大規模なレベリング
雫が第4のフィールドに来たのは、2つ理由があった。1つは第4の街にある孤児院が気になったため。そしてもう1つはシロの育成のためであった。第5のフィールドである海底トンネルでは、出来ないことがあるのだ。
「ドコーーン、ドッカーーン」
大量のモンスターの群れが一瞬で塵になっていく。ただそんな無慈悲なボムの嵐から運良くなのか悪くなのか生き残ったモンスターたちは、巨大な鉄の塊と黒い刃に襲われることになるのであった。少し前までここら辺で上位の個体であり他のやつを恐れるなど考えたこともなかったはずなのに今現在は、理解不能の理不尽な攻撃に恐れる余裕もなく攻め立てられている。誰に文句を言えばいいのかも分からず逃げ惑っていた。
凄まじいレベリングであった。海底トンネルでは、フィールドが狭く、大抵のモンスターがフィールド外の海の中にいるためこうしたことが難しいのである。
「いいです。いいです。どんどん進めです。」
シロを肩にのせ、自分はわんこの上に乗りボムを投下していた。雫たちは楽しげであるが、モンスターからしたら恐怖の対象でしかなかった。
「鉄ちゃんもしっかりついてくるです。」
森のフィールドも中盤に差し掛かった頃、今まで見たことのないモンスターがチラホラと出現し始めてきた。幸い森の中のため雫に不意打ちは効果がない。しかしさすがにモンスターの強さが今までの比ではなく進むペースは落ちてしまった。
森のモンスターと言えば基本的に植物系か昆虫系である。そしてこのフィールドに出現する植物系のモンスターのうちで最強のモンスターは、エルダートレントであった。そして今雫たちの前に現れたのはその進化系であった。
「なんか禍々しいというか毒々しいというかこの樹まったく隠れる気ないです。」
このモンスターの名は、ポイズンエルダートレント、基本的に森のモンスターは、周囲に擬態して不意打ちを狙うのだがこのモンスターの樹皮は、毒々しい紫色をしているためまったく周囲に溶け込めてなかった。
「完全にやる気ないです。もう少し隠れる努力をするです。」
基本的にやる気のない雫に言われたらポイズンエルダートレントも立つ瀬がない。しかし擬態は、出来なくともポイズンエルダートレントには強力な2つの魔法が使えるのである。それは、「樹霊魔法」と「毒魔法」であった。さらにこの2つの魔法を合成することでより強力な攻撃を生み出すことが出来るのである。
ポイズンエルダートレントの回りから見るからにヤバそうな色をした樹の枝らしきものが生えてくる。その枝が一斉に雫たちに迫ってくる。
「げです。あれ食らったら体調崩しそうです。まあ樹ならこれで大丈夫なはずです。てい。」
「ドコーーン」
迫ってくる枝を全て消し炭にする。さて反撃だとわんこが攻撃を仕掛けようとした瞬間、
「わんこジャンプです。」
雫のいきなりの指示
「わん?わんわん」
それでもわんこはすぐに上に飛ぶ。するとそのすぐ後に雫たちのすぐ真下の地面から毒々しい枝が勢い良く飛び出してくる。地面という死角からの攻撃。わんこが得意とする戦法であった。
「わんわん」
怒れるわんこが繰り出したのは「火影」。動けないポイズンエルダートレントにとって相性最悪の攻撃であった。影を燃やすこの攻撃を食らい抵抗も出来ず散っていったのであった。
「なかなか面倒な敵モンスターかが多いです。」
先に進むごとに敵の強さが上がり。戦闘時間も長くなっていくのであった。
最初は快調に進んでいた雫たちであったが倒しても倒しても出てくる敵に飽き飽きしてきていた。
「なんか疲れたです。ちょっと休憩するです。アンフェ頼むです。あっそれならシロ、お前も練習です。」
フィールドの中で敵モンスターのど真ん中にもかかわらず雫は、休憩モードであった。それに応えようとアンフェは、「幻惑魔法」を使い敵に気づかれないように偽装し、シロも「雪魔法」で偽の自分達を作り出し敵を翻弄しようとした。
「ふぅー。さすがに数が多すぎです。まだ大丈夫ですけどこのペースだとボムの在庫が切れるかもです。」
自身のメインウェポンを失うのは死活問題なのだが雫は動じない。基本的に他力本願な彼女の戦闘スタイルであるため、ボムを失ったら後の戦闘をわんこたちに任せるのでたいした問題と捉えていないのである。
ある程度休憩をしたのち雫たちは、再び戦場に舞い戻る。といっても現在進行形で戦場にいるのだが
「さーて、そろそろ原因とやらが出てきてもらいたいもんです。まあ行くです。」
アンフェとシロが魔法をとき再び戦闘を開始するのであった。
雫が森で愚痴をこぼしながら戦っている頃第5の街の探索をしているプレイヤーたちがついに海底トンネルの入り口である海王の神殿を見つけた。しかし海底トンネルに入るには、自分に打ち勝つ必要がある。もう3日もない中で試練を突破できるプレイヤーが現れるのだろうか。




