人となった2人
進化を終えたわんこ、鉄ちゃん、アンフェの様子を確認する雫。
わんこは進化をするごとに大きくなっていっていたのだが今回は体に変化は少なかった。強いて言えばよりふかふかとなり雫が喜んだぐらいであった。わんこの個体名は「月神狼」と記されていた。
次に鉄ちゃんはわんことは逆にかなり大きくなっていた。そして今までに増して存在感を発するようになっていた。鉄ちゃんの個体名は「鉄龍王」と記されていた。
最後にアンフェはというと羽の数が今まで2枚だったのが4枚に増えいつもより力強い羽ばたきで雫の頭の上を飛び回っている。アンフェの個体名は「輝妖精」と記されていた。
「さてとどうするです。これは正直どうなるかわからんです。」
雫が扱いに困っていたのはやはり『人化』のスキルであった。このスキルが言葉通りわんこたちが人の姿に変わるのかまたは全く別のスキルなのかが分からなかったのだ。
「しょうがないです。困ったときの強い味方のとこに行くです。」
雫は報酬品などをしまい次の目的地へと行くことに決めた。
クエストのタイムリミットは残り36時間。半分となりプレイヤーたちの焦りも出始めてきている。そんなとき第1と第2のフィールドでNPCと思われる者たちを見かけたという目撃情報が頻繁に出されるようになってきた。
鉱山から雫たちは第1のフィールドにある亜人の街に向かっていた。
「それにしてもモンスターの異常発生がひどいのはボスフィールドに続く道だけっぽいですね。ここら辺はいつも通りです。」
回りを見渡すと見たことないモンスターも嫌になるほどの数のモンスターもない。それは亜人の街に近づいていけばいくほど顕著になっていった。
「もうそろそろ着く頃です。あっ門が見えてきたです。おーいセンさん。」
「……あらシズちゃんじゃない。久しぶりってほどじゃないけどどうしたのかしら?」
亜人の街の門番の片割れであるセンが見えてきた。珍しいことに一人で門を守っていた。
「あれ?ランさんはどこいったです。もしかしてサボりですか。」
雫がそう聞くと
「えーとね。まあシズちゃんなら知ってると思うけど今、各地でモンスターの異常発生が起こっていてね。それの対処の手伝いに街の男たちが駆り出されたの。」
「あれそうなんですか。知らなかったです。」
「まあいったのは第1と第2のフィールドって話だから会えなかったのかもしれないわ。それよりシズちゃんはどうしてここに?」
「えーとですね。じゃあリクも今いないです?」
「リク?あの子なら街にいるわ。残念だけどあの子に戦う力はないもの。」
「そうですか。ならまずリクを呼んでほしいです。」
話はリクを交えてということになった。
リクは雫から説明を受けて
「人化ですか。それはまた珍しいスキルですね。しかも同時に。まあでもわんこさんの方は御使い様の本来の姿になるものだと思います。でも鉄ちゃんさんの方は正直なんとも。」
「というかそもそも人化ってなんです?」
「人化というのはですね。変身とか幻覚とかで姿を変えるのとは違うのでわんこさんにしても鉄ちゃんさんにしても姿は1つなんですよ。分かりますか。」
「よくわからんですけどわんこはわんこ。人になっても変わらないんですね。それならまあ別にいいです。」
雫なりに納得がいったようなので早速雫はわんこたちに人化させようとする。
「じゃあわんこ、鉄ちゃんお願いです。」
それに合わせてわんこと鉄ちゃんがスキル『人化』を発動する。するとわんこには影が集まってわんこが黒く染まる。まるで「影纏」のようである。鉄ちゃんは逆に『鋼龍化』のように光輝く。両者ともそういったエフェクトが終わると人の姿になっていた。2人とも背は平均よりもやや低めといった感じであった。ただし雫は背が低い方なため、かなり見上げる形だ。それぞれ美少年・好青年といった感じであった。
「わんこは所々もふもふが残ってるです。なんか頭良さそうですし。鉄ちゃんは、なんか目付き悪いです。なんか怒ってるみたいです。」
利発そうなわんこと、少し強面の鉄ちゃん。雫がじっと2人を見てると
「この姿だと初めて。よろしくマスター」
わんこが突然喋りだした。
「........................」
鉄ちゃんは、いつも通りである。
「よろしくです。わんこ、鉄ちゃん。それにしてもわんこは火龍の騎士着てるからいいですけど鉄ちゃんにもなんか装備あげないとまずいですね。」
鉄ちゃんの体は現在鉄の鱗のようなもので覆われているがさすがに人の姿をとるなら変であった。
「そうです。鉄ちゃん!人の姿でも防御力とかのステータスは変わってないですか?」
「………………」
返事はないがその代わり首を縦に振る鉄ちゃん。
「本当です。やったです。それならあれがようやく試せるです。さっ早く着てみるです。」
雫は鉄ちゃん用に作っていたが後になってリクに「さすがに龍が着れるサイズへの加工はちょっと……」と言われたが諦めきれず持っていた装備品のことを思い出したのであった。
「……………………」
少し嫌な予感がしている鉄ちゃんなのであった。そんなこんなで人の姿になっても雫たちは雫たちであった。




