塵も積もれば
色々と雫が異常発生について調べた結果第5までの街で異常発生が起きていることがわかったのだが、
「そうですか、異常発生はここのフィールドでは起こっていないんですね?」
「そうだね。そんな現象が確認されたという情報はないね。私自身もそんなことが起こっていると感じていない。」
雪原の侍に話を聞いたところ第6の街では、モンスターの異常発生は、確認できなかった。
「うーん。第5までの街と、第6の街に何か差があるんです?」
「さあ?でもあまり気にすることではないのではないか。モンスターの異常発生なんて君にどうしようもないことだろう。」
「まあそうです。」
「あまり考えすぎないことだ。なあリッスン。」
「キュッキュッ」
「わかったです。ありがとうです。」
雫は調査を一旦終了し先に進むことにしたのだった。
第6のフィールドを攻略していくと、他のフィールドでも同じだが徐々にモンスターが強くなってくる。しかし今、雫の前に出現しているモンスターは、そうではなかった。
「スノーウルフですか。別に個々の強さは然程強くないです。」
このモンスター、スノーウルフは、事実フィールドの序盤で現れた小動物系のモンスターより若干強い程度のモンスターであった。現在雫は、大体フィールドを半分程攻略しておりそこに出てくるモンスターとしてはスノーウルフは、不適であった。しかし、
「弱いですけど数が多いです。それになんか軍隊みたいです。」
スノーウルフ単体では弱いが多くの仲間と連携して狩りを行う習性があった。そしてこのスノーウルフ軍隊を束ねる隊長も存在した。モンスター名を「雪狼」。雪に隠れながらスノーウルフを操り自分は雪魔法で攻撃するといった戦法を主に用いる集団であった。
今までボスクラスになると明確な上下関係のもと指示を出すということがあったが、通常のフィールドのモンスターがそれを行うということは今までなかった。簡単な役割分担程度はあったがそれくらいであった。この集団のそれは、今までの比ではなかった。
「鉄ちゃん、鉄龍砲で範囲攻撃です。」
今までであれば集団戦闘での範囲攻撃は効果的であった。しかし練度の高い集団においてこの戦法はあまり効果があるとは言えなかった。相手は被害を最小限に押さえ、隙が多い大規模攻撃で隙を見せた鉄ちゃんを集中攻撃してきた。普通のプレイヤーであれば少なくないダメージを負うところである。普通であれば、
「…………」
残念ながら鉄ちゃんにダメージを与えようと突撃してきたスノーウルフたちは、鉄ちゃんの防御力の前になすすべがなかった。そして攻撃という隙を見せたスノーウルフたちは、鉄ちゃんによって倒されていくのだった。
確かに集団戦闘の練度は、今までのモンスターのなかでトップクラスであったが、それをものともしない戦闘力を持った存在もいるのである。いくら塵が積もっても本当の山となることはないのだった。
「わんわん」
「あっわんこ。敵の親玉の居場所がわかったです?ならやっちゃえです。」
それは、敵の親玉の雪狼についても同じであった。いくら巧妙に隠れてもわんこの前でそう長く隠れていることは出来ないのであった。こうして司令塔を失った集団は崩れていったのである。
今回の戦闘を踏まえて雫は色々と思考を巡らせていた。
「今回はあんまり敵が強くなかったですけど強い敵が連携とってきたら危ないかもです。よしです。少し頑張ってみるです。」
雫は密かに燃えるのであった。




