クエスト攻略中
鉄ちゃんの要望で雫たちは第3の街に来ていた。そこには第5の街に行けていないプレイヤーや、第5のフィールドに入ることを諦めて来たプレイヤーがおり他のフィールドよりも多くの人が攻略に乗り出していた。
「そういえば鉄ちゃんは、どうしてここに来たかったんです?」
雫が鉄ちゃんに問いかけると。
「…………」
「えー。本当ですか。それは面倒です。でもそうなると私たちでも無理じゃないです。だって…」
鉄ちゃんが語ったというか雫に伝わったこの街に来たかった理由は異常発生が火龍の巣穴にまで及んでいるかもしれないと感じ取ったためであった。火龍の気配を感じたらしいのであった。
火龍の強さは第5のフィールドボスである海王を上回るほどである。そのため火龍単体であったらまあなんとかなるがもし他のフィールドのように火龍すら異常発生してしまったらさすがの雫たちでもどうしようもない可能性があるのであった。
「というかどうでもいいですけど原因のボスってどうなるです?だって火龍でも正直強すぎですし、それ以上のモンスターってヤバくないです?」
雫は気だるげにそう呟きながら皆を率いて第3のフィールド、鉱山に向かって歩いていった。
雫が第3のフィールドの攻略を始めた頃、第5のフィールドの海底トンネルでも色々と起こっていた。小枝たち試練を突破した組の情報提供のお陰もあり徐々に試練を突破して海底トンネルに足を踏み入れるプレイヤーが増えてきていた。そのため全くと言っていいほど進んでいなかった攻略の進捗状況もかなり良くなっていた。
「それにしてもこえだちゃんのそのスキル。凄いよね。どこで手に入れたの?」
「ふふ。ごめんない。さすがにアックスさんでもそれは言えませんね。」
モンスターがひしめきあっているこのフィールドではどこからモンスターの攻撃が飛んでくるか分からないため小枝は、カスタムでスピードを捨てて、攻撃力と防御力を上げることにしたのである。そのため通常、ダガーなどの攻撃力ではありえない攻撃力を誇っていた。
「そろそろ無駄話をやめておけ。人数が増えたといってもモンスターの数が数だ。油断していると死ぬぞ。」
「ああ、分かっているさ。」
「は、はい。分かりました。」
緊張感があるフィールド攻略である。
「うわー。やっぱりゴーレムがいっぱいです。前ここで頑張ってたときは属性ゴーレムが出るのをずーと待ってた気がするですけどなんかすごいいるです。というかそれしかいないんじゃないです?」
雫の目の前にはこのフィールドに元々いる赤、黄、青のゴーレムだけでなくそれ以外の色の属性ゴーレムがいた。といってもその色に応じた魔法を放ってくだけのため、雫たちにはそんなに関係ないのだが。しかし雫たち以外のプレイヤーにはそんなわけがない。そのため雫たちの回りにはプレイヤーの影がない。そして雫はいつも通りのため全く気づいていないがアンフィのスキル『人気者』の効果で今でさえ多いモンスターの数がさらに多くなり、しかもモンスターの質も上がってくるため雫たちに付いていけるプレイヤーがいないのである。
「色々な属性鉄が手に入ったです。これ使って色々と作ってみたいです。よしじゃあいつも通り頼むです。」
そう言い残してわんこの影の中に入っていってしまった。
実のことを言うとモンスター数が尋常でないため雫の範囲爆破がないのはわんこたちもかなり面倒なのだがそれはそれ。雫のために頑張るわんこたちなのであった。
鉱山の中腹にたどり着いた頃にはちらほらと竜が現れ始めていた。今更わんこや鉄ちゃんの相手になる訳もないのだが普通はそんなにサクッと倒せるはずがない。そのためここら辺までたどり着いたプレイヤーも火竜に手間取っている間に他のモンスターにダメージを負わされるため、ここに留まっていられているプレイヤーは少なからず存在するのだがここ以降のフィールドに進んでいけるプレイヤーがほとんどいないのが現状であった。
そしてわんこたちもさすがに数が多い。少しでも数を減らさないと先に進めないと判断したわんこは、雫にも手伝って貰おうと雫を呼ぶ。
「わんわん」
その声に影から顔を出し雫が返事をする。
「うーん。なんですわんこ。えー。じゃあ少し出してくださいです。てい。」
「ドゴーーーーン」
この頃さらに強化された雫のボムによってモンスターの大群にぽっかりと穴が開く。
「じゃあまた戻るです。」
と言って雫は再び影の中に戻っていくのだった。
「くぅん」
わんこの溜め息のような鳴き声がすっかり静まったフィールド内に木霊するのであった。




