九尾の白狐
白い狐、第6のフィールドの序盤にも出現するモンスターの一匹である。この狐たちの特徴は尾が多いほど強いということである。つまり尾が多いということは、魔法の才能値が高いことを意味していた。
雫たちの前に今までに出現した白い狐の中には尾が2本や3本の個体もいた。そして今まさに雫たちの前にいる白い狐の尾の数は…
「9本ですか。」
今までの比にならない9本。この狐の名は「九尾の白狐」であった。雫はボスだと判断しボムを構える。しかし
「なんで攻撃してこないです?しかもこの狐、普通のよりずいぶん小さいです。子狐です?」
その雫の疑問に答えるように弱々しく狐が鳴き声を返す。
「コーンコーン」
すると雫の目の前にクエストの文字が浮かび上がってきた。
「えーと、久しぶりですね。九尾の白狐を助けろですか。」
クエストの内容は、九尾の白狐の救出であった。実はこの子狐は、大人になっても小さい狐の生命線ともいえる魔法が使えないのである。基本的に先天的に習得する雪による幻惑系の魔法どころか一切の魔法を覚えていなかったのだ。その一方で魔法を扱う才能は他のどの個体よりも高いというアンバランスな個体なのであった。そのため他の狐たちから仲間外れにされていたのである。
「まあ大体事情はわかったです。でも助けろって言われてもです。なんかわんこの時とかもそうですけどいまいち説明が雑です。」
雫はそういいながらもどうすればいいか考える。
「あー、うーん、だからこの狐が強くなればいいんですよね。なら…ああそうです。あれがあったです。」
雫が取り出したのは雪原の侍から貰った「雪魔法」であった。先天的に習得することが出来なかった子狐、それならば後天的に習得させようと雫は考えたのであった。
「まあお前は魔法の扱いは上手いらしいですからこれからは大丈夫かもです。」
雫は「雪魔法」を子狐に与え。雫はその場を立ち去った。
「どこまで着いてくるです?一応お前は助けたです。クエストもクリアってなったです。もう私に用は無いはずです。」
雫がそう言っても子狐は雫たちに着いてくる。
「なんです?」
「コンコン」
「え?もしかして仲間になりたいです?」
「コン」
「うーん。まあならいいです。ついてこいです。お前の名前は……シロです。」
白い体だからシロ、やはり雫の名付けはは単純であった。
「じゃあこれからよろしくです。」
「コンコン」
この九尾の白狐のクエストは、雪原の侍を倒した者だけに現れるクエストである。ただ基本的に侍を倒したプレイヤーは、大体自分か仲間に「雪魔法」を使ってしまうため狐のクエストをクリアすることが出来ないのであった。
シロと出会ってからも雫は先に進んでいく。シロは、雫のパーティーの中でアンフェの次に小さい体躯をしているためシロは移動中雫の肩の上に乗っていた。シロの尻尾はとてもふかふかで雫も気に入っていた。
「結構先に進んできたはずです。そろそろボスかもです。」
雫の予想通り雫たちは、第6のフィールドボスのところに辿り着いた。そのボスフィールドにいたのは女性。綺麗な女性であった。
「ここに人が来るのは珍しいわね。あら?あなたが持っているのは弟にあげたはずの「雪案内」じゃないかしら。ということは、あなたたちは、弟に勝利したということかしら?」
「弟?これは雪原の侍に貰ったです。もしかしてあんたの弟さんだったです?」
「ええそうよ。まさか弟を倒した子と戦うことになるなんて分からないものね。」
「シロは、後ろにいるです。また今度シロの強化訓練をする必要があるです。」
「コーン」
「別に気にするなです。さてやるです。」
雫たちの6回目のフィールドボス戦が始まる。




