爆拳の籠手
雫が鉄ちゃん用に用意していた装備というのは最初雫が自分用に開発した物を改良したのものである。
雫のボムの火力は高いのだがいかんせん無くなったら終わりという消耗品ならでわの弱点が存在していたためそれを何とかしようとしていたら偶然に近い形で作り出したのが「爆鉄」という素材であった。これは衝撃を加えると爆発するという性質を引き継いでいたがボム等とは違い耐久値は減るものの爆発してもそのまま存在するという物であった。
最初はその爆鉄をそのまま投擲するということを考えた雫であったが爆発の威力が弱いため却下。その後も色々と試行錯誤の末、雫は籠手のように加工することで落ち着いた。
その後威力や耐久力を上げある程度完成までこぎつけたのだが問題が何点か発生する。まず接近戦を出来るほどのステータスは雫にはない。その問題を無視したとしても雫のステータスでは爆発で起こる爆風と衝撃に耐えられなかったのだ。そのため本来即処分となる予定だったのだが雫はこれをかなり気に入ってしまったのであった。リクに鉄ちゃん用に出来ないか頼んでしまうほどであったのだ。
現在リクに頼みその籠手にあうための他の装備を持ってきてもらっているところであった。そして雫はその間に今回の龍の素材を使いさらなるパワーアップを図っていた。
「これはすごいかもです。これ今私が使ったら衝撃でHPがなくなるかもです。」
あながち冗談でもない雫の言葉にわんこたちもどう反応していいか困りぎみであった。
リクが持ってきてくれた装備品は雫がリクにも渡した素材を亜人の街の職人が作った物の1つであった。
「これはですね。亜人の多種多様な特性を活かすために開発された防具です。装備者のステータスなどの特徴に応じて代わる装備ですよ。名前は「自己の鏡」まあ素材が普通よりも格段にいいから性能は折り紙つきですよ。」
「そうですか。ありがとうです。それならお礼の素材です。」
雫は使わない龍などの素材をリクに手渡す。そして雫は鉄ちゃんに「自己の鏡」と雫自作の籠手「爆拳の籠手」を装備させる。
「……………………」
「いいです。良く似合ってるです。」
「自己の鏡」は鉄ちゃんが装備するとすぐに形を変え始めるのであった。
もうすぐ夜になるという時刻であったが多くのプレイヤーがフィールド内でモンスターを倒している。そんなプレイヤーたちに紛れて様々な亜人の戦士たちも戦闘を行っていた。
「あまり時間がないぞ。そこら辺のプレイヤーたちとも連携をとりながらモンスターとの戦闘をしろ。」
亜人たちに指示を飛ばすのはランであった。
「このままではいつ亜人の街のフィールドにモンスターが現れるか分からんからな、速やかにモンスターを殲滅するぞ。」
亜人たちの力を借りたプレイヤーたちはどんどんフィールド攻略を進めていくのであった。
そして第5の街でも住人たちが集まって会議を開いていた。
「このままだともしかしたら本当に氾濫が起こっちまうぞ。どうにかせんと。」
「どうにかってどうやって。わしらにモンスターと戦う力はないぞ。」
「それでも…」
「あれしかないか。よし皆、知り合いのプレイヤーたちに明日港に来てくれるように頼んでくれないか。俺に考えがある。」
第5の街でも色々と動きがあるようであった。
「それでねこの前シズちゃん以来久しぶりにプレイヤーがここまで来たのよ。まあランが倒しちゃったんだけどね。まあそれ以降ここに来るプレイヤーも増えてきたのよ。」
「へーそうなんですか。」
雫はセンたちと会話を楽しんでいた。本当ならもうゲームをログアウトする時間なのだがわんこと鉄ちゃんが人の姿での戦闘に慣れておきたいということで少しだけゲームに留まっている雫であった。
「それにしてもあの籠手すごいですね。まあデメリットも大きそうですけど。僕も頑張って色々と作ってみたいな。」
「そうですか。頑張るです。」
この頃戦闘ばかりしていたような気がする雫にとって気を許した相手とのゆっくりした時間は至福の時であった。




