頭の上のキノコ
雫が運営すら思いもよらない方法で突破した、海王の神殿の試練。それを攻略しようとプレイヤーたちが順に挑戦していったが今のところ攻略者はいない。挑戦者のアイテムやスキル、魔法はもちろんのこと、戦闘スタイルや性格まで完全にコピーしてくるためやりにくいのである。そのためどうしても互角にやりあうため戦闘時間が長くなる。プレイヤーでは長時間の戦闘で一回もミスをしないなんてことはあり得ない。集中力の乱れ、焦りや動揺で完璧なパフォーマンスを維持し続ける何てことは難しい。しかしコピーといっても相手はAIである。戦闘の技量は同じても基本的に戦闘中の凡ミスなどをすることはない。その差をプレイヤーが埋めることができないでいたのである。
まだまだ試練を突破するには時間がかかりそうである。
一方その頃雫はというと第4のフィールドの終盤、森の魔人がいたところのすぐ目の前に来ていた。今のところ異常発生の原因は見つからなかった。
「おかしいです。そろそろだと思うんですけどもしかして私の仮説、間違ってたです?」
自分の考えが間違っている可能性をまったく考慮に入れず進んできた雫であったがここまで変わったことというとモンスターの異常発生と新種のモンスターの出現くらいでこのフィールドにも原因がいることの裏付けがまったくないのであった。
雫が色々と考えているときに新手のモンスターが現れた。それは全身が木でできているモンスターであった。個体名は「木竜」鉄ちゃんの木のバージョンであった。しかもそれが数体現れた。
「うわー。木でできてるです。…ん?」
雫は木竜を見てある違和感に気づく。
「何であいつら頭にキノコ生やしてるです?おしゃれですかね。折角カッコいいのにあれじゃあ台無しです。」
雫の言った通り木竜の頭にはキノコが生えていた。まったく似合っていなかった。
「まあ細かいことはいいです。さぁやるです。」
木竜の特徴は高い生命力と再生力である。しかし雫たちにそれがどこまで通用するのかは微妙であった。
木竜を倒した後にも多種多様なモンスターが出現するのだがそのどのモンスターたちにの頭にもキノコが生えていた。
「まったく似合ってないですけどなんか流行ってるですかね?」
雫がそんなことを考えていると。
「わんわん」
「え?操られてるですか?」
わんこは、キノコとモンスターが別々の存在であることを感じた。そのため頭にキノコを生やしたモンスターが別の誰かに操られていると考えた。そしてそこから導き出せる結論はというと、
「ということは、操ってるやつが異常発生の原因です。」
わんこの発見で自分の考えが当たっていることに確信を持った雫は意気揚々と進んでいく。
「樹妖精の加護」それがあるため雫は森の中などでは相手モンスターがどこにいるかをある程度把握することが出来るのであった。
雫はやっと魔人のいたボスフィールドに辿り着いていた。普通のプレイヤーならばここに辿り着いたとしてもどこに原因がいるかを探す必要があるのだが、森限定であるが雫にはその必要がなかった。
「誰もいないフィールドに1体だけいるです。多分ですけどあれですね。」
今までモンスターの異常発生のせいで所狭しとモンスターがフィールド内に存在していたが、雫が見つけたそれは、1人であった。そのためそれはボス。異常発生の原因であると判断したのである。
雫が見つけたフィールドに足を踏み入れるとそこには形容しがたい物体がそこにはいた。その物体をしいて言葉で表現するならば、キノコの被り物をしたおっさんであった。
「やあやあお嬢さんごきげんよう。私の名前はキノコ男爵、どうぞよろしく。もう少しここに来るには時間がかかると思っていましたが貴女は優秀なようだ。」
「まあいいですけど、なんかお笑い芸人みたいなやつです。」
「お笑い芸人というのは残念ながら存じていませんが誉め言葉として受け取っておきましょう。ありがとうございます。」
「まあそれでいいです。で、お前が異常発生の原因ってことでいいですね。」
「いかにも。といっても私だけではありませんが、まあそれはここに来た貴女に言うだけ無駄なことでありましょう。」
「まあ別にどうでもいいですけどそろそろやるです。」
「私としては麗しきお嬢さんともう少し会話を楽しむのも、とまあこのくらいにしておきましょう。やるのならば相手になりましょう。」
キノコ男爵の雰囲気が変わる。すると
「わん」
わんこが先制攻撃と影魔法でキノコ男爵に不意打ちを放つ。するとキノコ男爵は真っ二つ切り裂かれてしまった。




