突然のクエスト
雪原の侍の姉を自称する女性。その名を氷姫。姫と聞くと荊姫を思い出す雫だが、戦闘スタイルも荊姫を連想させる戦いぶりであった。自動的に氷によって相手の攻撃を防ぎ、自分は「氷魔法」で相手に攻撃をする。ただ荊姫と異なるのは雫の唯一といっても過言でないボムの対処の仕方であった。荊によって爆発から身を守った荊姫と違い氷姫は、爆発する前のボムを凍らせ、爆発させないという方法をとった。
「あなたの投げてきたそれから危険な香りがするのよね。だからごめんなさい。凍らさせて貰ったわ。」
さすがの雫自慢のボムも爆発させてもらえなければ意味がない。
「面倒です。まあでもそっちがその気ならこっちも色々とあるです。」
フィールドを進む際基本的に雫が戦闘に参加することは無い。雫は、わんこや鉄ちゃんが敵モンスターを倒してるときは素材の採取をして、その素材を使っていろんなアイテムを作っているのである。そして今回雫が取り出したアイテムは「凍傷無効ポーション」であった。そのため氷魔法等による凍らせる攻撃でダメージを負わないのであった。
「あらあら、あなたビックリ箱みたいね。本当に面白いわ。」
しかし氷姫の余裕を崩すことができていない。その様子を見たわんこと鉄ちゃんは攻撃を仕掛ける。
「あら?あなたたちも戦えるのね。」
少し驚きながらも氷でしっかりと攻撃を防ぐ氷姫。その様子を見てかなり不機嫌になった鉄ちゃんが光出す。しかし雫がそれを止める。
「鉄ちゃん。それは今はいいです。それを出すまでもないです。ねっわんこ。」
そう雫が言うとわんこが返答する。
「わんわん」
するとわんこの周辺を影が囲む。そしてその影がゆらゆらと揺れ出す。それはまるで火のようであった。
「わんわん」
そしてその影が氷姫に向かっていく。
「あら、影が火みたいになったわ。でもさすがに火の真似をした影で私の氷は…えっ?」
氷姫の予想に反して氷が溶けていった。わんこが発動した影魔法は「火影」本体でなく影を燃やすことで燃えにくい物でも関係なく燃やし尽くす魔法であった。そして守りを失った氷姫にもう打つ手はなかった。
「なんか昔は皆でボスに挑んでいってたです。でも今は、わんこか鉄ちゃんだけで倒せるようになってきたです。なんか寂しいです。まあこれからしばらくは、シロを育てるです。だから皆よろしくです。」
「コーンコーン」
そう言うと3人とも反応を返す。
「わんわん」
「………………」
「~♪~♪♪~」
それを聞いた雫は、
「そういうことです。じゃあまず第7の……」
話もまとまったところで第7の街に向かおうとしたらいきなり雫の目の前に文字が浮かび上がってきた。
緊急クエスト 『街を守れ』
モンスターの異常発生の原因を見つけてそいつを打ち倒せ。
「ああ、あれですか。」
プレイヤーの予想通りイベントが始まった。
プレイヤーが緊急クエストの報せを見た瞬間、第5の街までの各街に72:00と表示された。これを見たプレイヤーは、クエストのタイムリミットと全プレイヤー対象のクエストであることを確認したのである。
「やっぱり各フィールドで凄い数のモンスターが発生してるって。それで今は、71時間48分って表示されてるよ。第7の街ではそういったことは起きてないの?」
「ないです。あと第6の街でもないです。」
「そっか。でも緊急って言う割には3日も猶予があるなんてね。なんか不思議なんだけどな。」
「でも3日もあるってことはそれだけ面倒なクエストかもです。」
「それでさ。シズちゃんはこのクエストについて色々と調べたっていってたじゃん。どう思う?」
「原因については知らんですけど…」
「けど?」
「クエスト名が気になるです。」
「クエスト名?ああ、街を守れでしょ。まあ確かに変かもね。普通原因を突き止めろとかなきがするよね。」
「前にこういった異常発生、氾濫ってのが起こったとき街中にモンスターが現れたらしいです。」
「ってことはもしかしたらあのタイムリミットって。」
「クエストのタイムリミットじゃなくてモンスターが街に出現するまでのかもです。」
街にモンスターが出現する。ということは、ダメージ無効がなくなるということを意味する。生産職等の戦えないプレイヤーにとって死活問題であった。この不吉な報せは、すぐに各プレイヤーに届けられることになったが信じるプレイヤーと信じないプレイヤーに別れることになる。




