ。頭の上を飛んでいるアンフェ。左右を歩くわんこと鉄ちゃん。いつも通りと言えばいつも通りのフォーメーションで街中を歩いていると前から5、6人の女の子たちが歩いてきた。雫はその中の1人がなんだか見覚えがある気がした。それは正しかったようで向こうも雫を見た瞬間手を振りながら駆け寄ってくる。
「シズさーん。シズさんですよね。お久し振りです。私のこと覚えていますか?」
「えーとです。見覚えはあるです。」
「ハルです。第1回のイベントの時にシズさんに委託を頼んだあのハルです。」
「....ああ、あのハルですか。思い出したです。久し振りです。」
「はい。シズさんのお陰であの後頑張れて、今では自分のクランも立ち上げられました。本当にありがとうございます。」
「別に気にするなです。」
久し振りのハルとの再開であった。
「そういえばシズさんって第5の街に行けますよね。」
「別に行けるです。でも何でそんなこと聞くです?」
「えーとシズさんは、今朝出されたクエスト見てませんか?第5の街の港に集まれっていうクエストが発令されたんですよ。」
「へーそうなんですか。」
「それでですね。私たちのクランで第5の街に行けるプレイヤーは皆でこのクエストに参加しようってことになったんですよ。私たち生産系のプレイヤーはあんまりイベントごとに参加できないですから。」
「そうですか。私はめんど....少し疲れてるですから行かないですけど頑張れです。あっそうだ。これあげるです。もし戦闘になったら使うです。」
そう言って雫はいくつかのボムをハルに手渡す。ハルは最初は渋っていたが雫の厚意に甘えることにした。
「それじゃあフレンド、フレンド登録をしてください。今度お礼をしたいんです。」
ということなので雫は2回目のフレンド登録を行い去っていった。
「ハルさん。なんか凄い人でしたね。」
「そうですね。なんか独特の雰囲気を持ってるというか、最初に会ったときからほとんど変わっていないんですよ。」
港のクエストは予想に反してなんとか一定数のプレイヤーが集まりクリアとなった。その中には多くの生産職のプレイヤーが混じっていたのである。
集まったプレイヤーたちを見渡すようにいかにも海の男という感じの者が前に立って話し始めた。
「プレイヤーたち。良く集まってくれた。感謝する。それでこうして集まってもらったのは他でもない。俺たちの方で大型の船を出す。船の上からモンスターを倒してもらいたい。」
その提案はプレイヤーたちが思いもよらない提案であった。




